「Internet of Behavior(IoB)」「トータル・エクスペリエンス」「分散型クラウド」「プライバシー強化型コンピュティング」「サイバーセキュリティメッシュ」…。
毎年恒例、IT関連のリサーチ&アドバイザリー企業「ガートナー」が来年のITトレンドを予想する季節がやってまいりました。
10月19日にリリースされたレポートのタイトルは「2021年の戦略的テクノロジーのトップトレンド」。冒頭に挙げた「日本人が覚えづらい系」のテクノロジーを含む9つのテーマが、注目度が高いトレンドとして紹介されています。
最初に取り上げられているのは、IoB。直訳すると、「挙動・行動のインターネット」となります。
モノとインターネットをつないで新たな価値を生み出すIoTに対して、IoBは消費者が活動するエリアや購買プロセスなどとインターネットを結び、サービスを提供していくテクノロジーです。
GPSによって取得した位置情報、顔認証システムが持つデータベース、ソーシャルメディアの情報などを活用し、個別に情報やサービスをデリバリーする仕組みを実現する際には、個人情報保護やセキュリティ管理などの問題をクリアする必要があります。
ガートナーは、地域別に異なるプライバシーに関するルールがマーケット規模に影響を与えるとしながら、「2025年末までには、世界の約半数の人がIoBの対象になる」と予想しています。
トータル・エクスペリエンス(TX)は、顧客の体験(CX)、従業員の体験(EX)、ユーザーの体験(UX)、複合的な体験(MX)を組み合わせた概念です。
コロナウイルス感染拡大以降は、テレワーク、モバイル、仮想現実などの浸透によって社会・組織の分散化が進みます。そのことによって、サービスに関与するさまざまなポジションの体験を連携させる必要が生じるというのが、TXのベースとなる考え方です。
顧客のロイヤリティと満足度が向上すればマーケティングの効果が高まり、従業員のエンゲージメントと機能性が高まれば、質の向上とコスト効率化が同時に実現するといったことでしょうか。
TXの推進には、「分散型クラウド」や「プライバシー・エンハンシング・コンピュテーション」も密接に関わってくるものと思われます。
「分散型クラウド」は、クラウドサービスを物理的に分散させつつ、パブリッククラウドプロバイダーが全体の管理・運用・ガバナンス・進化の責任を担う世界。
※パブリッククラウド:利用者を限定しないオープンなクラウド。代表例はAWS。
全体を統括する組織がある状態で、企業が独自のプライベートクラウドを持つことができれば、開発の柔軟性と低コスト運用を同時に実現できるというわけです。
「プライバシー強化型コンピューティング」をよりわかりやすくいえば、データ保護の領域を広げ、管理体制を強めることができるテクノロジーです。従来は管理しているデータの保護が基本でしたが、今後は利用中のデータの情報保護も強化し始めるといわれています。
テクノロジーは3つで、「機密データを処理・分析できる信頼性の高い環境の提供」「分散型の処理・分析を推進」「データとアルゴリズムの事前暗号化」。ガートナーは、「2025年までに大企業の半数が導入する」と見ています。
ガートナーが予想する2021年のITトレンド、「Anywhere Operations」「サイバーセキュリティメッシュ」「インテリジェント・コンポーザブル・ビジネス」「AIエンジニアリング」「ハイパーオートメーション」については、後編で紹介します。