さて、前回はフリーアドレス・無線LANの素晴らしい効果のほどをお伝えしたわけだが、すぐには効果が見られなかった仕組み、未だ運用に苦労している仕組みも存在する。
【ハイテーブル席】
外回りから帰って来た営業系の社員がパパっとPCを開くためや、立っていたいという健康志向の強い人にはおススメなのだが、長時間の着席には向かない(腰が痛くなる)ためか、積極的に選ぶ人がおらず空席率が高めだった。
ただ最近は、席や姿勢を変えることのメリットを感じられた人が増えて来たのか、徐々に利用者が増えている。
【ロングソファー席】
なんとなくさぼっているように見えてしまうのを恐れたためか、最初は積極的に使用する人が全くいなかった。しかしハイテーブル席と同様、徐々に利用者は増えて来ている。
【そもそもフリーアドレスだったのに座席固定化】
定例の会議などで全員がなんとなく前回と同じ席に座り、毎回同じ景色、ということに気付くことがあるだろう。それのフリーアドレス・バージョンである。
景色を変えて発想を変える、コミュニケーションの創出、などのフリーアドレスのメリットが完全に失われている状況であり、これに頭を悩ませる企業が多いという話を移転プロジェクトの中で聞いた。
グループアドレス運用でも、その中でくるくる席を変えていけば効果はあると思うのだが、一人(例えば部長)がなんとなく同じ席に座ると、流れで後続がそうなってしまう、のは分かる気がする。
体験してみて初めてわかることもあるので、試してメリットを感じてくれれば、とは思うのだが、個人差があるばかりになかなか難しい問題である。
【フリーアドレス化に伴う電話の取次ぎ】
誰がどこにいるかが分からない、という話である。
当社の場合には出社したら座席登録するSaaSのサービスを利用しているが、毎回その画面を開いて探すのは、はっきり言って手間である。
幸い当社オフィスは望遠鏡が必要なほど広くはないため、ある程度キョロキョロすれば分かるのだが、やはり固定席とは勝手が違うシーンは多い。
ベストは社給携帯を配布して内線にも対応させることだが、コストとの兼ね合いで難しい場合には、社員のプレゼンス(居場所や予定)を把握させる仕組みをよく検討する必要がある。
と、ここまで読むと分かる通り、これまでに無かった珍しい席が敬遠される、昨日と同じ席につい座ってしまう、など、人はついなんとなく同じ環境に身を置こうとすることがよく分かった。
どうしても使わざるを得ない無線LANやノートPCにはすぐに慣れてもらえたあたり、一度始めてしまえばすぐに慣れることは分かっているので、徐々に経験者が良さを広めることで、新しい仕組みが浸透することを期待している。
今回の移転を通して強く感じたことは、これまでのやり方にとらわれず、新しい仕組みを積極的に取り入れることの大切さである。
周りが新しい事を始めていく中で足踏みしていると、相対的に取り残されてしまう。よって常に新しいことに取り組み、前に進むことを意識しないと脱落してしまう。
まして人材難、売り手市場の現代ジャパンにおいて、働き方改革という子供でも知っているビッグウェーブに抵抗すれば波に飲まれて沈みかねない。
少なくとも本社オフィスの働き方を体験した新入社員が、大学の友人たちと飲んだ時に自慢できるようなオフィスにしていきたい、と思う次第である。