環境の変化が著しい金融業界で、fintechがこれまで以上に注目されています。fintechは、いわば金融業界のDX。ブロックチェーン、IoT、AI、API、生体認証といったさまざまなテクノロジーの導入によって、業務効率化や新たなサービス開発が推進されています。
株式会社矢野経済研究所の調査によると、2018年度に2,145億円だった国内fintech 市場は、2022年度には1兆2,102億円に成長すると予測されています。他業界からの参入も増えており、今後もいっそうの成長が見込まれています。
そこで今回は、【前編】【後編】の2回にわたり、金融業界の最新トピックスや、今後fintech領域で進化していくと思われる技術やサービスをレポートします。
金融業界のトピックスとして、まず挙げられるのが「地銀再編」です。近年、多くの地方銀行が、人口減少や低金利などによって厳しい経営環境にさらされていました。
しかし2020年9月に菅義偉内閣が発足すると、政府は地銀再編論を提唱。これに呼応する形で日銀が支援策を導入して、地銀再編のための環境が整ってきました。
2021年5月には、青森銀行とみちのく銀行が2025年1月の合併を目指し、経営統合を発表。福井銀行は、福邦銀行の子会社化を発表するなど、合併・経営統合の動きが進んでいます。
これらの影響で、今後は金利引き下げ競争からの脱却を図る地方銀行が増え、顧客サービス向上に注力する動きが加速していくでしょう。
加えて「異業種からの参入」も、金融業界で起こっている最新の動向のひとつです。これまで異業種の企業が銀行に参入するためには、銀行免許の取得や預金・融資などのシステム整備など、超えなければならないハードルがいくつもありました。
しかし最近は、BaaS※を筆頭に、自社サービスに既存の金融機関を組み込む「エンベデッドファイナンス」が普及。現在はより低コストかつ短期間で、銀行サービスの提供が可能になっています。
※BaaS(Banking as a Service:銀行の機能やサービスをモジュール化し、さまざまな企業が自社のサービスに組み込んで利用できるようにする仕組み)
また、2021年11月には、改正銀行法の施行により銀行で行える業務範囲が拡大しました。技術革新や法改正によって、業界間の境界は次第に曖昧になっています。そのため、これまでになかった新たなビジネスモデルが、次々に創出される可能性は高いといえるでしょう。
そして新しい商品やサービスを生み出す鍵を握っているのが、急速に進化しているfintechというわけです。
続く【後編】では、今後発展していくfintech分野の技術・サービスについて、深堀りしていきます。IT業界のトレンドに興味がある方、システムエンジニアとしてキャリアアップを図りたい方は、ぜひご一読ください。