コロナ禍以降、浸透のスピードが停滞した技術もあるなか、AIは現在進行系で目覚ましい進化を遂げています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進して企業の競争力を高めていくためには、いまやこのAIを駆使したデータ活用が欠かせません。顧客・市場・自社に関する膨大なデータをAIに迅速かつ精密に処理させることで、時代の急速な変化への対応が可能になります。
ビジネスにAIを導入するために確保したいのが「AI人材」。技術開発、産業・ビジネスへの応用、現場での活用など、AIに関する深い知識とスキルを持つエキスパートです。
しかし現在は、国内にAI人材を体系立てて育成する制度や仕組みがありません。IT人材+αの専門性が求められることもあり、人材不足が深刻化しています。2030年までに約79万人のIT人材が不足するという経済産業省の予測もあり、ほとんどの企業は「AI人材を確保したくてもできない」というのが現状でしょう。
このような課題を乗り越えるためには、AI人材に求められる知識・スキル・適性を把握したうえで、人材の雇用はもちろん、育成にも注力することが必要となります。
AI人材として求められているのは、次の5種類の人材です。
●AIの研究者
●データサイエンティスト
●AI系エンジニア
●ビジネスコンサルタント
●プロジェクトマネージャー
役割ごとに求められるスキル・知識は異なります。
まず「AIの研究者」はAI実現のための数理モデルを研究するエキスパートです。AIに関する学術的・専門的な知見を備え、調査・開発に取り組むことでAI技術そのものの進歩をめざします。
想定されるのは、学生時代からAIを専門的に学び、体系的な知識を習得している人材。学術論文の執筆・発表の経験があったり、発表されている学術論文に日常的に目を通していたりするような専門家です。
とはいえ現実的に、自社にAIの研究者を抱え、独自のアルゴリズムを開発できるのは一部の大企業に限られます。多くの企業がDX推進のために早急に確保しなければならないのは、既存のAI技術を実際のビジネスに結びつける実践的な人材でしょう。
「データサイエンティスト」は、自社で収集した膨大なデータを適切に整理・取捨選択・分析したうえで、ビジネスに活用していくデータ分析のスペシャリスト。
AIがビッグデータを処理しやすいように、データクレンジングや前処理を行うのも重要な仕事といえます。企業に優秀なデータサイエンティストがいないと、どれだけデータを保持していても有効に活用できず、宝の持ち腐れとなってしまうでしょう。
データサイエンティストには、ビッグデータを扱うスキルのほかに、数学・統計学の知識が欠かせません。加えて自社の経営課題や経済情勢の把握など、幅広い知見が求められます。
【後編】では、「AI系エンジニア」「ビジネスコンサルタント」「プロジェクトマネージャー」について、求められるスキル・知識や人物像を引き続き紹介します。ぜひ併せてチェックしてみてください。