日頃さまざまな情報に触れるなかで「VUCA(ブーカ)」という言葉を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。
音だけ聞くと、子供向けキャラやロボットのようなかわいらしい響きがありますが、実際には、現代社会におけるなかなかやっかいな状況を表現した言葉です。
そもそも「VUCA」とはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった造語。
IT技術の急速な発展、自然環境・社会システムの変化、グローバリゼーション、経済紛争、政権交代、新型コロナウイルスの感染拡大などの要因により、めまぐるしく変化する社会の予測不可能性を表しています。
経済産業省は、2019年に「人材競争力強化のための9つの提言(案)」を発表。VUCA時代に対応するための人材戦略の重要性を強調しました。
現状を正確に把握することが難しい現代。企業が競争力を維持するためには、従来型のリーダーとは異なる取り組み方で組織のかじ取りを行う人材が必須です。
そこで今回は、VUCAな時代を乗り切るために求められるスキルや、とりわけ変化の速いIT業界で求められる人物像について、【前編】【後編】の2回にわたり解説します。
前提として、VUCA時代に獲得できる情報はどうしても不完全にならざるを得ません。
状況の変化が急速なため、情報が価値をもつ期間は非常に短くなりました。また個人が気軽に情報を発信できるようになり、ネットには膨大なフェイクニュースが溢れています。
そのためVUCA時代の人材には、正確かつ価値のある情報を見極める「情報処理能力」が欠かせません。
同時に、保有する知識をアップデートしつづける姿勢も求められるでしょう。未知の領域に積極的に挑戦したり、業界内に限定されない幅広い情報・人脈に触れたりと、変化を恐れないメンタリティが必要です。
また、これまでの日本企業は、意思決定や決断に多大な時間を使う傾向にありました。
しかしVUCA時代には、ひとつの計画を絶対視してしまうと想定外の出来事にうまく対応できなくなります。競合他社から出遅れないためには、その時々の状況にダイナミックに対応していく必要があるのです。
そのため、顕在的・潜在的な課題解決をめざすうえでは、複数の選択肢から迅速に仮説を構築・実行する「論理的思考力」「行動力」が不可欠になります。
さらに現在の方略ではうまくいかないと判断したときは、別のプランへと臨機応変に切り替える「状況把握力」「柔軟性」も重要でしょう。
このような知識へのマインドとスキルをもつ人材がリーダーシップを取ることで、組織全体の適応力が高まり、「想定外の出来事」に強いチームを形成することが可能です。
【後編】では引き続き、VUCA時代のリーダーに求められる「人間力」について掘り下げたうえで、IT業界で求められる人物像についても紹介していきます。