株式会社ソルクシーズの研究・開発部門:事業戦略室 で3Dプリンタを購入しました。
その部門の社員が、実際に“そるくん”フィギュアなどを作りながら学んだことをまとめた「3Dプリンタ調査報告書」から一部の内容を公開します!
奥は当社の公式マスコット「そるくん」。手前がそのフィギュアです。色付けはこれから。
報告書は
● 3Dプリントを行うまでの流れ
● 3Dプリンタの仕組み
● モデルの作成と印刷
● 印刷結果ライブラリ
● スキャン機能
● 注意点
● モデルのダウンロードサイト紹介
という構成です。
今回は「3Dプリントを行うまでの流れ」や「3Dプリンタの仕組み」について報告します。
※ これは事業戦略室にて購入した3Dプリンタ「ダヴィンチ1.0 AiO (Da Vinci 1.0 AiO)」(以下Da Vinciと記載)を使用して、印刷に伴う手順や注意点等についてまとめた報告記事です。
● 3Dプリントを行うまでの流れ
3Dプリントを行うための流れは、大きく以下の3ステップに分かれます。
1. モデリング
CADソフトを利用し、印刷するデータを3Dで作成すること。既に作成されたものもWeb上に公開されていますので、それをそのまま印刷したり、それをベースに編集したりすることも可能です。
2. スライス
スライスソフトを利用し、Gコードと呼ばれる3Dプリンタが理解できるコードに変換します。スライスを行うソフトウェアを一般に「スライサー」といいます。
スライサーは、3Dプリンタに合ったコードをプリンタに提供する必要があり、場合によってはプリンタ毎に対応するスライサーを用意する必要があります。Da Vinciを購入すると、専用のスライサーが付属品としてついてきます。
3. プリント
スライサーで生成されたデータを元に印刷を実施。
この後、サポート材(この記事の後半「サポート」を参照)の除去や、場合によっては組み立てを実施。また、表面を滑らかにするためにフィニッシングなどを行います。
● 3Dプリンタの仕組み
1. 印刷の仕組み
今回購入したDa Vinciは「熱溶解積層方式(Fused Deposition Modeling: FDM方式)」という方式の3Dプリンタであり、熱で溶かした素材(ABSやPLAといった合成樹脂のフィラメント)を積み上げていくことでモデルを作成する方式です。
安価な家庭用3Dプリンタのほとんどがこの方式で、置く場所などに制限がほとんどなく、容易に扱うことができます。
仕組みとしては以下のようになっています。まずは1層目をすべて描きったうえで、次の層を描きます。この順番が重要であり、この役目をスライサーが担っています。
このように何層も積み重ねていき、最終的なモデルを生成します(クリックで拡大)。
2. 積層痕
以下の写真のように、出力したオブジェクトの表面はなめらかではなく、波打ったようになります。
これを積層痕といいます。積層痕はプリンタによって精度・粒度は異なりますが、FDM形式である以上確実に発生してしまいます。
ABS樹脂の場合、アセトン溶液を使用することで表面加工をすることができます。
アセトンは薬局で売っているネイルリムーバーに含まれているため、純粋なアセトン材を購入しなくてもそれで代用が可能です。
アセトンに1時間漬けたもの。長時間漬けると必要以上に溶けるため注意が必要。
3. サポート
円錐のような上に行くほど小さくなるようなオブジェクトであれば問題ありませんが、上に行くにつれて大きくなるようなオブジェクトの場合、下に積層がない状態が発生し、うまく印刷が出来なくなる問題が起こります。
そのため、そのような場合のために余分な部分を印刷します。この部分をサポート材といいます。サポート材は通常スライスの時点で設定し、印刷後に簡単に取り除けるように印刷を実施してくれます。
4. ラフト
印刷を行っていると、途中でヒートベッド(上図参照)から印刷中の素材(フィラメント)が浮いてしまい、反ってしまう場合があります。
そのような場合、印刷をサポートするためにラフト(浮き台)を設定します。ラフトは印刷物の下に大きめに網目状の台を印刷することで、印刷物が浮くことを防ぎます。
5. 3Dプリンタの方式と特徴
例として、FMD以外の2種類の方式を紹介します。
(クリックで拡大)
今回はここまで。次回は「モデルの作成と印刷」について報告します。お楽しみに。