2018年に経済産業省が「DXレポート」を発表してから約7年。多くの企業がDXの重要性を認識し、積極的に取り組みを進めています。
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX動向2024」によると、「全社戦略に基づき、全社的にDXに取組んでいる」企業の割合は、2021年度の21.7%から2023年度には37.5%に増加しました。これは2022年度のアメリカ(35.5%)を超える数字です(※1)。
さらに、DXの成果状況として「成果が出ている」と回答した日本企業の割合も、2021年の49.5%から2023年には64.3%に上昇しています(※1)。DXに成功している企業は、国内でも増加傾向にあるといえるでしょう。
その一方で、DXの推進に苦戦を強いられている企業も少なくありません。システム・業務のデジタル化は進んでいるものの、デジタル技術を活かした新規製品・サービスの創出やビジネスモデルの変革といった「攻めのDX」までには至っていない企業も多いのが現状です。
MRI(株式会社三菱総合研究所)は「日本企業のDX推進状況調査結果【2025年度速報版】」で、DXの取り組みの進捗について調査結果を発表しています。
この調査によると、DXがビジネスの変革まで至っている企業において、「DXで想定通りの成果が出ている」という回答の割合は、2022年度の33.7%から2025年度には44.5%に増加しています。これに対して、デジタル化に留まっている企業は、3年を経てもほぼ横ばいとなりました(※2)。
このことから、MRIは「先進的で成果を出す企業」と「停滞傾向の企業」の二極化を指摘しています。
では、DX推進が進まない企業は具体的にどのような課題を抱えているのでしょうか。
IPAは、DXの取り組みを左右する要素として「企業の従業員規模」を挙げています。「DX動向2024」のなかで、DXに「取り組んでいない」と回答した企業を見ると、従業員規模1,001人以上が2.3%、301人以上1,000人以下が11.9%だったのに対して、100人以下の企業では38.1%を占めました。(※1)
さらに、「DXに取り組む予定はない」「DXに取り組むか、わからない」と回答した企業にDXに取り組まない理由を問うと、従業員規模100人以下の企業では「自社がDXに取組むメリットがわからない」が43.6%と、規模の大きい企業と比べて高い割合になっています。(※1)
DXを推進するためには、経営戦略にリンクした中長期的なDX戦略の策定や、DX専門部署の設置など、全社横断的な取り組みが欠かせません。経営者の動機づけは、大きな課題のひとつといえるでしょう。
社内にDXの「専門部署がある」または「専門部署はないが、プロジェクトチームがある」と回答した企業を合わせると、従業員規模1001人以上では89.1%と多数を占めます。301人以上1000人以下(74.9%)と、101人以上300人以下(62.0%)も半数以上。100人以下の企業だけが、27.3%と低い水準に留まっています。(※1)
この結果から、「中小企業はDXの重要性を理解していない」と捉えるのは早計でしょう。社内の人材不足が原因でDX推進の体制が構築できないケースが多いのも事実です。
人材不足は、小規模の企業だけに限った問題ではありません。101人以上の比較的規模が大きい企業でも、DXに取り組まない理由として「DXに取組むためのスキルが不足している」「DXの戦略立案や統括を行う人材が不足している」「DXを現場で推進、実行する人材が不足している」という回答が、それぞれ約5〜7割以上を占めました(※1)。
システムの刷新に留まらない「攻めのDX」には、ビジネス上の課題・需要に基づいたデータの活用・分析や、AIをはじめとする先端テクノロジーの導入が必須です。現場では、ビジネスの知見とデータ活用・先端テクノロジーのスキルを備えた人材が求められています。
例えばIPAの調査では、DXで「成果が出ている」と回答した企業では、、データを「全社で利活用している」「事業部門・部署ごとに利活用している」の回答割合が合わせて73.1%となっています。「成果が出ていない」企業の同回答割合(合計)が37.8%だったことを鑑みると、DXの成功にデータ活用は不可欠といえるでしょう。
MRIの「データ駆動経営の推進課題」の調査で、最も多くの企業が挙げている課題も「データ分析スキルを持つ人材不足」です。さらに、2022年から2025年にかけては「ビジネス課題とデータ分析を結びつけて施策につなげられる人材不足」が課題となっている企業が増加傾向にあり、ビジネス・業務への理解度も重要なファクターと捉えられています(※2)。
ビジネスアーキテクトやAI人材も、多くの企業が人材不足といっています。ビジネスアーキテクトとは、DXの目的設定から導入・効果検証までを一気貫通して推進する人材です。IPAの調査で「最も不足している人材」はビジネスアーキテクトで、2位のデータサイエンティスト(19.1%)を大きく凌ぐ41.9%の票を獲得しています(※1)。
また、IPAの2023年度の調査では「AIに関連する人材が不足している」と回答した企業が62.4%に及びました。「AIツールでデータ分析を行い、自社の事業に活かせる従業員」「現場の知見と基礎的AI知識を持ち、自社へのAI導入を推進できる従業員」は、不足しているという企業が8割を超えています。(※1)
ここでも、必要とされているのは高度な技術をビジネスに応用する知見・スキルです。今後、エンジニアが市場価値を高めていくうえでは、技術力だけでなく、ビジネスに関する知識やノウハウを習得していくことがますます大切になっていくでしょう。
さまざまな企業のDXを支援するSierにおいても、業界ごとのビジネスモデルや業務フローがわかるエンジニアは活躍の場が広がるはずです。「デジタルトランスフォーメーションで 日本のビジネスを導く」というメッセージを掲げているソルクシーズは、DX人材の育成に注力しています。興味がある方は、キャリア採用サイトをご覧ください。
【出典】
※1
DX動向2024
IPA
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/eid2eo0000002cs5-att/dx-trend-2024.pdf
※2
DX推進状況調査結果【2025年度速報版】
MRI
https://www.mri.co.jp/news/press/i5inlu000001qhy3-att/nr20250410.pdf