2019年に市場規模61億円だった国内eスポーツ業界は、国際的な大会での採用などにより認知度・イメージが上昇。2023年には市場規模160億円を突破しました。
2025年には、ファン数が1,000万人に達し、200億円を超える市場になるともいわれており、急成長中の業界といえるでしょう。
またeスポーツは世界的に人気があり、株式会社グローバルインフォメーションが公開しているレポートによると、世界市場は2024年に21億1,000万ドル、2029年までに52億7,000万ドルに達する見通しです。2023年にはIOC(国際オリンピック委員会)が、eスポーツの大会実現に向けた専門委員会を設置。サウジアラビアで、2025年に第1回「オリンピック・eスポーツ・ゲームズ」を開催することが決定しました。
今回はそんなeスポーツ業界について、カテゴリー別の市場規模や、現状の業界動向、注目職種を紹介していきます。eスポーツが好きで仕事に興味がある人、将来性のある業界で働きたいという人は、ぜひ最後までご覧ください。
eスポーツ業界のカテゴリー別の市場規模
さまざまなビジネスモデルが共存することで、市場規模の拡大に寄与しているeスポーツ業界。一般社団法人日本 e スポーツ連合が、「日本eスポーツ白書2023」に掲載しているさまざまなデータをサイト上で公開しています。そのなかから、まずはカテゴリーごとの市場動向を詳しくチェックしていきましょう。
業界の成長を牽引しているのが、選手のユニフォームに入ったロゴや、eスポーツ関連のイベント会場・練習場・オンラインプラットフォーム・配信画面の広告などによるスポンサー料です。eスポーツのゲーム空間内に広告を掲載したり、キャラクターやアイテムと商品をコラボしたりするインゲーム広告といった手法もあります。
現在は世界的な視聴者人口の増加により、著名人や有名企業が続々とeスポーツのスポンサーになっています。
eスポーツのプレーヤーやファン層の多くを占めるZ世代に、効果的にアプローチできるのも、eスポーツマーケティングのメリットといえるでしょう。Z世代は、ほかの世代に比べてeスポーツへのスポンサーシップによる「ブランドイメージ向上」の効果が高いという調査結果もあります。さらに、SNSでの拡散による「二次宣伝効果」が期待できるなど、訴求力の面でも企業からの注目が集まっているターゲット層です。
2022年の市場規模は125億円と発表されていますが、カテゴリー別の内訳で「スポンサー」は41.9%とかなりの比率を占めました。
この内訳で、スポンサーに次ぐ31.0%と活況なのが「イベント運営」。とくに2022年以降はオフラインでのイベント開催が勢いを増しており、市場の成長に寄与しました。業界ではオンラインのイベントも定着しており、コロナ禍のなかでも堅調に推移しています。
老若男女を問わず楽しめるeスポーツはプロ競技としてだけでなく、芸能人・インフルエンサーを起用したイベントや、地域・学校・企業・福祉施設でのコミュニケーション手段としても注目されています。
これにともない、eスポーツ関連のイベント運営ノウハウのニーズが高まっており、今後はBtoB領域のさらなる活性化も期待されるでしょう。
また、社会貢献性の高さもeスポーツ関連イベントの特徴です。
たとえば競技場・練習場・関連施設が全国に展開されることで、地方創生に寄与すると言われています。子どもの居場所づくりや、高齢者の要介護状態の予防、企業・人材の誘致といった地域課題解決のために、自治体がeスポーツを活用するケースも増加しています。
クールジャパンや国際交流の促進効果も期待されており、eスポーツのイベント関連市場はますます拡大していく可能性が高いといえるでしょう。
eスポーツ業界の国内外の現状
「eスポーツ元年」と呼ばれる2018年以降、日本では続々と新しいプロチームや大会が生まれています。しかし海外と比べると、市場はまだまだ発展途上です。
たとえばアメリカでは、eスポーツはすでに公式のスポーツとして認知されており、プロ選手などの社会的地位も高まっています。オハイオ州立大学、マサチューセッツ州ベッカー大学、バージニア州シェナンドア大学などが、eスポーツの学位プログラムを提供するなど、教育機関の市場参入も活況です。
ちなみにeスポーツ業界の世界市場で、いま最も勢いがあるのが中国といわれています。eスポーツ施設の建設、国際的な競技大会の開催など、政府の積極的な支援・投資もあり、今後はさらに市場規模を広げていく可能性が高そうです。
一方、日本のゲーム業界の主流は、長らくテレビゲームでした。そのためeスポーツのようなオンラインに接続して楽しむゲームの普及が遅れたという背景があります。
また、ゲームのやり過ぎが子どもの勉強の妨げや、ゲーム依存症による社会生活への支障につながるのではないかという親世代の懸念も、eスポーツが社会的な支持を受けにくかった要因のひとつです。
とはいえ、コロナ禍での巣ごもり需要や、東京オリンピックのプレイベントでの採用といった影響もあり、日本にも少しずつeスポーツが浸透しており、若者やその親世代を中心に「eスポーツに携わる仕事」の認知も進んできました。
さらに、2024年9月に株式会社ネオマーケティングが実施した調査では、60歳以上のシニア層のうち約80%が、「eスポーツを知っている」と回答しています(「名前のみ知っている)を含む)。
スポンサー企業の増加により、優勝賞金が1億円を超える大会も生まれており、プロ選手をめざしてスキルの獲得をめざす若者や、その若者をサポートする学校・施設も増加。国内でも、eスポーツ業界のさらなる市場拡大が予測されます。
eスポーツ関連の職種
eスポーツ業界は、プロとして活躍する選手だけでなく、さまざまな立場の人が携わっており、関連する職種が多様であることも特徴のひとつです。
たとえばプロチームの組織内だけでも、「プロゲーマー」「監督・コーチ」に加えて、「データアナリスト」「マネージャー」といったさまざまなプロフェッショナルが活躍しています。
「プロゲーマー」は高度なゲームスキルと戦略を駆使して、競技大会などでeスポーツをプレーするプロ選手。プロフェッショナルプレーヤーとも呼ばれる業界の中心的な職業です。基本的にはeスポーツチームに所属しており、大会の賞金やチームからの給与、スポンサー企業からの支援が収入源になります。
「監督・コーチ」は指導者的な立場として、プロゲーマーやチームを支援する仕事です。トレーニングメニューの提供に加え、選手の心身の健康管理や、ゲームの戦略立案、プレー中の指示出しといった役割も果たします。eスポーツへの深い理解が求められる職種のため、元プロゲーマーが引退後にチームの監督・コーチとして採用されるケースも少なくありません。
「データアナリスト」はゲームやチーム、相手プレーヤーなどに関するさまざまなデータを分析。効果的な戦略につなげることで、チームの勝利に貢献する仕事です。リアルスポーツやビジネスでのアナリスト経験や、数字を活用したマーケティング業務などの経験・スキルが活かせる仕事といえます。
「マネージャー」は組織づくりや試合・トレーニングの準備、スケジュール管理、選手のメンタルケア、外部との交渉、広報、ファンとの交流の機会の創出といった多様なサポートを行います。こちらも他業界でのマネージャー経験を活かしやすい仕事です。
また、チームの収益源獲得を目指す「ビジネス開発/セールス」、契約締結や法律関連の管理を行う「法務」も、プレーヤーやチームを支える重要な役割を担っています。特定領域の専門的な知識・スキル・経験を活かして、他業界から転職するケースが少なくありません。
一方、イベントや大会を成立させるために不可欠なのが「運営スタッフ」です。たとえば「プロデューサー」「ディレクター」「イベントコーディネーター」は、企画・運営・制作を行うことでイベントを興行として成功させるのが仕事。出演者やスポンサーなど、幅広い立場の人と関わるため、コミュニケーション能力が求められます。イベントの企画会社や、広告代理店での仕事が活かせます。
そのほかにも撮影を行うためのカメラ・音響・照明といった機材を扱う「技術スタッフ」や、各種メディアでプロモーションを行う「マーケティング/PR担当」など、さまざまな運営スタッフがイベントに携わっています。技術スタッフはテレビ・映像業界での経験が、マーケティング/PR担当はマーケティング会社や広報などの経験が活かせる仕事です。
イベントの盛り上がりには実況中継や解説などを行う「解説者/キャスター」も欠かせません。生放送はもちろん、録画中に解説を行うケースもあります。プレー内容や補足的な知識を、eスポーツに馴染みがない人にもわかりやすく届ける重要な仕事といえるでしょう。
同じく、業界の間口を広げるうえで重要な役割を果たすのが「ジャーナリスト/ライター」。イベントのレポートのほか、プロ選手へのインタビューや最新ニュース、業界トレンドなど、eスポーツに関連する幅広い記事を執筆します。文章力やリサーチ能力、マーケティングスキルなどが活かせる仕事です。
プロゲーマーと同様にeスポーツでプレーする職種として「ストリーマー」という職業もあり、プラットフォーム上でライブ配信をしながら視聴者と交流をして、投げ銭・広告費などで報酬を得ています。競技スキルよりも、ファンを楽しませるトーク術など、エンタメのスキルが重要になる職種です。プロチームに所属しながら、ストリーマーとして活躍するプレーヤーも少なくありません。
「eスポーツゲームデザイナー/開発者」は、eスポーツの新競技として採用されるような、ゲーム・アプリを制作する仕事。ゲーム開発の専門的なスキルに加えて、ユーザーのニーズにマッチしたゲームを着想する企画力・アイデア力が求められるでしょう。
eスポーツ業界を支えている仕事としては、ほかにも次世代のプロゲーマーを育てる「eスポーツ講師」、eスポーツチームやイベントのスポンサーとなる企業を募る「スポンサーシップコーディネーター」などの職業が挙げられます。
加えて、現在はeスポーツを一般企業・教育機関・福祉施設の活動に役立てるコンサルティング事業など、eスポーツ関連のさまざまなビジネスも生まれています。
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※この記事は2024年7月10日に公開した記事を再編集しています。