「食品容器用ヒートシール検査装置」といわれても、何ができるのかピンとこない人もいるでしょう。ソルクシーズグループの株式会社イー・アイ・ソルが、日清製粉グループ本社と共同でこの装置の特許を取得しました。わかりやすくいうと、「工場のラインにおける不具合を検知する画期的な仕組み」です。
今回は、検査装置の開発のプロセスと特許取得にいたるまでの流れについて、営業としてプロジェクトに携わったイー・アイ・ソル のKさんに話を聞きました。昨年末に創業20周年を迎えたイー・アイ・ソルの設立から在籍しているKさんは、「技術を語れる営業」として活躍しています。
「設立当初は、技術開発部門でプログラム開発を担当していたのですが、2018年から営業職として仕事をしています。オーダーメイドで1点もののソフトを作る会社で、技術を評価していただいているので、世間にまだないものを依頼されることも多いですね」
お客様の「困りごと」と「実現したいこと」、予算とスケジュールをヒアリングして、技術開発チームとの橋渡しをする仕事です。今回のプロジェクトのきっかけは2018年。日頃から取引のあるメーカーから舞い込んだ相談でした 。
「温度を画像で見られるサーモカメラを使って、製造ラインの課題を解決できないかというお話で、画像解析のノウハウがあるイー・アイ・ソルならやれるのではないかと打診をいただきました。話を聞いて、これまで私たちが培ってきた技術で実現できる感触があったので、ぜひ技術部門を交えて検討したいとお答えしました」

今回開発した「食品容器用ヒートシール検査装置」が解決したのは、コンビニエンスストアなどでよく見かける「冷凍パスタ」などの食品容器における包装の課題です。従来は具材が入った容器に、商品名や写真が印刷された袋を被せる二重包装が一般的でした。
しかし、中の容器を完全に密閉できれば、外側の袋は不要になります。外袋をなくすことができれば、プラスチックの使用量を削減できるため、SDGsの観点から非常に意義があり、製造コストも削減できます。
これを実現するにあたって、最大の壁は「密閉不良のリスク」でした 。製造ラインでトレーに乗ったパスタがコンベアを移動する際に、凍ったパスタやベーコンなどの具材がはみ出て、蓋を接着する面に乗ってしまうことがあります 。
この状態で上から蓋を被せると、具材が挟まった部分には熱が伝わらず、密閉されずに穴が開いたまま製品が流れてしまうのです。二重包装なら具材が外にこぼれるリスクはないのですが、外袋をなくすとなると、容器が確実に密閉されているかを全て検査する仕組みが不可欠でした。
密閉不良を自動で検知するために、サーモカメラと画像解析技術を組み合わせたのが「ヒートシール検査装置」です。容器の蓋は、約170度に熱した鉄板を上から強く当てることで、溶けた接着剤をトレーに付ける仕組みになっています。イー・アイ・ソルが開発した検査装置は、鉄板が離れた直後の容器をサーモカメラで撮影します。
撮影された画像は、温度が高い部分は赤く、低い部分は青く表示されます。接着剤が溶けて密閉された面は熱を持っているため、赤いラインとして映し出されます。しかし、具材が挟まって熱が伝わらなければ青くなります。
この技術のポイントは、容器のシール部分の温度分布を放射線状に解析し、ラインが途切れていると「熱が伝わっていない不良品」と自動判定するところにあります。3列に並んで流れてくる製品を、1点あたり数秒で全数検査するのは困難です この装置によって検査の自動化・省人化が実現し、不良品を確実に防ぐ品質管理体制が構築できました。
「画像関連のシステム構築は、細かく検証を積み重ねながら最終的なシステムを作るので、最初の1年はひたすら検証でした。お客様の多様なご要望に応えるために、技術的な検討にも時間をかけたので、完成するまでに2年かかりました」
システムが動き始めた翌年に、日清製粉グループ様から「この仕組みで特許を取得したい」というお話がありました。既存の技術を組み合わせて、お客様の要望に応えただけと考えていたKさんは、「特許を取るほど画期的な技術なのか?」と戸惑ったといいます。
「自社の技術をしっかり守りたいというお客様の想いと、共同で特許を取得できれば技術力のアピールになるというわれわれの期待が重なって、出願することになりました」。2022年2月に出願された発明は、3年後の2025年11月に特許登録されました。
「食品容器用ヒートシール検査装置」は、冷凍食品を製造する工場のラインで稼働しており、今後もさらに導入拡大される予定です。
「イー・アイ・ソルは企業の依頼を受けたシステム開発が大半ですが、自分たちの検査システムを通った商品がコンビニエンスストアに並んでいるのを見ると、モチベーションが高まります。特許に名前が載った技術者は、家族に自慢したそうです」
イー・アイ・ソルは産業系のIoTのノウハウが豊富で、制御系や計測装置に関する技術を高く評価されています。製造ラインなどの異常を検知する「予知保全システム」は、AIを活用するケースも増えており、不良品の判定や部品の摩耗による自己防止など、さまざまな課題を解決しています。
近年はアメリカの大手計測機器メーカーであるNIの日本法人:日本NIとのコラボレーション案件が増えており、同社の国内パートナー企業約40社中最上位である「GOLDパートナー」の認定を受けています。製造業の実機テストや工場のライン管理の自動化や省人化、コスト削減を検討している方は、ぜひお問い合わせください。


