ICTコンサルティング企業のガートナーが、10月に開催された『Gartner Symposium/ITxpo 2018』にて、2019年以降にIT業界やユーザーに影響を及ぼす重要なキーポイントを発表しました。
戦略的展望トップ10を見ると、最初の3項目はAIに関する展望です。「ホントですか!?」と叫んでしまいそうになる予測もありますが、まずは3つまとめてご覧ください。
「AI関連プロジェクトの80%は、2020年末までは一部のレアスキルを持つ専門家による“魔法”であり続ける」
「AIの“顔認識機能”により、成熟市場の行方不明者は2023年までに80%減少する」
「慢性疾患患者がAI搭載のバーチャル・ケアに登録するようになり、アメリカ国内の救急診療は2023年までに2000万件減少する」
2018年になって、AIを活用したサービスが急増しているのを実感している方が多いのではないでしょうか。
ガートナーは、AIプロジェクトが世界規模で増えているのに対して、専門家の増員が間に合わないと指摘しています。ここでいう専門人材は、AIの技術者だけでなく、データを使いこなすサイエンティストやエンジニア、業務を設計するオペレーターや物流担当者を含んでいます。
画期的なサービスを生み出したいエンジニアやマーケッターにとっては、人材が不足している今こそがチャンス。AI関連の技術や運用ノウハウをマスターすれば、特定の業界を丸ごと変えてしまうようなビジネスの創出に携われるかもしれません。
顔認識システムが注目されているのは、子どもや高齢者、障がい者など弱い立場にいる人たちの情報を得る手段として効果的だからだそうです。顔認識による情報収集が社会に受け入れられるようになり、画像データベースや分析システムが確立すれば、困っている人たちに対するサービス提供が容易になります。
バーチャル・ケアというのは、医者と直接会って行わなくてもいい治療を受ける仕組みです。高齢化が進むにつれて、臨床医の不足が問題になっていますが、バーチャル・ケアが浸透すれば低コスト・高効果のサービスによって体の問題を解決できるようになるというわけです。
ひと頃は、「AI活用が当たり前になると、仕事がなくなる人が増える」などといわれておりましたが、ガートナーのレポートを読むと、「AIが浸透すると、サービスのバリエーションが増えて社会が豊かになる」「AIは、人材不足を解決する手段になり得る」といった明るい見通しのほうが妥当なのではないかと感じます。
次回の【後編】は、「ネットいじめ」「セキュリティ」「個人情報やプライバシー管理」などの身近な問題の変化について、ガートナーの見立てを紹介します。