「なぜ、eスポーツ!?」。ソルクシーズグループを知る人は、新しい子会社の事業について聞いたら、驚くのではないでしょうか。eスポーツといわれても、ピンとこない人もいるでしょう。エレクトロニック・スポーツの略で、ビデオゲームで技術を駆使して勝負を争う競技です。
ソルクシーズの主要事業は、銀行・証券・保険・信販など金融業界や通信業界向けのシステムインテグレーション、IoTやクラウドを活用したサブスク型サービス、汎用開発パッケージ・ツール、ソフトウェア開発のコンサルティングです。eスポーツとのシナジーを想起するビジネスはありません。
ましてや新子会社の「eek(イーク)」が手がけるのは、eスポーツで活躍するアスリートたちのエージェンシー業務や人材育成のサポート、新規参入のコンサルティングなど、いわゆるHR(ヒューマン・リソース)といわれる領域です。なぜ、ソルクシーズが…という話をする前に、eスポーツ事業のマーケットについて、簡単に説明しておきましょう。
ゲームというと、スマホやゲーム機で遊ぶものというイメージが強いのですが、eスポーツは競技として認められており、海外には賞金1億円の大会で優勝をめざすプロが存在します。
有名なゲームは、バトルロイヤルで生き残りをめざすシューティングゲーム「プレイヤーアンノウンズバトルグラウンド」「フォートナイト」や、5対5のチーム戦で相手の陣地を攻め落とせば勝利となる「リーグ・オブ・レジェンド」など。世界じゅうで1億人を超えるアスリートがいるなかで、日本の競技人口は約390万人。野球やサッカーの半分です。
JeSU(日本eスポーツ連合)のプロライセンスを取得しているプレイヤーは、2022年現在269人。2000年から盛り上がっていた海外に対して、4年前から観戦するファンが増え始めた日本は後発国なのです。
話をソルクシーズに戻しましょう。7月に設立されたばかりの会社の立ち上げストーリーは、2022年1月1日に始まりました。2018年からeスポーツ関連の企業を経営していた山上社長と、ソルクシーズのAさんが初めてコンタクトを取った日です。
「会社を売却することになり、新しい事業を始めたいと考えていたところでした。これまでは、カフェにeスポーツ用のパソコンを設置して楽しんでもらうサービスを運営していたのですが、eスポーツに関わる人にフォーカスした事業を立ち上げたかったんです。一緒にやれるパートナーを求めて事業計画を公開していたら、声をかけてくれたのがAさんでした」(山上社長)
「実は以前から、eスポーツに注目していました。何らかの形で参入したかったのですが、きっかけがなく、どうしようか考えていたときに山上社長と出会ったんです」(Aさん)
やりとりをした後、すぐにソルクシーズについて調べた山上社長は、ひと目惚れだったといいます。「長尾社長の言葉に感銘を受け、この会社と一緒にやりたいと思いました」。山上社長の人柄と、それまでの取り組みに触れたAさんは、「子会社として独立して事業を展開したほうが、山上さんらしさが出せる」と感じたそうです。
事業計画を練り上げ、長尾社長(ソルクシーズ)と山上社長(eek)が初めて会ったのは5月。「そこから子会社設立が決まるまでは、とにかく早かったですね」(山上社長)。4人が名を連ねた会社は、eスポーツに関わる人を支えたいという思いを抱いてスタートを切りました。
【後編】では、新会社「eek」とソルクシーズが実現させたい世界について紹介します。新たなビジネス展開に興味がある方は、ぜひご一読ください。