多くの会社の人事部が、体験したことのない3月を過ごしたのではないでしょうか。
コロナウイルスの感染拡大によって、新卒採用・キャリア採用、新入社員の導入のスケジュールと手法を全面的に見直し。急遽、オンライン説明会のプログラムや面接フローを作成した担当者のため息が聞こえてきそうです。
新卒採用の説明会と面接をオンラインにスイッチしたソルクシーズは、新人の導入研修もZoomを活用して実施しました。
「最後までドタバタしたけど、収穫もありました」と語るのはHさん。プログラミング研修、グループワーク、ビジネススキル研修、オンライン飲み会とさまざまなイベントがあるなかで、会議システムやチャットなどコミュニケーションツールの使い分けができるようになったといいます。
「オンラインだと、積極的に話す社員と静かな社員のコミュニケーション量が格段に変わります。前に出ようとしない社員の理解度を把握するのが大変でしたね。
もっと質問できる場を用意するなど、振り返ると改善点があります。今年は、直前になってオンライン化したので、スケジュールをこなすのが精一杯だったのですが、来年以降は、リアルでもオンラインでも改善できると思います」(Hさん)
新人研修に初めて関わったKさんも、「あまり人と接触したがらない社員を、他者と話さざるをえない状況にもっていけなかった」と改善点を挙げています。
「文系出身のプログラミング初心者には、もっと個別のフォローが必要でしたね。レベル別研修にするとか、早期にメンターをつけるなどの工夫が必要だと思っています」(Kさん)
それぞれの理解度に差があることに危機感を抱いた人材開発室は、当初の予定を変更して、6月に補講メニューを追加。経験者が初心者に教える時間を作り、システムを構築するグループワークも実施しました。
「新人それぞれに、わからないことを挙げてもらうところから始めました」と語る研修担当のMさんは、オンラインの難しさを前提にプログラムを考えたそうです。
「4月に、PCの画面越しで会ったばかりのメンバーに、活発にコミュニケーションしろというのは無理ですよね。人間関係が構築できていないなかで、質問をしにくいと感じるのは当然と思います。
6月の補講内容は、習うより慣れろで、自ら手を動かしながら理解できるように工夫しました」(Mさん)
このプログラムが好評で、研修内容の理解が不十分だった社員が急激に変わりました。
緊急事態宣言が解除された後は、感染防止策を施したうえで、リアルのグループワークも実施。例年よりも1ヵ月、現場配属が遅れましたが、全体の理解度を重視して追加した補講は新人たちに手ごたえを残し、関係者全員がやってよかったと思えるプログラムでした。
自宅にネット環境がない社員がおり、オンライン研修用に貸し出した会社備品のポケットWiFiでは容量が足りず、担当役員と人事の社員がキャリアショップに駆け込んだこともあったとのこと。
「あまりにもイレギュラーだった。最後までスケジュール変更の連続だった」(Kさん)
という初めてのオンライン新人研修は、「オンラインのメリットとデメリット」「コミュニケーションの重要性」「日々の改善の効果」など、さまざまな発見と気づきを得られた取り組みだったのではないかと思います。
来年の新人研修は、今年の経験を踏まえたリアル研修を実施することになるのでしょうか。研修プログラムの見直し、オンラインの活用法とデメリットをフォローする策など、人材開発室の奮闘は続きます。