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ITトレンドレポート

ソルクシーズの営業部員が大胆予測!「JPYC承認が切り開くステーブルコインの新時代」

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株式市場が映した“予兆”

2025年8月21日(木)の株式市場では、FinTech関連や金融システム開発ベンダーの一部銘柄が上昇した。その背景には、単なる業界成長への期待だけでなく、日本初となる「JPYC(記事末尾※1参照)」という日本円建てステーブルコインが金融庁から承認を受けたというニュースがあったと考えられる。

「ステーブルコイン」という言葉は、一般消費者にとってまだ耳慣れない。しかし市場の反応が示すように、それはいま金融や決済の仕組みを大きく変えうるテーマとして注目を集めている。

ステーブルコインとは何か

ステーブルコインとは、法定通貨や国債などの資産を裏付けとして、その価値を一定に保つことを目的とした民間発行のデジタル通貨の総称である。ビットコインのように価格が乱高下するのではなく、1コイン=1ドル、あるいは1円といった形で安定するため、投機ではなく「決済」や「送金」に適した存在として注目されてきた。電子マネーと従来の暗号資産の中間に位置する、とイメージするとわかりやすい。

日本では2023年の資金決済法改正により、ステーブルコインが「電子決済手段」として法的に位置付けられた。これにより、銀行や信託会社、登録を受けた資金移動業者による発行が可能となった。今回JPYC社が資金移動業者として登録を完了し、正式に円建てステーブルコインを発行できる体制を整えたことは、国内で初めて合法的に円建てデジタル通貨が流通することを意味する。

そして、その利用シーンは幅広い。企業間取引やEC決済、さらには給与支払いなど、新しい決済インフラとしての活用が期待されている。既存の銀行振込やクレジット決済と競合する場面もあれば、各決済の支払手段として補完的な役割を果たす場面も想定される。

ステーブルコインの課題とリスク

もっとも、課題は少なくない。裏付け資産が確実に保全されているか、償還請求に迅速に対応できるか、マネーロンダリング対策はなされているか、などといった点は、ステーブルコインそのものの信頼性を左右する。JPYCが登録を得るまでに厳しい審査を経ていることは確かだが、実際の運用に移れば、透明性と信頼性への要求はより一層高まるだろう。

こうした日本での動きと比べると、アメリカの法整備は一歩先を行っている。今年7月に成立した「GENIUS Act」は、ステーブルコインに包括的な規制枠組みを設けた初の連邦法だ。発行主体を銀行や承認を受けた事業者に限定し、1対1の裏付け資産保有や定期監査、情報開示を義務付けている。

さらに発行体が破綻した場合には、保有者に優先返還する仕組みまで整備されている。米国はこうした規制を通じて、ステーブルコインを既存金融システムに統合していく姿勢を鮮明にしている。

承認が意味するもの

JPYCの承認は「新しい通貨が使えるようになる」以上の意味を持つ。第一に、規制当局である金融庁がデジタル通貨の実用化に前向きな姿勢を示した点は大きい。暗号資産は値動きの激しさから批判も多かったが、その中で「ステーブルコインは実用に足る」というメッセージを出したことは、産業界に安心感を与える。

第二に、新たなビジネス機会が広がる。FinTech企業やシステムベンダーはもちろん、決済事業者や小売業者まで、円に連動するデジタル通貨を導入することで新しい顧客体験を創出できる。さらにブロックチェーン基盤による取引の透明性やセキュリティ、低コストでの迅速な送金は、金融インフラとしての可能性を一段と高める。

これからの展望

では今後、ステーブルコインは社会をどう変えていくのか。まず考えられるのは日常的な小口決済への浸透だ。交通機関やコンビニでの支払いが、電子マネーと同じ感覚でステーブルコインに置き換わる未来は遠くない。また、越境ECや海外送金では、円建てのデジタル通貨が国際取引を一層スムーズにすることが期待される。

2025年8月21日の市場反応は、単なる短期的な株価の動きではなく、金融インフラを変える可能性を投資家が意識し始めた証といえる。そしてその先には、アメリカをはじめ各国と歩調を合わせ、国際的に信頼される通貨インフラを築けるかどうかという課題が横たわっている。

ステーブルコインはもはや一部の暗号資産愛好家の話題ではなく、国家レベルの金融戦略に組み込まれる段階へと進みつつある。JPYCの承認は、その大きな転換点の第一歩になるのかもしれない。

※1 「JPYC」とは、JPYC株式会社が提供を予定している日本円連動ステーブルコイン。ステーブルコインの発行が金融庁に認可されたのは国内初のケースで、裏付けとなる資産として日本円預金や国債が保全される計画。消費者は日本円と1:1で交換できるステーブルコインを、今後ブロックチェーン上で自由に発行・償還できる仕組みが予定されている。

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