「フィジタルなエクスペリエンスを通じて…」。初対面の人にいわれたら、ちょっと引いてしまいそうな言い回しですが、近年さまざまな記事で目にする「フィジタル」を紐解くシリーズの第2回です。
「モノとデジタルの融合」「リアルとデジタルのコラボレーション」などと説明すると、「O2O(オンライン・トゥ・オフライン)」「IoT(Internet of Things=モノのインターネット)」といった概念との違いがわからなくなります。
今回は、それぞれの概念とフィジタルとの違いを解説し、新しいマーケティング手法のあり方に迫ってみたいと思います。
「O2O」は、Webサイトやアプリなどオンラインのコンテンツから、店舗やイベント会場などのオフラインの場へ顧客を誘導するアプローチを指します。
グルメサイトや旅行サイトによる予約サービスやクーポン提供もO2Oのひとつで、逆パターンではリアル店舗でWeb会員を募集して、メルマガ等でニュースを受け取ってもらうといった施策もあります。
概念自体は古くからあったものなのですが、ひと頃これが話題になったのは、スマートフォンの普及に伴うSNSやアプリの利用増加によって、誘導方法が格段に増えたからでしょう。
一方、フィジタルのほうは、「リアルなモノ・体験」とデジタル技術を組み合わせるところに本質があり、O2Oの進化版といってもいいかもしれません。
「VRを使った疑似体験による店舗来訪促進」「店舗に置かれたグッズにサイトの売れ筋ランキングを表示」など、モノや行動とデジタルコンテンツが一体となった施策によって、ユーザーを購買に誘導する手法は、まさにIoTやAR/VR、AIなどの発展によってもたらされたものです。
IoTは、モノとインターネットを組み合わせた商品・サービスの総称で、フィジタルはIoTを含むさまざまな「リアル×デジタル」でユーザーを動かすマーケティング手法と整理すると、わかりやすいのではないでしょうか。
さまざまな用語の概念は、きれいに分かれるものでもなく、「フィジタル=O2O」「フィジタル=IoT」となる施策もあると思われます。
重要なのは、言葉をきちんと定義することよりも、「それぞれのIT系用語が流行った背景にどんな技術があり、何を実現できるようになったのか」でしょう。
そこを押さえられれば、サービスやマーケティング、消費行動のトレンドを把握できるようになります。
次回、フィジタルシリーズの最終回は、フィジタルマーケティングといわれている実際の事例を紹介いたします。
ひとりの消費者としてワクワクするさまざまな施策をお届けできればと考えておりますので、マーケティングに興味がある方はぜひ目を通してください。