近年よく聞くキーワードを5分でおさらいする「今どきIT用語」シリーズ。「GPU」に続く第2回は「デジタルツイン」です。
この言葉は、IoTと切っても切れない関係にあります。「ツイン=双子」が何を指しているかといえば、「実際に存在しているモノ」と「デジタル空間にあるデータ」。
実世界でセンサーなどを使って取得したデータがリアルタイムでデジタルに情報処理され、製品上に表示されたり何らかの機能が作動するシステムをデジタルツインと呼ぶようになったのです。
同じ意味の言葉に「サイバーフィジカルシステム」があります。サイバーはデジタル空間、フィジカルは物理的なモノを示しており、「モノによるデータ収集」→「クラウドなどデジタルによるデータ保存・蓄積」→「AI等を活用したビッグデータの処理・分析」→「モノの動作を決定・制御」といったサイクルが瞬時にまわることを指しています。
概念を示すキーワードであり、とりわけ「ツイン」と表現している意味がわかりづらいかもしれません。ソルクシーズの“センサーを使った見守り支援システム「いまイルモ」 ”を例にとって、具体的に説明してみましょう。
このサービスにおける「モノ」は、独り暮らしの高齢者のリビングやトイレに設置されたセンサーです。収集するデータは、温度、湿度、明るさ、熱源(=人)の動き。これらはリアルタイムで処理され、見守る側のスマートフォンに表示されます。
それぞれのデータについて、「一定期間在室が確認されなければ、自動メールが送信される」「設定した温度を超えたときに通知される」などといった設定をしておけば、データを取得すると同時に指定のアクションが行われます。
デジタルツインが実現しているのは、これらのサイクルをモノとデジタルのリアルタイム連携で行うために、デジタル空間上でモノの環境をすべて再現させることです。
同じ空間に「モノ」と「デジタル」の2つの環境を並べて構築するということが、「ツイン」と表現される所以です。
デジタルツインを導入するメリットのひとつとして、モノとデジタルのすべての情報を集約した結果、全体的な設計や改善がスムーズに行える、という点が挙げられます。具体例として、主に製造業ではスタンダードになりつつあるCAE(Computer Aided Engineering)があります。
実際にデバイスを製作しなくても、CADを使って作った製品データでテストが実施できたり、ユーザーがデバイスをどう扱っているのか、製品の強度は充分なのかを数値から分析できたりします。
肉眼では捉えられなかったモノの状態をデジタル上でデータ分析でき、センサーのクオリティ向上や製品のレイアウト・形状などの変更が検討しやすくなるわけです。
デジタルツインによって効率よく製品を開発でき、ユーザーの利用状況をチェックしながら改善を図れることがご理解いただけたでしょうか。
IoTサービスを担当するエンジニアにとって、押さえておかなくてはならないコンセプトモデルです。