昨年から一気に加速した、業界ごとのデジタルトランスフォーメーション(DX)。今後はDX推進に成功するか否かが、企業の成長や競争力の強化に大きく影響するでしょう。
そこで今回は、【前編】【後編】の2回にわたり、20社のDX推進事例を紹介。成功した企業の取り組みを概観していきます。
最初に紹介するのは、成長領域・得意分野にフォーカスした企業です。
総合エンジニアリング企業の株式会社ミライト・ホールディングスがDXを推進するのは、「IoT・5G・ICT」「スマート土木」「再生エネルギー」「グローバルエンジニアリング」の4つの領域。
社会インフラの建設・運用作業の効率化とコスト削減を実現することで、2022年度の「DX注目企業」に選定されています。
株式会社ブリヂストンは、得意分野であるタイヤ製造の「技能伝承システム」を開発しました。過酷な使用環境への対応に高度な技術が必要とされる専用タイヤの作業ステップを計測・評価することで、技能員の技術を標準化。生産性の向上や高品質な商品の安定的な供給が可能になっています。
「Try IT」は、教育事業を手掛けるトライグループが提供する映像授業サービスです。スマホ・タブレットに対応することで、学生間の学習環境の差をクリア。また学習進度の可視化、授業のキーワード検索、テキストを見ながらの視聴といった多彩な機能により、利用者数は100万人を突破しています。
衛生用品の大手メーカーのユニ・チャームが開発したのは、保育園の紙おむつの在庫データを管理して、残り枚数に応じて自動発注するサブスクリプションモデル「手ぶら登園」です。保育士の業務量削減への貢献から、2022年2月時点で1700園以上の保育施設に導入されています。
食品メーカーの味の素株式会社は、食・健康分野の課題解決を目指してDXを活用。栄養プロファイリングシステムや、AI技術を活用した自動献立提案システムを開発しました。
上記の事例のように、自社の強みをデジタル技術といかに融合していくかが、DXを成功させるポイントのひとつといえるでしょう。
一方、鋳造技術に強みをもつ木村鋳造所は、鋳物の試作開発や生産終了した補給パーツ製造のプロセスに3Dプリンターを活用。超短期での納品を可能にしました。
こういった製造プロセスのデジタル化も、コスト削減や生産性向上などの大きなメリットをもたらします。
食品メーカーの江崎グリコ株式会社がデジタル化したのは、BtoBビジネスの営業プロセスです。マーケティングオートメーションの導入により、顧客情報が可視化されたことで、法人向け備蓄食料サービスの問い合わせ後の受注率が100%になるなど、課題だった商談化率の向上に成功しています。
デジタルマーケティングを得意とする株式会社キュービックのように、ポータルサイトを導入することで労務業務をデジタル化したケースもあります。入社手続きなどの業務が効率化されたうえに、セキュリティが強化され安全かつ便利にデータ管理が行えるようになりました。
「デジタル技術活用によるビジネス変革の推進」を主要施策に掲げる金融・サービス企業の東京センチュリー株式会社は、レガシーシステムの根本的な見直しや、ビジネスプロセスの革新により既存ビジネスを変革。企業価値向上と競争力の強化を推進中です。
株式会社トプコンは、DXソリューションの活用により農業・建設工事を工場化しました。営農サイクルの管理と建設工事のワークフローが一元化されたことで、生産性と品質の向上を実現しています。
このようなデジタル化・一元化・サイクル化も、業務のスピードと質を同時に高めたり、従業員の負担を軽減したりと幅広い効果が期待できるDXの推進例です。
【後編】では、残る10社の事例と成功のポイントを紹介していきます。「自社のDXをどのように進めていけばよいかわからない」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。