「土日と週明けの4日間で、自社サイトに掲載するコラムを書いているんです。続けている最大の理由は、われわれの日常的な活動を発信することですが、コンサルタントとしてのスタンスを社員に見せたいという気持ちも強いですね。これが結構、大変で。魂を削りながら書いています(笑)」
インフィニットコンサルティングで、情報システム部向けの開発支援やコンサルティングに携わっている田村昇平さんは、2017年4月に刊行された『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則(技術評論社)』の著者でもあります。
「目標は、日本にあるすべてのIT部門をサポートすること」と、途方もない野望を淡々と口にするソルクシーズグループの名物コンサルは、コラム、コンサルティング、子どもとのコミュニケーションという3本柱をこなしているだけで、あっという間に1週間が終わってしまうそうです。
「土曜日に2時間かけて下書き、日曜も2時間で清書、月曜日に推敲して火曜日に最終レビュー。企業の情シスなどIT部門に“こういうサポートができますよ”と伝えると同時に、お客様との会話や開発現場の実態から学んだ自分の考え方を世に問うというテーマもあります」
よく扱う題材は、ベンダーとの付き合い方、戦略フェイズにおける適切なプロセスなど。「コンサルティングを通じて、それぞれのプロジェクトがどう改善したのか。結果を検証したうえで、最適なアプローチを紹介することにこだわっています」。
リアルタイムで進行している事例を取り上げたほうが、熱量は高いレポートが書けるのは当然ですが、少し時間をおいてプロジェクト全体を俯瞰し、見えてきた事実を伝えることが大事だという田村さん。
「顧客がコンサルタントに求めるのは、最適な方法です。結果を抜きにして語ることはできません。すぐには書けない。時間がかかる。大変なのですが、ニーズにしっかり応えるにはこうするしかないんです」。
書き続けたコラムを、いずれまとめて2冊めの本にすることも視野に入れています。
最近興味があることは?と聞くと、「AI、人材育成、子ども」という答えが返ってきました。
共通項は、コミュニケーション、変化、成長。AIについては、導入によって企業と組織がどう変わるのかに着目し、高スキルのコンサルタントを育成することでサポートする企業を増やしたい。田村さんにとっては喫緊の課題です。
「人材育成は、好きな領域ではなかったのですが、自分の分身を創りたいという一心でやっています。指示を待って動くエンジニアを、指示を出す側のコンサルタントに育てるのは難しいですね。それでも、彼らの成功は自分で手がけた仕事よりも達成感があります」
いかに相手からニーズや課題を引き出すか。どんなアプローチで、考え方や行動に変化をもたらすか。企業の発展も人の成長も、密度の高いコミュニケーションが重要です。
「子どもとのコミュニケーションは、さらに悩ましい。彼らと話していると、人と共感し合うのは、こんなに難しいのかと思います。ひたすら、耐えるばかり(笑)」
自分の思う方向に事業を展開してきているという名物コンサルタントにとって、最も難易度が高い顧客は、自宅で遠慮なくニーズをぶつけてくる5年生と2年生のようです。
わかります。必死に要件定義しても、時には理不尽な仕様変更が…。SEもITコンサルタントも予期せぬ変化に対応できて一人前です。