「Embedded Technology 2017」内で開催される「組込みIoT & AIハッカソン2017」。こちらへの参加を検討している企業や個人に向けた「スタートアップセミナー」の様子をレポートしています。
今回は、ハッカソンに取り組むにあたり、聞いておきたいプロフェッショナルの講演内容をご紹介。
【講演1】
「システム思考とデザイン思考」によるIoTハッカソンでの価値協創 白坂成功 氏(慶應義塾大学)
「Test Your Awareness」という有名な動画から始まった白坂氏の講演。
「白いウエアを着たチームのメンバーが、何回パスをするか数えてください」という指示を受け、この動画を見るのですが、パスのカウントに集中していると、多くの人が【ある特別な出来事】を見逃してしまうのです。
(【特別な出来事】が何かは、パスのカウントをせずに動画を見て確かめてくださいね)。
この結果から白坂氏は、人間の「見たいものしか見ない(時に近視眼的になる)」という性質を指
摘します。そして、それを回避するために「思考ツール」が存在する、とも。
白坂氏が在籍する慶應義塾大学SDM (システムデザイン・マネジメント研究科) は、システムについての学問を教育・実践している場で、『システム×デザイン思考で世界を変える 慶應SDM「イノベーションのつくり方」』などの著書があります。
講演タイトルに使われている「システム思考」では、対象を俯瞰的に見て、目的に照らして系統立てて要素を整理するために、さまざまな思考ツールを利用します。モデリングは、その際に有効な“可視化”・“構造化”のツールのひとつです。
「IoTシステムは、従来のシステムと違う“難しい点”がある」と白坂氏は言います。
IoTシステムの特徴は【あらゆるモノが“簡単に”つながる】ということです。従来、A社のデジカメで撮った写真は、A社が提供するソフトを使ってプリントアウトしていました。今は、それをB社のプリンターとつなぐだけで印刷できるシステムを簡単に作ることができます。
しかし、A社のカメラがバージョンアップしても、B社のプリンターの機能がそれに合わせて変更されるかどうかは保証されていません。「今までできていたことが、ある日突然できなくなった!」ということがいつでも起こる時代なのです。
これを避けるために、IoTシステムに対応した 「個別最適化ではなく、全体最適化」 のアプローチをするのが「システム思考」です。
一方「デザイン思考」では、マインドセット(=気持ちの持ち方)を大切にします。「新しいモノを生み出そう!」という気持ちです。
キーワードは
・人間中心 「自分の感覚を大切に」
・多様性 「突飛なアイデア歓迎」
・楽天的 「必ず解決できるさ」
・試行錯誤 「失敗をおそれず何度もチャレンジ」
ここで誤解してはならないのは、「気持ちがあれば新しいモノを生み出せる」わけではない、ということです。「システム思考」などのシステムエンジニアリングの技能に「デザイン思考」を上乗せしたらイノベーションが起こせるんだそう。
はーっ、「システム思考」「デザイン思考」を兼ね備えた人材になるのは、なかなかハードルは高そうですが、ハッカソンは、その人材育成のチャンスなのです。
ハッカソンに参加すると、思考の仕方を学ぶことできます。慶應義塾大学大学院SDM(「システムデザイン・マネジメント研究科」)で開発された『イノベーション対話ツール』の内容を実践しながら学べます。
AI、IoT時代に活躍できる人材を育てるために、「組込みIoT & AIハッカソン2017」を活用してみてはいかがでしょうか?
【講演1】「システム思考とデザイン思考」によるIoTハッカソンでの価値協創 白坂成功 氏(慶應義塾大学)のレポートをお届けしました。
次回は【講演2】「AI、IoT時代におけるモデリングの価値とは」 渡辺博之 氏(ET本部長/エクスモーション)についてレポートします。