金融・通信業界などの領域でのDX推進、官公庁のシステム刷新といった大規模案件の増加、ユーザー企業のIT人材採用難、2025年の崖問題などを背景に市場が拡大しているSIer。
AIやクラウドが話題になり始めた頃は、「システムの内製化や社内運用の増加で、今後はニーズがなくなるのではないか」とSIerの将来性を疑う声もありました。
たとえばAmazon・Google・マイクロソフトが提供するクラウドプラットフォームや、PaaS・SaaSなどのサービスは、柔軟性とコストパフォーマンスの高さから実際に多くの企業が導入しています。これにより、運用・保守を中心にSIerの介入が不要になった領域があるのは確かでしょう。
ChatGPTなどの生成AIの発展も、プログラミングのハードルを低くしました。簡易なシステムであれば、プロンプトによる指示だけで安く素早く生成することができます。
しかしAIやクラウドがカバーできる領域は、まだまだ部分的です。むしろ近年になって、ユーザー企業のIT人材不足が深刻化するとともに、多様なプロジェクトを組成できるSIerが見直されています。日本のIT人材のうち、約75%がSIerに所属しているというデータもあり、システム開発の内製化ができる企業はまだまだ多くないのが現状。DXやクラウド関連の大規模案件が増えたこともあり、売上を伸ばしている大手・中堅のSIerが多く、顧客の新サービス開発などを手掛ける会社が目立っています。
株式会社グローバルインフォメーションの調査によると、SIerの世界市場は2024年の4,854億1,000万米ドルから、2029年には7,789億2,000万米ドルに達する見通し。またIT専門の調査会社IDC Japanは、SIerを含むプロジェクトベースの国内市場規模が、2023から2028年まで年間平均4.8%の成長率で推移すると予測しました。
とはいえ、AI・クラウドの普及や人材不足などの影響で、淘汰されるSIerが存在するのも事実です。そんななかで、成長するSIerには、どのような特徴があるのでしょうか。
この記事では、成長する期待値が高いといわれるSIerの特徴を解説していきます。現役エンジニアの方、SIerへの就職・転職を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
特定の業界に強みがある
現在、プロジェクトの幅を広げているSIerのひとつめの強みは、特定の業界・領域に強いこと。顧客満足度の高い「かゆいところに手が届く」システムを提案・開発するためには、その業界のビジネス構造や課題・業務についての深い知見が欠かせません。
たとえば製造業のシステム開発であれば、生産管理・在庫管理・予防保全・経営分析などの業務プロセスや、現場オペレーターにとっての利便性、既存システムとの連携といったニーズへの理解が必要です。しかし多くのクライアントはシステム開発に詳しいわけではなく、具体的にどのような機能が必要なのか、うまく言語化できないケースがあります。
その点、すでに業界に関する知見が豊富なSIerであれば、より精確にクライアントの意図を汲んで、品質の高いシステムを提供できるでしょう。そのため特定の業界に特化した実績が豊富なSIerは、それだけで競合他社との差別化がしやすく、顧客層を広げていくことができます。
特にサービスのデジタル化・スマート化やレガシーシステムの刷新といったDX推進が活性化している業界では、多くの案件を獲得することが可能です。そのような業界での開発を得意領域とするSIerは、蓄積された知見をさらなる案件獲得に活かすことで、今後も順調な成長が予想されます。
また金融業・製造業・医療・官公庁などは、システム開発のニーズが持続的にあり、また案件の規模が大きく内製化が難しいので、将来性のある業界といえるでしょう。
金融業・医療・官公庁は、ほかの業界と比べてセキュリティやガバナンスが重視される領域でもあるため、業務の依頼には信頼と実績が不可欠。条件をクリアできるSIerの数はそれほど多くないため、一度受注すると長期プロジェクトになるケースも少なくありません。
規模が大きく、特定の企業に依存しない独立系のSIerのなかには、これら将来性のある業界を複数かかえている企業もあります。単に大型案件を継続的に受注できるだけでなく、急速な時代の変化に影響を受けにくいため、経営基盤が安定している企業といえます。
先端テクノロジーの知見やIT人材を保有している
加えて有望なのが、AI・データサイエンス・IoT・クラウドといった高度かつ先端のテクノロジーに強いSIer。これらの技術や知見を用いたシステム開発は、AIやツールなどでの代替が難しいうえに、スキルを持った「先端IT人材」が不足しているため、内製化がとくに難しい領域です。
しかも、これらの技術は汎用性が高く、生産性向上・省人化・省エネ化・自動化・品質向上などのニーズから、さまざまな業界で導入が促進されています。現にいずれの技術も市場規模は拡大中。そのためまだ会社として開発実績がない新規の業界であっても、技術力が買われて受注につながる可能性は十分にあるでしょう。
SIerに先端テクノロジーの知見・スキルが蓄積されていくか否かは、どのような案件に携わるかに大きく左右されます。
たとえば顧客に高度なIT技術への理解・需要が少ないケースや、保守・運用などがメインの業務では、知見・スキルはなかなか社内に蓄積されません。実績や知見がないため、新たに先端技術を駆使した案件を獲得するのも難しくなり、技術力の高いSIerとの差はどんどん開いてしまうでしょう。
経済産業省は、2030年に約79万人の先端IT人材が不足すると試算しました。一方、システムの請負開発・運用・保守などを担う「従来型IT人材」は、国内のIT需要が伸びなければ、2030年に約10万人が余剰するという予測もあります。
そのため、会社の安定的な成長という観点だけでなく、システムエンジニアとしての将来性を鑑みても、先端テクノロジーのスキルを実践の場で活用できるか否かは、SIerを選ぶ重要なポイントです。
すでに社内に知見があり、従業員を育成できる企業であれば、国内の人材不足に悩まされることなく事業を拡大できます。そのようなSIerはIT人材からの人気が高く、より優秀な人材を獲得しやすくなるため、SIer・システムエンジニアの二極化がますます顕著化する要因にもなりうるでしょう。
上流から下流まで幅広い案件がある
企画・設計や要求仕様の取りまとめなど、上流工程の実績・ノウハウがあるSIerも、今後は成長が見込まれます。
SIサービスは、クライアントから直接仕事を受注する元請けの下に、二次請け・三次請けの企業が連なることもあります。下請けの企業は顧客のニーズを把握しにくく、大規模なプロジェクトマネジメント経験がある人材やスペシャリストを育成できない会社も多いため、受注する案件の幅を広げるのが難しくなります。
また、下請けの案件になるほど発注者からの要求は多くなるため、納期・業務内容・業務量などの融通がききにくくなるのも難点です。機能や開発プロセスに関する提案もなかなか通りません。
そのため下請けの案件が多いSIerは、労働時間が長く勤務日数は多いなど、労働環境が悪化しがち。慢性的な人材不足に悩まされ、少人数で膨大な業務をこなすという悪循環から脱却するのが難しくなります。
近年は業界内でも働き方改革が促進されており、このような多重下請け構造そのものを見直そうとする声も高まってきました。しかし依然として、過酷な労働環境のSIerが存在するのも事実です。
一方で、上流工程のみに携わっていて、下流工程を下請けの企業に丸投げしているSIerにも「経験できる案件の幅がせまい」というデメリットがあります。
上流工程の業務は、クライアントとの調整や、書類・資料の作成、マネジメントなどに限られます。必然的に、システム開発やコーディングといった、専門的な技術・スキルは蓄積しにくくなるでしょう。
結果として競争力が低下したり、さまざまな実績・スキルを獲得したいエンジニアから敬遠されたりと、成長の停滞につながるリスクもゼロではありません。そのため上流から下流までの一連のプロセスをトータルで対応できるか、長年の経験に裏打ちされた確かな技術力があるかは、SIerの将来性を左右します。
システムエンジニアの理想的なキャリアという観点でいえば、システム開発の現場で技術を身に着けながら、徐々に上流工程にも携わってビジネススキルやクライアントワーク、マネジメントのスキルを習得していく流れが王道。
特定の領域でスペシャリストをめざす道もあるものの、プログラミングとヒューマンスキルの両方に習熟しているシステムエンジニアは数が少なく、AIに取って代わられる可能性も低いため、市場価値の高い人材として長く活躍しやすくなります。高収入なITコンサルタントやフリーランスへの転身など、キャリアの選択肢が増えるのもメリットです。
いずれ上流工程に携わりたい人は、学習環境が整備されているかどうかも、企業と自らの将来性を見極めるポイントになるでしょう。
自社開発サービスを展開している
SI事業での知見・経験を活かした自社開発のサービスを展開している企業であれば、中長期的に安定した経営が維持できるでしょう。
DX推進の重要性が認知されたことで、ITソリューションの需要は業界を問わず拡大中です。また先端テクノロジーを駆使したサービスであれば、知見・スキルの蓄積につながるため、SI事業との相乗効果も期待できます。
たとえば社内の汎用的な業務をサポートするクラウドサービス、データプラットフォームなどのニーズは、これからさらに高まるでしょう。ChatGPTなどの生成AI関連のソリューションや、モノとインターネットをつなぐIoTを活用したサービスも、参入企業が増加している領域です。
加えて、自社開発サービスには海外進出のチャンスがあります。前提として、日本と比べて内製化が進んでいる海外では、システム開発の全工程をまとめて外注するケースはほとんどありません。そのため日本型のSIサービスは海外で通用しにくく、国際競争力に課題があるといわれてきました。
その点、現地ニーズに対応する自社開発サービスであれば、海外の企業・ユーザーに採用される可能性は十分にあるといえるでしょう。これにより、より規模の大きい事業の展開が可能になります。
さらにシステムエンジニアの立場から考えると、プロジェクトの進め方や実装機能などの裁量権が大きいのも自社開発の特徴です。下請けの業務のように厳しい納期に追われることも、無理難題を突きつけられることもありません。
要件定義からシステムの設計・開発・検証・運用・保守までを一貫して経験できるのも魅力でしょう。専門的なスキルが獲得できることもあり、やりがいや将来性から、エンジニア人気も高め。結果として優秀な人材が集まりやすいという好循環をもたらします。
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以上、成長するSIerの条件について解説しました。ソルクシーズグループも、近年の技術やニーズの変化をふまえて、SIビジネスと自社開発のストックビジネス、コンサルティングなど多様なサービスを展開しています。
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※この記事は2024年7月9日に公開した記事を再編集しています。