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ITトレンドレポート

ハイブリッド、マルチクラウド…クラウドの最新ニーズと注目トレンド

ITトレンドレポート

社内にサーバーなどのインフラを構築しなくても、インターネット上にデータを保管できる「クラウド」。2006年にGoogleとAmazonがサービスをスタートしてから、瞬く間に注目を集めたソリューションです。

それから約20年が経つ現在では、当初は想像できなかった幅広い分野でクラウドが活用されるようになりました。2020年時点で、企業の68.7%がクラウドサービスを活用しているという総務省の調査もあります(※1)。

今回はそんなクラウド業界について、最新のニーズと注目トレンドを紹介します。クラウドの動向を押さえておきたいという方は、ぜひご一読ください。

クラウド市場の最新ニーズ

近年のクラウド市場の拡大を牽引しているのは、DX推進のニーズです。

きっかけは2018年に経済産業省が発表した「2025年の崖」。老朽化・複雑化・ブラックボックス化したレガシーシステムを早急に刷新しないと、多様なビジネスモデルに対応できなくなり、企業の競争力が低下することで最大12兆円もの経済損失が発生すると指摘しました(※2)。

これを機に、システム基盤の構築スピードや柔軟性・コストパフォーマンスなどの観点から注目を集めたのがクラウドです。体系化の容易なWebシステム・情報システムを中心に、既存のデータ・システムをクラウド基盤のシステムに移行する「クラウドマイグレーション」がIT投資を加速させてきました。

最近はレガシーシステムの刷新や業務効率化だけでなく、ビジネスモデルを刷新することで競争力の向上をめざす「攻めのDX」に取り組む企業も増加中。データドリブン経営や、生成AIを含む最先端テクノロジーの導入のために、クラウドソリューションを活用する動きが活発になっています。

データドリブン経営は、膨大なデータに基づき意思決定を行う経営モデルです。急速に変化する顧客ニーズや外部環境に対応するためには、データ分析による適切かつ迅速な経営判断が欠かせません。現在は多くのクラウドベンダーが、DX・データドリブン経営を意識したクラウドサービスを提供しています。

加えて、クラウドマイグレーションの対象はWebシステム・情報系システムから、カスタムアプリケーションや基幹系システムに拡大しており、市場の安定的な成長を支えています。

クラウド基盤の運用を支援するマネージドサービスの認知も拡大中。ベンダーによる業務変革・組織変革のサポート強化など、技術面にとどまらないサービスの拡充にも注目が集まっており、今後はユーザー企業の増加によりさらなる成長が期待されます。クラウド技術の進化やユーザビリティ向上も、市場規模の拡大を後押しする要因のひとつです。

サーバレスアーキテクチャ

現在のトレンドのひとつとして、AWS Lambda、Azure Functions、Cloud Functionsなどの「サーバレスアーキテクチャ」があります。パブリッククラウドサービスが提供するイベント駆動型コード実行サービスを活用して、サーバーの存在を意識せずにアプリケーションの構築に専念できるソリューションです。

イベント駆動型コード実行サービスは、リクエストを受信したときにだけ一連のプログラムを実行する仕組みで、処理を行っていない間は稼働もストップします。

「実行準備に時間がかかる」「制約が多く自由度・柔軟性が低い」「複雑なシステムは構築しづらい」などの難点はあるものの、従来のクラウド以上に手軽に導入できるのがサーバレスアーキテクチャの魅力です。企業はサーバレスアーキテクチャを導入することで、プログラムの設定やソフトウェアのインストール、インフラ管理などの手間を削減できます。

料金体系はプログラムの実行回数・時間に応じた従量課金制(FaaS)のため、サービスが稼働していないあいだは料金が発生しません。スケールも利用量に応じて自動調整されるため、ストレスのない運用が可能です。

開発スピードの向上やコストの最適化を実現できることから、新サービスの開発やスタートアップなど、スモールスタートのビジネスと相性がいいサービスといえるでしょう。

マルチクラウド/ハイブリッドクラウド

同じくニーズが高まっているのが「マルチクラウド」と「ハイブリッドクラウド」です。

「マルチクラウド」は用途に応じて複数のクラウドサービスを組み合わせる手法で、

サービスそれぞれの長所・短所を補い合える点が魅力です。組み合わせを工夫することで、パフォーマンスの最適化、コストパフォーマンスの向上、負荷・リスク分散、ベンダー依存の回避といったメリットがあります。

現在特に注目されているのが、分析ツールの併用による強力かつ柔軟なデータ分析です。これによりリアルタイム処理と高度で複雑な処理を同時に実施するなど、迅速さと正確さを兼ね備えた経営判断が実現できます。

これまでは、マルチクラウドを導入するとなると、複数のサービスを個別に管理する必要があり、ベンダーごとにサービス環境が異なることによる運用の煩雑さが課題でした。

しかし現在は複数のクラウドを一元管理するプラットフォーム(MCMP)も生まれています。使用状況の確認だけでなく、リソースの再配置やスケーリング、プロセスの自動化、セキュリティ設定などの機能も搭載されており、マルチクラウドの管理を効率化することが可能です。今後はMCMPの普及に伴って、マルチクラウドが標準的なクラウドのあり方として普及していく可能性もありそうです。

「ハイブリッドクラウド」は、セキュリティ性能の高い自社のクラウドシステムや物理サーバー、オンプレミスのサービスなどをパブリッククラウドと併用する手法です。

ベンダーが提供するパブリッククラウドは、コストパフォーマンスが高く、導入や保守運用の手間がかからない反面、自社構築のシステムほどには自由度が高くありません。また外部サーバーにデータを保存するため、セキュリティ面にも課題がありました。

その点、ハイブリッドクラウドなら「顧客データや社内の機密情報はオンプレミスで管理する」「スピード・柔軟性が求められる業務にはクラウドを活用する」など、セキュリティ要件は保ちつつクラウドマイグレーションを実行することが可能です。システム構成は複雑になるものの、企業の現状に合わせてより柔軟なクラウド環境を構築できます。

ソブリン・クラウド

2018年3月、米国で「CLOUD Act」が可決され話題になりました。「CLOUD Act」は米国に本拠地を持つクラウドサービス提供者に対して、米国政府がデータ開示を要求できる法令です。

このような経済安全保障上の問題に加えて、データ保護関連の法規制の強化、地政学的リスク、サイバー攻撃の増加などを背景に、国内外でデータ保護やセキュリティ、ガバナンスへの要請が高まっている現在。クラウド業界にも、さまざまなリスクへの対応が求められています。

この情勢を背景に、いま世界的に注目を集めているのが「ソブリン・クラウド」です。

ソブリン・クラウドは、国外へのデータ移動を制限してローカルに閉じることで、データ・セキュリティ・法の主権を保持・コントロールするクラウド形態。また、堅牢なセキュリティ対策、アクセス制御、法・コンプライアンスの遵守など、政府機関が指定する各種要件をクリアすることで、高水準のデータ管理・プライバシー保護を実現します。

ソブリン・クラウドに活用される技術としては、たとえばエッジコンピューティングが挙げられるでしょう。ユーザー端末の近くでデータを処理することで、オンプレミスに近い形でクラウド環境の構築が可能です。

インダストリ・クラウド・プラットフォーム

業界特化型の「インダストリ・クラウド・プラットフォーム(ICP)」も注目トレンドのひとつです。製造業・小売業・医療業界・農業など、業界特化のニーズやワークフローに最適化したクラウド環境を提供するソリューションで、業務に必要な機能をスムーズに導入できるのが魅力です。

従来のクラウドサービスは幅広い領域・企業で活用されることが前提となっており、汎用性が高い反面、業界ごとの個別要件に対応できる仕様にはなっていません。そのため業界・企業によっては、ワークフローや規制などの制約からオンプレミス環境に依存せざるを得ず、クラウド移行が進められない現状がありました。

この課題を解決するために登場したのがICPです。パブリッククラウドをベースとしながらも、特定のニーズに効率的に対応できるサービスパッケージを展開。サービスカタログから機能を選んで組み合わせられるなど、柔軟性の高さも強みです。

AI/生成AIとクラウドの連携

ChatGPTをはじめとする生成AIの普及に伴い、2023年頃からはクラウド関連でも、AI/生成AIと連携したサービス展開が活性化しました。現在は利便性の高い生成AIのビジネス活用を検討している企業も急増中です。

大手のクラウドベンダーはこのニーズに応えるべく、膨大なデータによるトレーニングを可能にする「機械学習モデル」や、機械学習モデルを活用した「基盤モデル」の開発を促進しています。

これらのモデルを組み込むことで、生成AIがアプリケーション開発を行うプラットフォームを提供するなど、サービスの幅を広げています。専門的な知識がなくてもAIを活用できる「AIaaS」も、注目が高まっているサービスです。

また、対話型AIチャット機能やAIアシスタント機能を追加するなど、既存のクラウドサービスのユーザビリティ向上にも生成AIが活用されるようになりました。これによってユーザー企業は、より高度なデータ分析や、業務の効率化・自動化を実現可能です。

これら生成AIをからめたサービスの開発は、クラウドの活用を促進するだけでなく、製品・サービスの単価上昇にも寄与。市場のさらなる成長を後押しするでしょう。

ソルクシーズグループのクラウドへの取り組み

ソルクシーズグループも、クラウドベースのさまざまなサービスを展開しています。ソリューション事業では、企業向けのオンラインストレージサービス「Fleekdrive」が順調に顧客を拡大しています。

サービス提供事業者向けに、大手メーカーとのAPI・OEM連携や販売チャネルの拡大にも注力しており、2024年2月にはユーザー数が30万人を突破しました(※3)。高いセキュリティ性能と業務の効率化を実現する豊富な機能は、専門メディアでも高く評価されています。

「杯王 on Cloud」は、個別クレジット(個品割賦)の受付・審査から請求・入金までをサポートする基幹システムサービスです。支払可能見込額を含めた簡易自動審査、複雑な加盟店条件設定、豊富な外部接続オプションといった機能が評価され、さまざまな業界の個別クレジット事業者が導入しています。

ソルクシーズは、SBI グループによる地域企業のDX化推進サービス「SBI DX データベース」に参画しており、全国の中小企業に「Fleekdrive」「杯王 on Cloud」を提供しています。ソフトウェア開発事業でも、クラウド化の案件は増加しており、企業のコスト削減や収益性の向上を支援しています。

クラウドのほかにも、FinTech、IoT、AI、CASEなどの領域を強みとするソルクシーズグループ。「将来性の高いSIerで働きたい」「最先端テクノロジーを活用したプロジェクトで活躍したい」という方は、キャリア採用サイトと求人情報をご確認ください。

【出典】
※1
総務省|令和3年版 情報通信白書|企業におけるクラウドサービスの利用動向
総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd242140.html

※2
DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜
経済産業省 デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf

※3
企業向けオンラインストレージ「Fleekdrive」が 30万ユーザーを突破 | Fleekdrive

株式会社Fleekdrive
https://www.fleekdrive.com/news/240207/

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