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現場の取り組み

情シス野郎チラシの裏【45】 野球とビッグデータ

現場の取り組み

【情シス野郎 チラシの裏】は、「情報処理安全確保支援士」資格を持つ情シス担当が、仕事を通して得た知識や技術を、技術面に詳しくない人でも読みやすいよう「チラシの裏」に書くかのごとく書き散らす!というシリーズです。

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野球ファンの間では常識となった「トラックマン」という機器がある。

デンマークのその名もTRACKMAN社が開発した、ゴルフのプロツアーの公式計測器としても使用されている弾道計測用の機器であり、野球においては投球の初速、回転数や回転軸、リリースポイントなど、打球についても速度や角度など、「ボールに関するデータ」を正確に取得できる。

それとは別に超高性能カメラで「選手の動作データ」を取得、測定する「トラキャブ」というシステムがあり、これは野手の守備位置や打球への反応、走者の速度などのデータを取得できる。

現在のMLB(メジャーリーグ)ではこの「トラックマン」と「トラキャブ」を統合した「スタットキャスト」というシステムが全球団に導入されており、利活用が進んでいる。

例えばMLBやチームの公式サイトでは取得された情報が一般向けに公開されている。そのため熱心なファンは推しチームの全選手の数値を記憶することに勤しむことができ、テレビ中継でもリプレイ映像に測定結果を合成されるなど、サービスとしてファンに提供されている。

もっとも、「スタットキャスト」がこれだけ脚光を浴び、MLBで常識となった最大の理由は、2010年台前半から中盤にかけてスタットキャストのデータを溜め込んで「ビッグデータ」として選手たちのプレー改善や向上に活用した複数の弱小球団が大躍進したことだろう。

例えば選手の育成について言えば、これまで現場の監督・コーチ・ベテランが自らの眼力や経験則から導出した「意見」を選手に伝え、各個人が取り入れるかを判断し、手探りで能力強化を図って来た図式がある。

これがビッグデータによって、スイングの軌道をこうすることでヒットになる率が上がる、スイングスピードを5km/h上げれば長打率が.100上がる、など根拠のある情報として提供される図式に変わることで、選手も素直に受け入れられるだろうし、トレーニングの時間対効果も向上するだろう。

翻って、日本のプロ野球(NPB)においても、この5年ほどで12球団のうち11球団がトラックマンを導入している。

昨年の日本シリーズでソフトバンクホークスがジャイアンツを二年連続スイープ(4戦全勝)し、圧倒的な力を見せつけたのは記憶に新しい。

両チームの力の差は素人目にも明らかであり、その原因をパリーグとセリーグの全体的な力量差、意識の差、という専門家が多かった。

おれも30年以上プロ野球(主にパリーグ)を見続けてきた人間として全く異論はないが、一つ気になったのは負けたジャイアンツの複数の選手が言っていた「ソフトバンクの選手はみんなデカい」という言葉である。

デカいというのはいわゆる横にデカい、の意味である。筋肉量の差ということだが、だったらジャイアンツの選手も筋トレすればいいだけの話である。

しかし日本球界では太古の昔より筋トレは邪悪なものであるとされてきた(大げさ)。無駄な筋肉は動きのしなやかさを阻害する、等々の理由である。

昨年MLB(ナ・リーグ)でサイヤング賞の最終選考(3人)にまで残ったダルビッシュ選手。彼はTwitter上でよく日本球界のそういった練習方法に疑問を投げかける投稿をし続けている。

MLBがNPBより上、とは一概に言えないと思うが、少なくとも両リーグを経験し、過去にMLBに移籍したどの日本人選手よりも日本球界のことを気にかけている彼の言葉には含蓄がある。

日本のIT覇者であるソフトバンクが、ビッグデータを武器に、時代遅れの日本球界をぶち壊した結果が、この2年の日本シリーズ、という可能性はないだろうか?

要は、無駄な筋肉を付けることなく各選手に必要な筋肉を明示し、この「筋トレは邪悪であり、走り込みや投げ込みこそが至高の肉体作りである」という日本球界の信仰をぶち壊した結果が、この2年の日本シリーズ、という可能性はないだろうか?

IT(ビッグデータ)が余分な筋肉を付けることなく各選手に必要な筋肉を明示し、そのために必要なトレーニング方法を導き出した、その結果の「デカい」であったとしたら?

体格一つだけでそれだけの差があったとして、戦略や戦術、選手の意識までビッグデータによって同等の差が生まれているとしたら、勝ち目などあろうはずもないのである。

野球だけでなく、世の中の全ての事象の改善や解決に「ビッグデータ」は有用なはずである。膨大な事実を分析した結果、最も望ましい結果を得るために必要なことを示してくれるのだから。

利活用に必要な人手と費用さえクリアされれば、、、というのがNPB各球団だけでなく、世界中の企業の悩みどころなのだろう。

人間の人生の岐路についても「今この時どうすればどうなるか」をスマホでビッグデータが教えてくれる時代が来るのかもしれないが、それはなんだか味気ないね、とも感じるのである。

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