「ええっ! こんなにお金かかるんですかぁ…」
「ポイント一斉メール」機能の見積金額を見て、私は、ガックリと肩を落とした。
塾長先生は、eラーニングの「ポイント」情報を、毎週一斉にメールしたいと言っていた。
しかし、開発担当者が出した金額は、私の予想をはるかに超えていた。
今期の予算は、もうそれほど残っていない。他に優先すべき開発もあった。
先生の残念そうな顔が脳裏に浮かんだ。
<『できません』で終わるわけにはいかない!>
自席に戻った私は、NLP(※脚注参照) の「スルータイム」風に先生の希望を図にして俯瞰した。
すると、新しい考えが浮かんできた。
↓
<ポイント抽出とメール送信とを分割すればいい!>
私は、機能を分割して開発コストを抑えることを思いついた。先生にはメール送信のひと手間がかかるが、目的は遂げてもらえる。
すぐに開発担当者に内線をかける。思った通り、ポイント抽出機能だけならば、予算内だ。
あとはメーラー(メールのソフトウェア)さえ見つかれば目的は達成できそうに思われた。
ところが、肝心のメーラーがWeb検索を重ねても、なかなか見つからなかった。もちろん製品やサービスとして存在するのだが、どれも思った以上にお金がかかるのだ。
<先生に、手間もお金もかけさせるのか?>
悩んでいる内に、あっという間に週が明けた。
私は、部長への定例報告メールに、先生からの要望、その実現の難しさ、代替案の難航具合を詳細に記した。
一時間後、出張中の部長から返信があった。
メールには一言。
『探したのは、国内だけ?』
私はハッと顔を上げた。
転職前に一生懸命、英語の資格を取得したことが、頭をよぎった。
<そうか! 今こそ英語を使えばいいんだ!>
私は、先生に最適なメーラーを見つけるべく、海外にまで捜索範囲を広げることにした。
慣れないながら、英語でのWeb検索を進めていくと、あるスペイン製のメーラーが見つかった。
比較的簡単に一斉メールを送ることができ、価格も日本国内より、ずっと安い。
<これだ!>
意気揚々とお試し版を使っていると、今度は、疑問点がいくつも出てきた。英語版マニュアルを開くも、肝心の部分はなぜかスペイン語のままで、全く読めない。想像するための知識すら、私には不足していた。
<調べてもわからなければ、制作者に尋ねるしかない>
私は時間をかけてメールを書き、スペインに送った。スペイン人との短い英文のやり取りが、何度か続いた。徐々に疑問が解消されていく。
何とかそのメーラーを使いこなせるようになった私は、ポイント抽出のための開発を進めると共に、先生に自分の代替案を提案した。
調べたり聞いたりして解消した疑問点は、先生への説明に大いに役立った。
電話やメールでもフォローを続けた結果、とうとう先生は、望み通りのメールを送れるようになった。
後日、私は先生に状況を尋ねた。
どうやら無事、一斉メールを送れているらしい。
「何人かの生徒は、『メールが来ると、やってないのがバレて怒られるからやめて』なんて言ってますがね」
先生は冗談めかしながら、活用の様子を教えてくれた。
「それにしても」と私は返した。
「見慣れないスペイン製で、スペイン語だらけでしたのに、よくぞご導入をお決め下さいましたね」
すると、先生は「あぁ」と微笑んで、こう答えた。
「ウチの国語のT先生って、ああ見えて、スペイン語の達人なんですよ!」
<も、もしかして、私の苦労は…>
ricoの前のめりな日々はつづく…。
※【NLP】神経言語プログラミング:Neuro-Linguistic Programming
・インタイム タイプ:自分が「時の流れの中にいる」と感じる。目の前のことに集中しやすい。感情の動きが大きい。行動力がある。
・スルータイム タイプ:時間を流れとして把握する。出来事の順番を重視する。客観的。スケジュールを立てるのが得意。一歩を踏み出すのが苦手。
参考文献「心が思い通りになる技術: NLP:神経言語プログラミング」原田幸治 (春秋社) P284~
※2025/09/26追記
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