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ITトレンドレポート

【2024年最新版】ニーズ拡大!金融DXの背景・現状・将来性 ①業界動向

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ビジネス環境の激しい変化に対応するために、データとデジタル技術を活用することで、企業の業務体制・ビジネスモデルを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)。

金融業界でも、銀行・証券・保険・クレジット系の企業や金融関連サービスを提供する事業者によって、幅広い領域でDXが推進されています。

今回はニーズ拡大中の「金融DX」の業界動向と、金融業界のシステム開発に強いソルクシーズの取り組みを、2回にわたりレポート。金融DXが急速に進んだ背景と、業界の現状、将来性について解説します。

「2025年の崖」「レガシーシステム」が重要課題

そもそも日本でDXが注目されるきっかけになったのは、2018年に経済産業省が「DXレポート」内で問題提起した「2025年の崖」です。経済産業省は日本企業のDX推進がこのまま進まないと、既存システムが抱える問題のために、2025年を境に最大12兆円もの経済損失が生じると試算しました。

この「2025年の崖」の影響を最も大きく受ける領域として、懸念されているのが金融業界です。

金融業界の多くの企業が、1980年代に基幹システムを導入して以来、さほどシステム構成を変えずにサービスを展開してきました。センシティブな個人情報を扱う業界ゆえ、セキュリティのリスクを回避するべく、既存システムの変革には慎重にならざるを得なかったのです。

過去の技術や仕組みで構築された「レガシーシステム」は、拡張を重ねたことによる複雑化・ブラックボックス化という問題を抱えています。とりわけ、「特定の担当者しか運用できない」「セキュリティや安定性に不安がある」「新しいシステムへの移行がしにくい」「膨大な維持コストが発生する」などの問題は、早急に解決すべき状況になっていました。

顧客情報・取引情報などの豊富なデータを有効活用できていないのも、深刻な問題です。現在は世界中の企業が、データサイエンス・AIなどの技術を駆使して、市場変化への迅速な対応や、顧客のCX(体験価値)向上を実現しています。

日本企業では全社横断的にデータを管理・共有するシステムが欠如しているために、データが散在している場合が少なくありません。レガシーシステムに最先端のシステムを連携・統合するのは技術的に困難なため、結果として統合的なデータ活用に踏み切ることができないのです。

業務プロセス・ビジネスモデルの膠着も課題といえるでしょう。デジタル化やオンラインサービスへの移行は、顧客の利便性を大幅に高めるだけでなく、人件費や店舗家賃といった運用コストの縮小につながります。そのため、DXを推進する企業とそれ以外の企業とでは競争力に大きな差が生まれてしまいます。

これらの問題を放置すると、重大なインシデントの発生や国内外での競争力低下を招き、事業の継続そのものが難しくなります。DXによりシステムや企業体質・経営戦略の刷新を進め、適切かつスピード感のある意思決定、セキュリティの強化、業務の効率化、時代のニーズに合わせたCX向上を実現することは、今や業界全体のテーマです。

組織の負担軽減やコスト削減が急速に進行中

このような課題認識を背景として、金融業界ではDXが急速に進められています。具体的な取り組みとして業務の効率化、セキュリティ対策、古いシステムからの脱却、ビッグデータ最先端技術を活用したマーケティング、新たなサービス開発、既存サービスの利便性向上などが挙げられます。

AIやRPAを活用したバックオフィス業務の効率化・自動化、営業のオンライン化、テレワークの導入といった、「従業員の負担軽減やコスト削減」につながる取り組みは、いずれも金融業界でスピーディーに推進されています。

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」とは、PC上で繰り返し行っている作業や、マニュアル化されている業務を自動化するシステム。オフィス業務の省力化に加え、ヒューマンエラーの削減にもつながるソリューションです。

たとえば、業務プロセスにAIとRPAを導入することで、ペーパーレス・印鑑レス・定型業務の自動処理などを実現したという事例があります。帳票の自動認識処理が可能になったことで、バックオフィス業務の生産性は格段に向上しました。

複数のRPAの稼働状況を一元管理するシステムを構築し、データ入力などの業務を大幅に自動化した企業もあります。顧客からの問い合わせ対応に、音声チャットボットなどのテクノロジーを採用した企業は、人員削減に成功しています。

ChatGPTに代表される生成AIがカスタマーサービスに活用されるケースは、今後さらに増えていく可能性が高くなりそうです。AIであれば24時間365日、スピーディーかつ正確な対応ができるため、顧客満足度の向上にもつながります。

物件販売・リース契約の審査システムにAIを組み込むことで、与信業務の効率化を実現した企業は、契約書を電子化するなど、業務プロセスのデジタル化も進めています。

セキュリティ関連のシステム対応も増加

業務効率化と同様に、金融DXで促進されているのがセキュリティ対策です。

コンプライアンス要求が高まる一方、サイバー攻撃・内部不正による情報漏えいのリスクが高まっている昨今、信頼性を担保するためには高水準なセキュリティ体制が欠かせません。数多くの個人情報や取引データを取り扱う金融領域では、インシデント対策を実現する高度なソリューションが生まれています。

急速に変化・多様化するサイバー攻撃に備えるために効果的なのが、AI技術を活用した異常検知や自己学習のシステムです。従来のログ分析による検知・対処システムに比べて、よりリアルタイムかつ効率的なセキュリティ運用が可能になります。

ユーザーの顔や指紋・声などに基づいた本人確認を行う生体認証も、ニーズの高いセキュリティ対策といえるでしょう。なりすましがしにくいのはもちろん、アクセスが簡易・迅速になる、パスワードの保持が不要など、ユーザーの利便性向上にもつながるのも特徴。現在はATMやアプリ、インターネットバンキングなど幅広いサービスに採用されています。

システムの刷新もコンプライアンス遵守やセキュリティ対策につながります。情報が分散している古いシステムでは、顧客データの保管先やアクセス可能な権限の範囲を把握するのが困難です。また最新のハッキング技術に対応していないため、深刻なインシデントが発生するリスクも高まるでしょう。

レガシーシステムの課題を改善するクラウド移行

レガシーシステムから脱却するうえで注目されているのが、「クラウドサービスへの移行」です。パブリッククラウドのサービスであれば、運用コストを大幅に軽減できるうえに、機能追加や他サービスとの連携も簡単かつスピーディー。市場変化や拡張・縮小に柔軟に対応することができるようになります。

オンプレミスに比べて、クラウドはセキュリティにおける不安が挙げられる場合が多いものの、金融業界向けにセキュリティ体制を強化しているクラウド事業者も少なくありません。複数拠点にデータベースを分散しているサービスなら、安定性の面でもメリットは大きいでしょう。取り扱うデータの機密性や重要度に応じて、クラウドとオンプレミスを使い分けるのも効果的です。

地方銀行を中心として増えているのは、バンキングシステムをパブリッククラウドに移行する取り組みです。運用コストを大幅に削減するとともに、外部サービスとの連携がスムーズになったことで、新たな価値提供を実現する基盤が整いました。

複数の地方銀行を傘下に持つ山口フィナンシャルグループは、企業ごと・システムごとに独立していたデータを統合。顧客情報やウェブサイトの行動履歴などのデータを、グループ全体で利活用できるシステムを構築しました。

これにより、顧客ごとに最適化された商品・サービスをアプリ上に表示するレコメンドサービスの提供もスタートしています。

ビジネスを変革するデータ統合・活用

このような「データ活用によるビジネスの変革」も、現在さまざまな企業が取り組みを推進している領域です。AIを活用すれば、社内外の膨大なデータをリアルタイムで分析して、最適な顧客サービスを提案することが可能。営業に必要なリソースの削減にもつながります。

たとえば三井住友フィナンシャルグループは、預金・資産運用・住宅ローンをはじめとするさまざまなデータを組み合わせることで、顧客ごとにパーソナライズされた最適な情報を提供するマーケティングプラットフォームを構築しました。

東海東京フィナンシャル・ホールディングスも、AIを活用して証券営業を強化しています。顧客属性・保有銘柄・コンタクト履歴・アンケート結果といった顧客データと、株価などの外部データを総合的に分析。商品別の購買確率を予測することで、担当者の技量差による成果のばらつきを改善して、生産性向上に成功しました。

横浜銀行は銀行競争に勝ち残るため、ビッグデータとAIを潜在的な顧客ニーズの発見に利用。従来のターゲッティングモデルとは異なる顧客の開拓や、成約率の向上、データ分析に費やしていた業務工数の軽減を実現しています。

もちろん、データの活用場面はマーケティング領域だけにとどまりません。

「データ駆動型ビジネスモデルへの変革」を推進する大和証券グループは、ビッグデータを活用して、金融資産の運用を支援するツールを開発。AI技術により、運用状況・成果のモニタリングにとどまらず、投資戦略の策定、投資の実行といったサポートを実現します。

auカブコム証券株式会社は、ビッグデータを高速分析できるシステムを導入しています。一般公開の株価データよりもリアルタイム性が高いデータを、投資家に提供することが可能になりました。

SBIインシュアランスグループでは、テレマティクスという、カーナビ・GPSといった車載機と通信システムを組み合わせる技術で得たデータを活用して、保険料金の適正化や、安全な運転をサポートする仕組みを展開しています。

「テレマティクス損害サービスシステム」のコンセプトは、『事故のときの保険から事故を起こさないための保険へ』。運転挙動を保険料に反映させる商品の開発や、事故解決サポートなど、保険サービスを起点に、安全・安心なクルマ社会の実現を目指すサービスです。

同じく保険領域の取り組みとしては、ソニー損害保険のアプリ開発が挙げられます。専用のデバイスを自動車に装着することで、走行記録や運転スコア、運転アドバイスなどを表示。運転の安全度合いに応じて保険料のキャッシュバックをするサービスなどを展開しています。

SMBCグループは、金融関連のビッグデータを広告運用に活用するサービスを立ち上げています。口座や金融サービスの利用方法などから、顧客のライフイベントを予測。企業はターゲットにしている顧客に向けて、最適な広告を打ち出すことが可能です。

一方、証券取引等監視委員会は、ビッグデータを取引における不正の検出・防止に活用しています。株価に関するSNSなどへの書き込みをAIで自動収集することで、異常値を迅速に把握して対策できる仕組みです。

今後は生成AIを導入したサービス開発やシステム改善に注目

老朽化したシステムを刷新し、コスト削減を進めるとともに、新たなサービスを展開しようとする金融DXは、着実に変革を遂げている企業と、難航している企業に二極分化しています。昨年、急速に普及した生成AIを導入した金融サービスや社内システムもすでに出始めており、2024年は、新たなサービスやプラットフォームが続々とリリースされる年になりそうです。

一方で、収集されたデータとアウトプットのクオリティや、著作権、プライバシーなどの問題をクリアする必要があります。生成AIにおいて先行しているのは、公開されている情報を取り込んで展開できる投資アドバイスやバックオフィスの改善で、海外では生成AIの基盤となる大規模言語モデル(LLM)を自社開発する企業が増えています。

今回は、金融DXの背景や現状について、具体的な事例とともに紹介しました。【後編】でも引き続き、金融DXの最新動向について詳しく解説していきます。さらに、ソルクシーズグループの具体的な取り組みについてもレポート。業界動向に興味がある方、金融業界に強い技術者としてキャリアアップしたい方は、ぜひあわせてチェックしてみてください。

※この記事は2023年2月21日に公開した記事を再編集しています。

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