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ITトレンドレポート

RDB、NewSQL…押さえておきたいデータベースの最新トレンド

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「データベース」とは、特定のデータを特定の形式で整理した情報の集合体のこと。ビジネスやITの領域ではとくに、企業やサービスのさまざまなデータを集積して一元管理するためのシステム全般を指す概念として使われます。

個人情報保護、セキュリティ強化、クラウドの普及など、システムの進化と多様化のなかでデータベースも様変わりしています。運用・メンテナンスを一任できるベンダーも増加しており、導入・維持に必要な手間やコストは大幅に軽減しました。

とくに最近は、DX推進のためのビッグデータ処理・リアルタイム分析、アプリケーション開発、IoT、AIなどのニーズが拡大し、データベースをいかに適切に管理するかが注目されるようになってきました。膨大なデータを効率的に分析してスピーディーな意思決定を実現するためには、機能性の高い最先端のデータベースを選定することが不可欠です。

今回は、そんなデータベースの最新トレンドについて解説していきます。

DBMSが実現する代表的なデータベース

まず前提として、データベースを構築するシステムと仕様は、さまざまです。エクセルで作成した表も、簡易なデータベースの一種です。数式を活用した計算や、並べ替え、フィルタリングなど、最低限の機能が搭載されているのが特徴で、データ量が少ない場合や、複雑な操作が必要ない場合に重宝するでしょう。

一方、より本格的なデータベース管理システムは「DBMS(Data Base Management System)」と呼ばれます。データの追加・整理・検索・抽出・編集など、より自由度が高くて効率的な操作が可能。データの整合性と安全性を確保するためにも、いまやビジネス・IT領域にDBMSの存在は欠かせません。

この記事では、代表的なDBMSを5つ紹介します。「階層型データベース」「ネットワーク型データベース」「RDB(リレーショナルデータベース)」「NoSQL」「NewSQL」について順番にお話していきます。

階層型データベース」はいわゆる「ツリー構造」のデータベースで、関連データが「親」と複数の「子」の関係に位置づけられます。

データの整合性を維持しやすく、ルートが限定的なため、必要なデータをスピーディーに検索できるのが特徴です。ビッグデータの分析など、大規模なデータ処理に適します。ただし構造の柔軟性が低いため、データベースをいくつかの異なる用途で活用したい場合などには向きません。データの追加・削除に手間がかかってしまうのも短所です。

次の「ネットワーク型データベース」は、複数の「親」と複数の「子」が対応関係にあるデータベース。

階層型データベースと比べて柔軟なデータ構造を実現でき、複雑な業務プロセスにも対応できます。データの検索がスピーディーなのも特徴です。ただしデータ構造の把握が難しく、データベース全体の一貫性・整合性を維持するのも容易ではありません。

3つ目の「RDB」は、「RDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)」を活用してデータ管理を行う、近年主流のデータベースです。

RDBMSは「SQL」というデータベース言語を使用して、複雑で高度な検索・集計ができる管理システム。SQLは基本的な構文を使って、データを表形式で管理するための標準的な言語です。RDBMSには表上の各行・各列の交差点にデータが格納され、一貫性と整合性が担保されることで、つねに最新データが参照できるという特徴があります。

これによりRDBでは、目的が異なるデータベースを統合したうえで、さまざまなデータをまとめて参照することが可能。設定したキーを利用して、固有の番号や条件などを入力するだけで、複数のデータベースに存在する関連情報が一気に出力されるため、効率的かつ柔軟なデータ管理が行えます。

テーブルを増やすだけで、新たなデータや機能を効率的に追加できるのも長所です。目的ごとにデータベースを細分化する必要がないため、ある程度の規模のデータ量であれば、低コストで一元管理できるでしょう。

このRDBの登場により、データベース活用の幅は大幅に広がりました。たとえば関連データの種類が多岐にわたる個人情報も、RDBならスムーズに処理することが可能。顧客の属性・購買履歴などにもとづくセグメントや、社員情報の管理なども効率的に実現できます。

現在は「Oracle Database」「MySQL」「PostgreSQL」「SQL Server」「DB2」などを筆頭に、数多くのRDBMSが展開されており、規模を問わずさまざまな企業が導入しています。従来のオンプレミス型だけでなく、クラウド型のサービスも増加中です。

注目度が高いRDBMSとNoSQL

とくに昨今注目を集めているのが、メモリ上で動作するRDBMS。アプリケーション開発のニーズの増加に対応して、大量のデータをリアルタイムかつ高速で処理できるようになりました。

加えて、今後はAIや機械学習の技術を取り入れたRDBMSの展開も期待されています。膨大なデータの解析・処理が自動化されることで、より効率的かつ高精度に、パターン化あるいはパーソナライズされたデータの活用が可能になるかもしれません。

ただし1台のサーバーで管理されるRDBは、性能を向上させるスケールアウトに限界があるのがデメリットです。時代とともに情報量が増加してデータベースの規模が大きくなったり、データ・デバイスの種類が多様化したりすると、遅延が起きる・運用が複雑化するという課題がありました。

また、テキストデータの操作を前提としたデータベースのため、音声・画像・動画といったデータの取り扱いには難があります。いずれにせよ、情報の量と質がともに拡大している現代において、RDBだけでは技術が追いつかなくなっているのです。

このような課題を解決するべく登場したのが、現在トレンドになりつつある「NoSQL」。GoogleやFacebook、Amazonなどが独自に開発した、「SQL」依存した機能制限を解決したデータベース技術で、現在はとくにYouTubeなどの動画サイトや、Facebook、XなどのSNSで活用されています。

ちなみにNoSQLは「Not only SQL」の略語です。SQLを利用しないわけではなく、ほかのデータベース言語とSQLを組み合わせて利用することで、表形式に限定せず、幅広いデータ構造への対応ができます。

最大の特徴は、サーバーの大きさや台数を増やせば増やすほど、柔軟に処理能力を拡張できること。これにより文章にとどまらない、音声・画像・動画及びそれらのデータを組み合わせた非構造的なデータを、円滑に処理できるようになりました。大量かつ多様なデータを分散処理する仕組みにより、RDBのようにデータの整合性を維持する処理が必要なく、障害に強い点、高速処理が行える点も強みです。

一方、現時点ではコストが高くデータの加工が難しいなど、導入のためのハードルが高いところは難点といえるでしょう。データの整合性が低い点、複雑なクエリの実行には向かない点、データのモニタリングが難しい点もデメリットです。

そんなNoSQLの種類は大きく「キーバリュー型」「ドキュメント指向型」「ワイドカラム指向型」「グラフ型」の4つ。

キーバリュー型」は、データを「キー」と「バリュー(値)」のペアで格納するのが特徴です。長所は容量の大きさと、処理の速さ。動画・文字・画像の扱いに向いており、拡張性にも優れるデータベースです。代表的なシステムとしては、Amazonの「DynamoDB」が挙げられるでしょう。

ドキュメント指向型」はオンラインのゲームアプリなどで利用されることが多いデータベースです。データを柔軟な構造を持つひとつのまとまり(ドキュメント)として保存することで、文字などの不定形データを処理します。NoSQLのなかでも人気のある「Mongo DB」が、ドキュメント指向型を採用している代表的なシステムです。

ワイドカラム型」は行動指向型とも呼ばれ、主にデータ分析に使用されます。クエリ(データベースからデータを取得、更新、または削除するための操作)と関連するデータをまとめることで、簡単に検索やデータ運用・集計処理ができる仕様が特徴。たとえば「Cassandra」「BigTable」などがワイドカラム型の代表的な製品です。

最後の「グラフ型」はFacebookが開発した「Cassandra」などの、SNSで利用されることが多いデータベース。ほかのNoSQLのシステムと比べて、分散性・拡張性はそこまで高くないものの、データごとに名前・年齢・性別・住所といった複数の要素を設定したり、データ同士の関連をパターン化したりできます。

NewSQLのメリット・デメリット

さらに現在は、このNoSQLをさらに発展させた「NewSQL」にも注目が集まっています。

NewSQLはNoSQLの拡張性と、RDBの整合性を両立させることで、ビッグデータ解析の効率化を実現した技術です。たとえばGoogleの「Spanner」や、PingCAP社の「TiDB」、Yugabyte社の「YugabyteDB」、Cockroach Labs社の「CockroachDB」などが代表例です。

NewSQLは「分散SQLデータベース」とも呼ばれ、表形式のインターフェースを保持しつつ、複数のデータを分散・並行処理する機能を備えています。

これによりデータが大規模になっても、速度を落とさずにパフォーマンスを発揮することが可能。可用性・耐久性もこれまでのデータベースから大幅に向上しました。Spanner以降の製品にはSQL互換性があるため、RDBの操作スキルやツールをそのまま転用できるのもメリットです。

一方、現時点ではまだまだ知名度は低く、学習・導入・運営のコストが高くつきます。既存の製品では、従来のデータベースの機能をまかないきれない部分も多く、NoSQLのような非構造データの格納もできません。

とはいえ、今後企業が膨大なデータをもとにビジネスを最適化していくうえで、NewSQLは欠かせない技術になっていく可能性が高いでしょう。ビッグデータ解析のほかに、大量のユーザーがアクセスするオンライン取引の処理システムや、SaaSアプリケーション、IoTデータの処理といったシーンでの活用も期待されている注目のデータベースです。

新たなデータベースを導入する際に必要なこと

以上、データベースの最新トレンドを紹介しました。DX推進に伴い、主流になりつつあるNoSQLやNewSQL。とはいえ、膨大なデータや多種多様なデータをシームレスに扱う必要性がなければ、これらの技術はオーバースペックになりかねません。

その場合には、安定性・信頼性があり、サポート体制が充実しているRDBを採用するのが妥当でしょう。将来的なスケールアップを想定する必要はあるものの、小〜中規模のデータ量であれば、単一のサーバーで完結するRDBMSのほうが、低コストかつスピーディーに処理できるケースもあります。

データベース関連の技術は急速に進化しており、機能性が高いシステムほど、求められるオペレーションやスキルセットも高度なものになりがち。結果として担当者の負担が増加してしまったり、業務が属人化してしまったりと、新たな問題をまねく可能性もゼロではありません。

クラウド型のデータベースを導入して、運用やメンテナンス・拡張などをベンダーに一任する手もあります。データベース管理の負担が軽減されれば、人材コストを抑えて、コア業務により多くのリソースを注力できるでしょう。

ただし、データを外部のサーバーに保存することで、セキュリティやコンプライアンスのリスクが生じる可能性もあるため、注意が必要です。厳密な契約書の作成、パフォーマンスの定期的な監視、アクセス権限のルール設定など、社内に「ベンダリスクマネジメント」の体制を確立して、安全性を高める取り組みが求められます。

必要なスキルセットやセキュリティ性能以外にも、データベースによって適切なデータ量や用途・予算・パフォーマンス・操作性などは異なります。いくつかのデータベースを比較したうえで、より要件に合った製品の導入を検討することが重要です。システムのなかには無料で仕様を試せるものもあるため、導入前にチェックしてみるのも一案でしょう。

それぞれのデータベースの特徴を抑えて、ぜひ目的にマッチした管理システムの選定をめざしてみてください。

※この記事は2024年2月1日に公開した記事を再編集しています。

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