2017年より話題になり始めたRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、昨年になって急速に市場が広がり、大手企業においては「数万時間の労働時間を削減」「社員数千人分の業務量を効率化」などというニュースが聞こえてくるようになりました。
パソコンのなかにソフトウェアを活用したロボットを埋め込み、事務作業を代行させる仕組みは、どこまで広がるのでしょうか。
RPAをいち早く導入したのは、業務削減・改善の効果が高い大企業でした。
「IDC Japan」によると、RPAソフトウェアの市場規模は2018年で約156億円。前年比の伸び率は113.5%に留まっており、業務効率化を図る大企業については、既に活用しているところが多数派になりつつあるようです。
ベンダー別の売上を見ると、NTTデータ、UiPath、富士通の3社で75%のシェアを占めています。金融や製造などの業界では「RPAはアタリマエ」なのかもしれません。
「大企業×大手ベンダー」の導入合戦が一巡した感がある今、マーケットの動向は「中堅以下の企業の導入」「サービスの多様化」にフォーカスされています。
MM総研が2019年1月に行った調査では、年商50億円以上の企業の利用率は32%。中小企業の活用を促進するためには、さまざまな課題を解決する必要があります。
利用企業や検討企業から聞こえてくるのは、以下のような声です。
「会員登録や書類の作成など、定型業務の自動化で威力を発揮するが、カスタマイズしにくい」「同一業務のボリュームがないと効果が限定的になる」「運用スタッフが必要」「Windowsアップデートの影響を受けるケースがあるなど、トラブルの発生を考慮すると思い切った人員削減を実施するのは難しい」。
これらに対して、運用サポートやアドバイスサービス、安価で使えるクラウド型RPAなど、中小企業が導入しやすいサービスが続々とリリースされています。
既に利用している企業においては、AIとRPAを連携させることによって、対応可能な業務の幅を広げる試みが進められています。
「AIやRPAが浸透すると、仕事がなくなるオフィスワーカーが激増する」などといった声もありましたが、AIもRPAも業務フローや運用フローを設計する担当者が必要です。
事務スタッフが減少した後の企業では、自動化ツールの運用担当をはじめ、営業、販売、コンサルティングなど、人間力が求められる業務に人員シフトが進められていくのでしょう。
ひとり1台、PCが与えられるのがアタリマエであるように、「RPAを入れていない会社があるなんて、信じられない!」といわれる時代はすぐそこまで来ているようです。技術革新と広がりのスピードは、数年前と比べると格段に速くなっていると実感させられますね。