さまざまなIT資産やデータにいつでもどこからでもアクセスできる「クラウド・コンピューティング」。地球規模のスケーラビリティ、急激な変化にも適応できるスピードと弾力性、AI・アナリティクス・IoTをはじめとする高付加価値化など、さまざまなメリットがあり、急速な進化を続けている領域です。
2022年11月には、ガートナージャパン株式会社が「2023年に向けて日本企業が注目すべきクラウド・コンピューティングのトレンド」を発表。クラウドが複雑化・多様化するなかで、その全容を把握して戦略の方向性を打ち出すことが難しくなっているとして、トレンドを理解することが重要と訴えています。
今回は【前編】【後編】の2回にわたり、日本企業にとって特に重要となる「ミッションクリティカルクラウド」「クラウドネイティブのNEWオンプレミス」「ソブリンクラウド」という3つのトレンドについて解説します。
最初に紹介する「ミッションクリティカルクラウド」は、新しく登場したクラウドではなく、その名の通り「業務上不可欠となる重要な領域」をクラウド化するときの概念と実装手段です。
ミッションクリティカルとは、基幹業務を実行するための中核的な情報システムのこと。これがダウンしてしまうと、企業は取引停止や信頼の喪失など、深刻な損害を被ります。
信頼性・効率性の観点から、多くの日本企業ではミッションクリティカルなシステムを長年にわたり、オンプレミスで稼働してきました。ミッションクリティカルのクラウド化となると、「移行時や障害発生時のリスクが大きい」「復旧を自社でコントロールできない」といった不安があり、敬遠する企業が多いようです。
しかし障害発生のリスクがあるのは、オンプレミスのシステムも同様です。クラウドへの移行には、コストの削減、変化への対応力・柔軟性の獲得、セキュリティの向上といったさまざまなメリットがあります。
企業の競争力を考えたとき、重要なのは保守的な体制に留まることではなく、リスク発生時の対応手段を確保したうえでよりよい選択を行うことでしょう。
実際に、航空会社・金融機関をはじめとする多くのグローバル企業が、ミッションクリティカルなシステムのクラウド化や、オンプレミスとクラウドの併用などの取り組みを推進しています。
2022年2月には、富士通がメインフレームの製造・販売を2030年で終了すると発表しました。多くの企業にとって、ミッションクリティカルなシステムをクラウド化するか否かの検討は避けられないテーマになりつつあります。
この意思決定のヒントになりうるのが、【後編】で紹介する「クラウドネイティブのNEWオンプレミス」です。クラウドの最新事情をチェックしておきたい方は、ぜひ【後編】もご一読ください。