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ITトレンドレポート

多様化するクラウド・日本企業のニーズが高まる3つのトレンドとは? 【後編】

ITトレンドレポート

「多様化するクラウド」と題した今回の記事は、日本にとって特に重要なクラウド・コンピューティングの3つのトレンドを2回に渡って紹介しています。【前編】では、中核的な業務システムをクラウド化する「ミッションクリティカルクラウド」の概念や議論について解説しました。

【後編】で紹介する重要トレンドは、「クラウドネイティブのNEWオンプレミス」「ソブリンクラウド」です。

近年は社会情勢の変化が激しく、ビジネスモデルやシステムの多様化、グローバル化、エコシステムの形成といったニーズに対応するためには、クラウドがもたらすスピード・柔軟性・スケーラビリティが欠かせなくなりつつあります。

一方で、パブリッククラウドは信頼性・効率性の面で不安があり、ミッションクリティカルな領域はオンプレミスが主流にならざるを得ないという状況がありました。

そんななかで、徐々に支持を集めているのが、マイクロサービス・アーキテクチャ、コンテナ、API、オープンソースソフトウェアといったクラウドネイティブの要素を取り入れた「Newオンプレミス」への変換です。

Newオンプレミスは、オンプレミス上にクラウドサービスで実現されている柔軟性を取り入れるソリューションです。そのため、短時間でのデータ提供、堅牢なセキュリティ、ガバナンスを効かせた運用、ITコストの最適化といったオンプレミスの強みは失われません。

IT関連のリサーチとコンサルティングを手がけるガートナーは、「Newオンプレミスの登場により、シンプルなスタック(≒データ構造とその処理)で実現されている従来のオンプレミスは、2030年にはかなり減少するか、場合によってはなくなっている」と予測しています。Newオンプレミスの登場によって、多くの企業が自社のクラウド戦略をあらためて考える必要が生じそうです。

最後に紹介するトレンドは「ソブリンクラウド」。「ソブリン」とは「主権者」という意味で、クラウドのセキュリティ・コンプライアンス・データ主権を、各国の法的規制に準じて運用する概念です。

地政学的な変化が大きくなっている現在、ソブリンクラウドに関連する議論は多岐にわたります。

たとえば外資クラウドを利用する場合、自国にとって機密性の高いデータであっても、他国の政府からの開示要求を拒否できない可能性があります。そのため、外資クラウドの活用は、政府・地方自治体・公的機関はもちろん、金融機関や公共事業を行っている企業にとってもリスクが大きくなっています。

その点、ソブリンクラウドは、クラウド上のデータ自体を国外で利用することなく、各国の司法権の範囲内で保存・処理されるので、データが国外に流出する可能性は低くなります。

このようなセキュリティの観点に加えて、各国で盛んに議論されているのが「国の利益・主権をいかに守るか」という課題です。

特に欧州では、AmazonMicrosoftGoogleなどのハイパースケーラー(世界的に利用されている大規模なクラウドサービスプロバイダー)から、いかに自国のコントロールを取り戻すかが重視されています。また米国では、脅威となりうる他国からアクセスされるリスクをいかに軽減するかという議論がなされています。

日本では、これらの議論に加えて、国内の有事にいかに備えるかも重要なテーマとなっています。

現在は、それぞれのハイパースケーラーがソブリンクラウドを強化してはいるものの、議論・実践ともにまだまだ発展途上で、各社の取り組みにも差異があるのが実情です。

一方でガートナーは「ハイパースケーラーはリスキーだから、国産クラウドにすればよい」といった極端な議論や過剰な反応には、注意を促しています。

このように、クラウドを巡る状況は複雑化しており、企業が最適な意思決定をするためには、さまざまな観点からの検討が必要です。クラウドに精通した人材の獲得や、外部リソースの活用に加えて、自社のシステムエンジニアにも知識・スキルの向上が求められるようになるでしょう。

今後、クラウドはますますニーズが高まるとともに、多様化が進むといわれています。システムエンジニアにとって、避けて通れない技術となりつつあり、常に最新情報をキャッチアップしておく必要がありそうです。

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