短い期間で急速な進化を遂げたIT業界とデジタル技術。「IT革命」という言葉が流行した20年前、システムエンジニアたちは今の常識からは考えられないような環境で働いていました。
今回は、そんな20年前のITとデジタル環境にタイムスリップしてみます。格段に便利になった現在との違いをお楽しみください。
まずは、ブラウザの話から。インターネットが現在ほど普及していなかった当時、2大ブラウザとして君臨していたのはGoogleでもSafariでもなく、「インターネットエクスプローラ(IE)」と「ネットスケープ」でした。
注目はネットスケープです。ブラウザでのネット閲覧はなんと有料※。しかも現在のようにどんなブラウザでも同じように表示されるわけではなく、インターネットエクスプローラで問題なく表示されているページであっても、ネットスケープではデザインが大きく崩れてしまうなんてこともありました。
(※機能制限を設けた無料版を配布し、機能制限のない製品版の購入を促した)
利用シェアが10%ほどだったネットスケープでの表示をどこまで考慮するかは、当時のデザイナーやエンジニアにつきまとう課題だったのです。
そういえば、「2000年問題」も、懐かしい思い出です。古いシステムの中には、メモリ節約のために西暦の年数を下2桁のみで表記したり、データ保存したりしているものがあり、2000年に「00」に変わるタイミングで、プログラムが誤作動する可能性が指摘されました。
「銀行の預金がゼロになる」「交通機関が麻痺する」「飛行機が墜落する」といった噂が、まことしやかにささやかれ、「1999年、恐怖の大王がやって来る」というノストラダムスの大予言とセットになって、2000年に世界中のコンピュータが狂って文明が崩壊するといったトンデモ説まで浮上しています。
プログラマーは、古いソースコードのチェックなど、重大なトラブルを防ぐための対策に追われることに。結果、大きな事件は何も起こらず、システムエンジニアたちは恐怖と緊張から解放されました。
今ではクラウド、サブスクが当たり前となった記録メディアも、20年前は外付けハードディスクやフロッピーディスクが主流でした。
フロッピーディスクは薄くて四角いフォルムが特徴的な記録媒体で、容量はたったの1.4MB。記録したデータを別のコンピュータに移行できたため、インターネットが普及する前には重宝されていました。
実物を見たことがなくても、Office系ツールなどの保存アイコンとして認識している人は多いのではないでしょうか。
しかし昨今は、フロッピーディスクを知らない世代が増えてきており、アイコンのデザインも見直されているようです。パソコンから取り出す際の「カシャ」という気持ちいい音を知る世代としては、なんだかせつないお話です。
2000年代は、携帯電話が爆発的に普及した時期でもありました。
1999年にサービスを開始したドコモの「iモード」を皮切りに、携帯電話がインターネットに接続できるようになり、流行していたポケベルに代わって、メール機能でやり取りするのが一般的になりました。
さらに2002年には、カメラ付きの携帯電話で撮影した画像をメールで送信する「写メール」というサービスも生まれています。最近は「写メ」っていわなくなりましたね。
当然、SNSはまだ存在しておらず、画像付きメッセージのやり取りもメールアドレスを伝えた知人に限られていました。
このように、20年前でさえ現在とはまったく異なるIT・デジタルの世界。
さらに30年までタイムスリップすると、「パソコンは数人で1台を使用」「システム設計書は手書き」など、驚愕の環境でシステムエンジニアが働いていた時代もありました。
自分の席でタバコを吸いながら、コーディングシートに手書きして、できあがったら「パンチャーさん」に頼んで打ち込んでもらった穴あきのカードを機械に読み込ませて…。100人以上の大規模プロジェクトが、3年がかりでシステムを構築するという話も珍しくなかったのです。
「手書きがいいよね。フロッピーやハードディスクに入れると、データが消えちゃうから。あはは」という人もいました。何をいってるのか、今ではよくわかりませんね。
ITを「イット」と読み間違える人がいた時代から20年。AI、IoT、DX、、、といった言葉がすんなり浸透する時代になりました。
もしかすると、20年後には、「昔は人間が設計書を作ってたんだって。システムエンジニアって聞いたことある?」「スマホって知ってる?あんなデカいの、持って歩かないよね。ウケる」といわれているかもしれませんね。