【情シス野郎 チラシの裏】は、「情報処理安全確保支援士」資格を持つ情シス担当が、仕事を通して得た知識や技術を、技術面に詳しくない人でも読みやすいよう「チラシの裏」に書くかのごとく書き散らす!というシリーズです。
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劇場版「鬼滅の刃」無限列車編が国内映画の興行収入記録を塗り替えようとしている。
歴代1位の千と千尋の神隠しが308億円、11月20日現在5位の同作が233億円なので、超えるか超えないかギリギリのところだろう。
コロナによる自粛マインドもある程度薄まってきたとは言え、まだまだ外出を控える人々も多い環境下での出来事と考えると快挙と言える。
「鬼滅の刃」自体は少年誌に連載された漫画が原作で、漫画自体はそれほどの話題にはなっていなかった。
それが昨年のアニメ化をきっかけに大流行、単行本売上の上位を独占するようになり、アニメ化されたストーリーの続きとなる部分が、今年10月に満を持して劇場版として公開された。
漫画原作 → アニメがヒット → 劇場版公開
という流れで公開された劇場版アニメは多数あるが、歴代興行収入TOP100にランクインしているのは少数。20年以上にわたり毎年公開され続け近年ジワジワと興行収入を増やした某推理系少年漫画の直近3作品、世界最多発行部数を誇る某海賊系漫画の1作品のみである。
だが上記は何れも100億円に満たず(とはいえ充分凄いが)、これだけのメガヒットを飛ばした漫画原作アニメの劇場版は史上初なのである。
ヒットの要因は既に色々な記事があると思われるが、あえてそれらは一切見ず、IT的な切り口で勝手に独断と偏見で分析する。
なお「見に行こうぜ」と我が家の5歳男子に打診したところ、「怖いからやだ」と言われ、おれはまだ観ていないため、ネタバレ等の心配は一切不要である。
【ヒットの理由1】
まず一つ目には、ネット、特にSNSの発達によって、「鬼滅」という昨年の話題(ネタ)が自然と長持ちする環境が作られていることが挙げられる。
動画サイトには芸能人や一般人が主題歌「紅蓮華」をカバーしたり、キャラクターのコスプレをしたりした動画が多数上がっており、SNSには作品のセリフや原作の1コマをアレンジしたネタが自由に投稿されていてSNSを追っていると自然と目に触れる。
こういったネット上のネタを目にしつつ、今年についてはコロナのために時がゆっくりと流れた感覚があり(おれだけ?)、昨年の流行が勢いを落とし切る前に公開に漕ぎつけられた、という理由もある気がしている。
もちろんNetflixでアニメ版をいつでも観られることも、流行に乗り遅れた人たちがいつでも追いつけるという点で大きな理由の一つだろう。
【ヒットの理由2】
二つ目には、映画館側の座席予約システムが拡充して来たこともあると思う。
都内の大規模な映画館では、ネットで上映回ごとの空席を確認して予約、支払まで完了出来るシステムが存在する。
窓口でしか買えなければ、当日の天候にも左右されるし、大人気がゆえに窓口に並ぶのは「密」だなあとか、そもそも面倒、という理由で客足が鈍っていた可能性が高い。
しかし事前にネットで空席を見て購入させることで、気分や天候という不確定要素をなくし、予約した時点で売上を確定させることができる。
他にも映画館側のメリットとしては、時間帯や席をある程度まんべんなく埋める、時間帯や席の購入傾向を見て上映回数の増減や時間帯の移動など、最適化が図れるという点もあるだろう。
もちろんお客側にも、大人気作品であっても並ぶ時間が短くなる、というかほとんどなくなるというメリットがある。
【ヒットの理由3】
三つ目は、アニメ作品の制作現場におけるIT活用である。
クラウドサービスを利用した制作進行であったり原画のデジタル化であったり、IT化が進んでいるらしい。
従来は原画を紙に描き、担当者が駆け回って回収、それをつなぎ合わせて動画化するという作業が、クラウドを利用することで効率化されているようだ。
アニメ大ヒットからたった1年で劇場版公開まで漕ぎ付けた背景には、IT化による恩恵も少なからずあったのではないかと愚考している。
このように社会を取り巻くIT環境面においても史上稀に見るメガヒットの理由があったと思っているが、もちろん作品自体の魅力や完成度、幅広いファン層があっての話である。
ヒットしても制作現場にお金が落ちづらい(らしい)など課題も多い業界と言われている。しかしNetflixを始めとした会員制動画サイトの浸透によって海賊版動画サイトが撲滅されつつあるなど、ITの発展・発達が追い風になる業界だと思われるので、頑張って欲しいと思う。
おれも煉獄さんが300億の男になるまでには、なんとか5歳児を説得して観に行きたいと思うので、コロナはおとなしくしておいてください。