IT関連のリサーチやアドバイザリー企業のガートナーが選ぶ「2020年以降に向けた重要な戦略的展望」が発表されました。
毎年11月にリリースされる10大トレンドを覗いてみると、今後3年はAIに関する技術やサービスが急速に進化を遂げる見通しであることがわかります。
まずはAIに関する3つの未来予測から紹介しましょう。
●「2023年までに、障害のある従業員を雇用する機会は、AIや最新テクノロジーによって3倍に増加し、就業への障壁が低くなる」
●「2023年までに、G7のうち4カ国以上では、AIおよび機械学習の設計者を監督するための自主規制団体が設立される」
●「2024年までに、AIによる感情の識別が、表示されるオンライン広告の半分以上に影響を及ぼす」
いずれも、感覚的に理解できるお話ですね。身体に障がいがある方が、接客や事務作業に携わるロボットをリモートで活用するなど、AI、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)の発展によって業務上のハードルは格段に低くなります。
便利になる一方で、AIの浸透に伴い、システムの不具合・トラブルが増えているという現状があり、飛行機や自動運転車などの事故に対する法的責任が話題になっています。
開発・運用のためのトレーニング、プロセスの定型化・文書化、認定スタッフ制度などが導入される可能性があり、活用する企業のリスクマネジメントがより重要になりそうです。
マーケティングの領域では、人工感情知能 (Artificial Emotional Intelligence: AEI)が注目されています。購入促進のために、閲覧者の感情を検知したい企業が、AIと機械学習(ML)を活用したオンライン広告システムの開発に着手しているとのこと。
ユーザーがモノを買う瞬間に、どんな気持ちになっているかがわかれば、パーソナライズされた共感型マーケティングがWebサービスの主流になっていくものと思われます。
これらに関連して、ガートナーは次のような怖ろしい未来も予想しています。英語の直訳っぽいキーワードが並んでいてわかりにくい予想文を、「菜緒さん」なりにわかりやすく言い換えて説明してみたいと思います。
●「2023年までに、個人の活動は『挙動のインターネット』を通じてデジタルに追跡され、全世界人口の40%のメリットやサービスの資格に影響を及ぼす」
「挙動のインターネット(Internet of Behavior: IoB)」とは、顔認証システムやGPS情報、ビッグデータなどを駆使して個人の行動をモニタリングし、さまざまなサービスにつなげる仕組みを指します。
IoTが「モノとインターネットの連携」だったのに対して、IoBは「ヒトの挙動をインターネットが取り込んでサービスにつなぐ仕組み」です。
多くのサービスにおいて、プライバシーと快適さのせめぎ合いが起こるかもしれません。
●「2024年までに、数百万人がデジタル・コマースを濫用し、金銭的なストレスに直面することから、世界保健機関 (WHO) は過剰なオンライン・ショッピングを依存症と認定する」
「オンライン・ショッピング依存症」とは物騒な話ですが、広告の仕組みやIoBによるニーズに合ったサービス提供が進化すれば、「ついつい買っちゃう」が増えるということなのでしょう。
ショッピング依存症が増えれば、積もる負債や自己破産がトリガーとなるストレス性の健康不安の増加や、仕事に手がつかなくなる社員による生産性の低下リスクが問題視されることになるようです。
このテーマについては、既にWHOが注目しており、現在のタバコのように「ショッピングにおける健康被害に関する警告文」の掲載を求める可能性があるそうです。いやー、便利な買い物にも落とし穴が?!
「2020年のITトレンド10大予想!」の後編は、ビジネスに関するテクノロジーの進化にまつわるトレンドを紹介します。