【情シス野郎 チラシの裏】は、「情報処理安全確保支援士」資格を持つ情シス担当が、仕事を通して得た知識や技術を、技術面に詳しくない人でも読みやすいよう「チラシの裏」に書くかのごとく書き散らす!というシリーズです。
******
先日、ドラゴンクエスト3(以下DQ3)のリメイク版が発売された。
昔話となるが、おれが小学校2年生の時、普段は怖い親父が近所のおもちゃ屋さんに連れて行ってくれて、事前予約してくれていた初代DQ3をまだ寒い時期の早朝に何十人と並んで手に入れた記憶がうっすらとある。
当時のゲームソフトはカセットと呼ばれており、プラスチック製の箱にROMと呼ばれる緑色の基盤が内蔵され、それをゲーム機本体に差し込むことでプレイ出来るものだった。
当時のおれ少年は、買うために何万人も並んでいたこのゲームソフトを、カミナリ親父(死語)が特に予告するでもなく予約して朝早くから一緒におもちゃ屋に並んでくれたという、未曽有の幸せが詰まった一本のカセットを握りしめて帰宅した。
そしてそれからもその辺に裸で放り出された他のカセットとは扱いが異なり、毎日大事に箱に入れて片づけ、寝る前などは紙製の取扱説明書を擦り切れるほど毎晩読んでいた。
おれにとって、今はすっかり丸くなったカミナリ親父との思い出が詰まったゲームがDQ3である。
さて話を戻し、そんなDQ3が初代の発売から36年が経ち、現在の主流家庭用ゲーム機であるPS4やSwitch、Xboxに加え、PC版(Steam:PCゲーム配信プラットフォーム)の4機種でリメイクされ発売された。
思い出の追体験目的でおれはSteamで購入したのだが、上の息子(小3)が「おれもやりたい」というので、親父との36年前を思い出しながら近所のゲームショップに息子を連れて買いに行った。
Switch用のパッケージ版を所望していたのだが、売っていたのはダウンロードカード(本体をインターネットからダウンロードするためのコードが書かれた紙製のカード)のみ。パッケージ版は品切れである。
パッケージ版は原価が高いせいで値引きしたらほとんど利益が出ないらしく、実際の利益は中古品とダウンロードカードが中心らしい。
どれだけ入荷したかは定かではないが、新品はダウンロードが主流になりつつあるのだろう。
なんだかな、と首をかしげながら、仕方なくダウンロードカードを買って帰り無事プレイさせることが出来た。
いわゆるROMなどの物理媒体に保存されたデータを買う方式から、データそのものをダウンロードやストリーミングで入手する方式に切り替わっているのはゲームだけではない。
本や雑誌は電子書籍アプリでダウンロードする形に代わりつつあり、音楽はほとんどⅭⅮからiTunesなどのプラットフォームからのダウンロード方式に代わってしまった。
映画などもビデオテープからDVDやブルーレイに移行した後、今ではやはりストリーミングが主流である。
その結果、街の小さな本屋やⅭⅮショップやレンタルビデオ店は、街から姿を消してしまった。
大型店か、百貨店やショッピングモール内に一部残っているのみ・・・という印象である。
ゲームも音楽もデータであるため、わざわざ媒体に焼かずとも、高度な情報化社会においては音楽なら数秒、ゲームでも数十分、インターネット経由で提供することが可能であり、タイパ/コスパに利便性を強く求める現代のユーザニーズからしても当然の成り行きのように思う。
ビジネスにおいても以前はROM媒体で納品されていたアプリケーションは当然のようにダウンロード方式に代わったし、契約書類も電子帳簿保存法改正によりPDF等のデータでやり取りするために必要な要件が大きく緩和されたことで一般化しつつある。
以前はサーバハードウェアを保有し、データ保管やアプリケーションを稼働させていたが、クラウド環境の共通仮想化基盤で稼働させるようになったことも、広義では同じ流れに感じる。
しかし、音楽や映画のジャケット写真、本の背表紙やコーヒーのしみ、ゲームソフトの取説など、記憶や思い出に残る要素が削られてデータだけ入手するというのも、盛り付けのない料理のようで少し味気ない。
息子は5歳時にDQ11の3つのプレイデータのキャラ全てをLV99にカンストさせた謎の猛者だが、DQ3はお気に召さなかったらしく、LV15ぐらいまでプレイしたものの、ピラミッドで全滅して止まっているようである。
もしカセットという目に見える形で手に入れていたら、もう少し我慢強くプレイしていたのかもしれない。