日進月歩で進化を続けるクラウドは、データ活用による企業の競争力向上に必要不可欠なソリューションです。この記事では、クラウドの最新動向を5つのキーワードを軸にレポート。【前編】では「ハイブリッドクラウド」と「エッジ・トゥ・クラウド」について解説をしました。
サーバーレスコンピューティング
【後編】でまず取り上げるのは、3つ目のキーワード「サーバーレスコンピューティング」です。
「サーバーレス」といっても、サーバーがなくなるわけではありません。サーバーの設定・保守管理などをプロバイダーに委任できるモデルで、開発者はインフラストラクチャにわずらわされることなく開発に専念ができ、生産性向上を図れます。
さらにサーバー上での特定の動きや要件に応じて、自動的にスケールアップ・スケールダウンが実行されるのも、サーバーレスコンピューティングの特徴です。
割り当てられたリソースで料金が決まる従量課金制が採用されているケースが多く、アイドル時間の維持費が発生しないためコストパフォーマンスが高いというメリットがあります。
SASE(セキュア・アクセス・サービス・エッジ)
次の「SASE(セキュア・アクセス・サービス・エッジ)」は、ネットセキュリティとネットワーク接続の利便性を実現するクラウド型のフレームワークです。
SASEは、ゼロトラストを前提としているのが特徴で、リモートワークをはじめとするデジタルトランスフォーメーション推進に伴うセキュリティ面のリスクを軽減します。
従来のクラウドサービスでは、セキュリティ性能を高めようとすると、本社やデータセンターの設備投資や管理コストが増大したり、通信パフォーマンスが悪化したりといったデメリットがありました。
しかしSASEは、セキュリティをクラウドサービスに接続する経路上で実現することで、パフォーマンスとのトレードオフを解消。費用対効果の高さと柔軟性を両立できます。
マルチクラウド
最後に紹介するのは、【前編】の冒頭で「成熟度が低いと認識している企業が多い」と説明した「マルチクラウド」。複数のクラウドサービスを、ひとつのアーキテクチャに統合する構築手法です。
【前編】で解説したハイブリッドクラウドは、パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせる実装モデルでした。
対してマルチクラウドは実装モデルの分担にとどまらず、異なるベンダーが提供する複数のパブリッククラウドを用途に応じて使い分けるなど、より柔軟にサービスをカスタマイズします。
そのため、スムーズな運用やコスト管理、セキュリティ強度の統一には細かいシステム設計が必要になるものの、各クラウドサービスの強みを最大限に活かした環境を構築でき、パフォーマンスの大幅な向上をめざせます。
複数のサービスを利用することで、データ喪失やシステム停止のリスクを分散でき、特定のベンダーへの依存回避にもつながるソリューションです。
以上、最近のクラウドを語るうえで欠かせない5つのキーワードを解説してきました。
今後、企業が競争力を高めていくためには、単体のクラウドサービスを活用するだけでは不十分です。複数のサービスやアプローチ方法を取り入れながら、データ活用の俊敏性を高め、ビジネスを加速させていく必要があります。
最新動向にアンテナを張り、自社のクラウド環境を継続的にアップデートしていきましょう。