未来予測が難しいVUCA時代に求められる人材について、知識・スキル・人間力を軸に紹介。【後編】では、組織のリーダーに必要な「人間力」について深掘りします。変化の目まぐるしいIT業界で、今後求められる人物像についても解説。ぜひご一読ください。
最初に紹介するのは、今後ますます重要性が高まる「人間力」について。【前編】でも解説したように、VUCA時代のリーダーには状況に応じて組織の方向性を変えていく柔軟性が求められます。
しかし柔軟性は、従業員をはじめとするステークホルダーの理解を得られず、不信感につながるリスクもあります。ネガティブな関係性に陥るリスクを回避するためには、考え方の異なる人々の共感を得るプロセスが重要です。
そうなると、リーダーには、企業やプロジェクトがもつ普遍的なミッション・ビジョン・バリューや、方向転換が必要な理由を明確かつ簡潔に示す「言語化能力」が求められます。同時に、ステークホルダーとの信頼関係性を築く「コミュニケーション能力」も必要でしょう。
近年は、生産性を高めるために、プロジェクトごとに人材を配置する「ジョブ型雇用」を採用する企業が増加。ジョブ型雇用は成果主義の雇用形態であり、従業員一人ひとりが担う責任が大きくなるという特徴があります。
つまり、力のあるリーダーがトップダウンで牽引する組織のあり方は、通用しなくなっているのです。
これからのリーダーには、メンバー全員が状況に合わせた判断を行えるように裁量をゆだねつつ、成長を促していく姿勢が不可欠といえるでしょう。
加えて、価値観の流動性が高いVUCA時代は、「多様性」も重要なキーワード。複雑な問題を解決するために、個々の従業員がもつさまざまな強み・価値観・能力を尊重し、多様性のある組織作りに取り組むリーダーが必要とされています。
さまざまな業界のなかでも、変化が多いIT業界は、これまでに紹介してきたような要素がとくに求められる分野です。
クラウド、AI、機械学習、IoT、5G、XR、ブロックチェーン、量子コンピュータなど、さまざまなテクノロジーが急速に発展しており、日常的かつ体系的な情報収集は必須です。
役割やミッションも、携わるプロジェクトとその状況に応じて変化していくケースが多く、幅広い知識・技術を吸収しなければなりません。専門的な知識・技術を第三者にわかりやすく伝える能力も必要でしょう。
とくにプロジェクトマネージャーやリーダーは、クライアントとの対話を通して企画・設計・要件定義を行ったうえで、実現すべき内容をチームメンバーに共有する役割を担います。プロジェクトを通してメンバーを育成する必要が生じる機会も多く、コミュニケーション能力やマネジメント力を求められます。
ここまで読んで、「そんな完璧な人間にはなれない…」と、胃が痛くなった方も多いかもしれません。たしかに、幅広い知識・スキルと高い人間力は簡単に得られるものではありません。
そこで、もうひとつ付け加えたいのが「寛容力」です。
将来を予測しにくいVUCA時代は、意思決定をするための要素が多岐にわたり、思い通りにプロジェクトを進められないケースが増えそうです。小さな失敗や挫折を繰り返しながら軌道修正を続け、少しずつ成功に近づいていく必要があります。
こういったプロセスを円滑に進めるためには、自分自身やメンバーの失敗・不足に対しても、寛容な心で受けとめ、次に活かすポジティブな姿勢が求められるのです。
リーダーの寛容力は、チームメンバーの失敗を恐れないチャレンジ精神にもつながるでしょう。また前述した「多様性のある組織づくり」とも深く結びつきます。
もしかすると、VUCA時代を乗り切るために最も重要な心構えは、「自分ができないこと、自分と異なる考え方をリスペクトし、活かし切ること」なのかもしれません。結構、難易度高いですよね…!