無線LAN、いわゆるWi-Fiである。
自宅でWi-Fi環境を構築してタブレットやスマホ、ノートPCなどを接続している人も今や全く珍しくない。
有線LANと比較してどんな【メリット】があるかというと、
1)配線が不要で、見た目もスッキリ
2)電波の届く範囲なら使用場所を選ばない
の2点である。
逆に無線ならではの【デメリット】もある。
3)対応していないPC(主にデスクトップ)は無線を受信するための子機を用意する必要がある
4)盗聴や不正利用の対策が必要
5)速度や高度な安定性が求められる通信にはやや不向き
6)Wi-Fiルータの通信方式に使用端末が対応している必要がある
上記を見るとデメリットの方が多く、導入する必要あるの?と思うかも知れないが、
「5)速度や高度な安定性」以外のデメリットについては注意して設定・運用をすれば何も問題ない。
5)についてはある程度諦め、速度や安定性が求められる業務を行う端末には有線を利用すれば良い。
何より、「1)配線が不要」「2)使用者が場所を選ばない」というのは、「自分の席で仕事をする」という仕事の仕方を根本的に改善することにも繋がる。
例えば、
タブレット片手にミーティングに赴き、配線など気にすることなく即座に議題に入れる。
手元の仕事を片付けるために、声をかけられづらい目立たない場所で集中することが出来る。
時には社内のカフェテリア的な場所で、上司の視線を気にすることなくリラックスして仕事することも可能だ。
自由な社風を標榜する企業や、社員の働きやすさを追求する企業にとって、これ以上ない導入理由になることだろう。
そういった大きなメリットはあるのだが、前述の通り、Wi-Fiルータを安全に運用するためには最低でも2つの設定が必須となる。
一つ目は【暗号化】である。
Wi-Fiルータは無線通信を実現する機器であり、無線通信とは通信内容が宙を舞うということである。
有線の場合にはケーブルの接続先にしか通信内容は伝送されないが、無線通信は範囲内にいれば通信内容を傍受することが可能となる。
実際に無線通信を傍受するツールはいくらでも存在する。
傍受されることを防ぐ手立ては存在しないが、傍受された通信内容を第三者に解読されないようにする方法はたくさんある。これを暗号化という。
暗号化の方式には種類があるが、現在販売されているWi-Fiルータであれば、まず間違いなく全てWPA2という暗号化方式に対応されている。これを使用しておけば2015年現在では問題はない。
二つ目は【認証】である。
Wi-Fiルータの無線接続を誰でも使えるという状況は、有線LANに例えると、誰でも事務所に入り込んでLANケーブルを繋げられてしまう、ということに等しい。
有線であれば事務所に入れないようにしてしまえばいいのだが、無線であるが故に事務所外に電波はどうしても漏れてしまう。
そのため、Wi-Fiルータに接続出来る利用者や機器を限定する必要がある。これを認証という。
認証方式も色々とあるが、暗号化方式がWPA2である前提であれば、自宅利用であればPSK、企業利用であればEAPを用いるのが良いだろう。PSKは認証サーバ不要だが、EAPは認証サーバが別途必要となる。
なお2015年現在、量販店などで購入出来る比較的安価なWi-Fiルータは、ほぼ全てPSK認証に対応されているが、EAP認証についてはある程度高価な機種のみが対応しているといった状況である。
最後に一点、おれが経験したWi-Fiルータを使用する場合に時々ある、単純なトラブルを紹介する。
Wi-Fiルータには通常、LANポートが複数用意されており、
・インターネット向け(外向け)のケーブルを差すLANポート
・有線ルータとして使用する場合などに、内向けのケーブルを差すLANポート
の2種類がある。
例えばLANにWi-Fiルータを接続してそこから先を無線にする場合、外向けとなる社内LANケーブルを差すLANポートを間違えると、見事に周囲のPCが次から次にネットワークから切断されていくことになる。
Wi-Fiルータの持つDHCPという機能が悪さをしているのだが、その結果、
・後輩が何時間もかけて行っていたデータコピーが中止され、
・上司が何十分もかけてシステムに入力した受注データが一瞬で吹っ飛び、
・部長が必死に事前調査していた明日行くゴルフ場のページが切断されてしまう、
という悲劇を生むことになる。