「レガシーシステム」という言葉をご存じでしょうか。
レガシーとは、英語で「資産」「遺産」の意味で、レガシーシステムは、技術革新の波のなかで古くなったシステムの総称です。組込み系システムの世界では、数十年前に構築されたレガシーシステムをベースにした開発が現在も主流となっています。
その現場では、第2回で紹介した「人気急上昇の定食屋」のように、職人さんたちが自分が使いやすいようにソースに調味料を入れ過ぎて、元の材料と味がわからなくなってしまったケースも多いようです。度重なる追加・修正の情報共有が不十分なまま、手を入れにくくなってしまったレガシーシステムに頭を悩ます現場も少なくないようです。
このような「救済が必要なレガシーシステム」の課題解決に取り組んでいるのが、【株式会社エクスモーション】のコンサルタントです。
コンサルタントというと、お客様のところに出向いて会議室でアドバイスだけをしているイメージがありますが、【株式会社エクスモーション】のコンタルタントは、開発現場の組織に入り込み、現場のマネージャーやエンジニアと一緒に汗をかくことも多いのです。
必要があれば朝礼や定例会議にも参加し、自ら現場研修の講師となって開発技術についてレクチャーすることもあります。ときにはシステムのコードに自ら手を入れて書き換えるなど、お客様と同じ立場に立って改善に取り組むのです。
1台の車のなかには、数多くの組込みシステムが使われています。元々自動車の開発は大規模だと言われますが、量もさることながら、最近の自動車にはさまざまな新機能が搭載されるため、それを制御するシステムも複雑化しています。
長く使われてきたレガシーシステムに改修や変更を加えながら開発を進めてきた現場では、
「改修の必要性は感じているけれど、何とかなっているから変えたくない」
「目の前の開発が忙しくて、現場の課題解決には手がまわらない」
という声が多いのですが、業務効率の向上や古いシステムの改善を検討する会社も増えてきています。
「トラブルが怖いから、今までと同じように開発が進められるシステムであることは守りながら、使いづらくなったところは根本的に改善して業務効率を上げてほしい」
などと、難易度が高いオーダーをされることも多いコンサルタントは、どこから改善に着手するのでしょうか。
「古くなったシステムの問題がやっかいなのは、非効率な業務やトラブル増加の原因が、必ずしもシステムのせいばかりではないことです。エンジニアのスキルと学習意欲の不足、社内のコミュニケーション不足、非効率ゆえの長時間労働によるモチベーション低下、
現場をよくしようとするリーダーがいない…。
古いシステムの問題が新たなトラブルを呼び、解決すべきことが複数あるにも関わらず、
すべての問題をシステムに押しつけてしまって課題が見えなくなるという悪循環に陥っている現場もあります」
(コンサルタントのAさん)
最初にするべきことは、会社が抱えている問題を把握すること。そのうえで、早いタイミングで改善を図るのは、システムの刷新や修正ではなく、エンジニアのスキルアップや社内コミュニケーションの円滑化など、人と組織にまつわることだそうです。
さまざまな問題を抱えているなかで、システムだけ新しくすると、短期間で多くのことを覚えなければならないエンジニアが混乱したり、改善したことが組織に浸透せずに、トラブルが増えたりするケースもあるのです。
さて、「人と組織にまつわることを改善」といっても、何をどうするのか、イメージが湧かない方も多いでしょう。
次回は、お客様の要望や事情を受けて、さまざまな制約条件を抱えたコンサルタントが、どのように改善を進めているのかを紹介します。