デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性の認知拡大に伴って、システム開発のニーズは増加しています。しかし、システム開発とひとことでいっても、実際に手がける案件は業界が抱える課題・需要ごとに多様化しています。
株式会社富士キメラ総研によると、2022年度のシステム開発の市場規模は業種共通型が9,388億円を見込まれているのに対して、業種特化型は3兆7,703億円と4倍以上になる予測です。システムエンジニアには、それぞれの業界に応じた専門的な知見・スキルが求められているといえるでしょう。
そこで今回は、【前編】【後編】の2回にわたり、業界別のシステム開発ニーズと事例をレポートしていきます。
最初に紹介するのは、金融業のシステム開発事情。株式会社富士キメラ総研によると、2022年度のITソリューション市場予測で、製造業に次いで投資規模が大きいと見込まれている業界です。銀行・証券・保険・信販などすべての領域で積極的なIT投資が行われており、今後もリプレースを中心にニーズの拡大が予測されています。
とくにクレジット、FinTechは、政府がキャッシュレス比率を高めるためにさまざまな政策を展開していることもあり、開発ニーズの高い領域です。
たとえばソルクシーズが提供する「杯王 on Cloud」は、新規事業を立ち上げたい企業や、中小規模のクレジット企業のニーズに応える個別クレジットシステム。受付・審査から請求・入金までの業務に対応し、中小規模で展開されるクレジット事業の業務効率化をサポートしています。
保険業界では、AIを活用してドライブカウンター(車に搭載する計測器)の分析をするソリューションが導入されており、銀行においては顧客の要望とやり取りの分析をサービスの提案に活かすシステムが注目されています。
一方、製造業は、競争力向上を見据えて部門ごとにシステムやプラットフォームを導入する企業が多く、ニーズ急上昇中の領域です。
とくに需要が高まっているのが、製品ライフサイクルを管理する「PLM(Product Lifecycle Management)」、生産効率の最大化を実現する「MES(Manufacturing Execution System)」などの製造現場向けシステムや、全社のデータを管理・分析する共通プラットフォームの開発です。背景にあるのは、製造コスト・期間の削減、人材不足・技術継承などの課題解決のニーズが高まっていることです。
金融・製造に次いで規模の大きい医療領域では、診療・治療・薬剤に関連するソリューションが急増中。患者の医療データをAIが自動的に統合・分析したりデータベース化したりするシステムや、服薬履歴を家族や医師が確認できるシステムなどの事例があります。
さらに、通院が難しい患者にビデオチャットなどで診察を行える遠隔診療システム、予約・会計を効率化する事務関連のシステム活用も進んでいます。
介護業界では高齢者の見守りシステムが進化し続けており、ソルクシーズでもIoTを活用した「いまイルモ」を展開。スマホから要介護者の安否確認ができるソリューションです。サービス立ち上げ当初は、独り暮らしの父母など高齢者を見守りたいご家庭の利用が大半でしたが、現在はサービス付き高齢者住宅や有料老人ホームの導入が増加中です。
小売業では新型コロナウイルス感染症拡大の影響でネット通販が拡大するなど、生き残りをかけたDX推進が急務となっています。セルフレジ機能が搭載されたショッピングカートは、買い物客の動きをデータとして取得。商品陳列やレイアウトの改善に活用できます。
加えて、チャットを活用したパーソナルスタイリングや、MAツールによる見込み顧客の発見など、営業を最適化するシステムにも高い需要があります。
以上、金融・製造・医療・小売業のシステム開発最新事情を紹介しました。【後編】でも引き続き、業界ごとのシステム開発ニーズと事例をレポートしていきます。ぜひあわせてご覧ください。