Web2.0と比べると、より複雑なWeb3.0。その全体像と今後の展望についてレポートするシリーズの【前編】では、Web3.0と関連の深いDAOとメタバースについて解説しました。
【後編】で取り上げるのは、「NFT」と「仮想通貨」。いずれもWeb3.0、DAO、メタバースと切っても切り離せないキーワードです。
「NFT」は画像・動画・音楽といったデジタル作品の所有権を、ブロックチェーンによって証明できるようにする技術。これを活用すれば、クリエイターは自身のデジタル作品に唯一無二の価値を付与でき、物理的な作品同様に販売・取引が行えるようになります。
すべての取引履歴をブロックチェーン上に自動保存することで不正を防止。取引のたびにクリエイターに手数料が入るシステムや、特定の条件下でのみ取引が行える仕組みの構築も可能です。
これらにより、個人間での安心・安全な取引が担保されるため、特定の管理者を配する必要がなくなります。
メタバースのなかで導入すれば、アバターのデザインやファッションアイテムを売買したり、NFTを参加権・投票権の管理に利用し、DAOやクローズドなコミュニティを形成・運営したりすることもできるようになります。
「仮想通貨」については、既にご存じの方が多いでしょう。ビットコインやイーサリアムをはじめとした、インターネット上でやり取りができるデジタル通貨。国が信頼を保証する円・ドルのような通貨とは違い、ブロックチェーンによる分散管理で信頼性を担保する仮想通貨は、それ自体がWeb3.0の一形態でもあります。
NFTをはじめとするWeb3.0関連のサービスや、メタバース上での商品・サービスの売買には、仮想通貨が欠かせません。Web3.0のシステムはアカウントが不要なので、匿名利用できる仮想通貨が使われるということです。
このほか、Web3.0の活用領域として注目を集めているソリューションとして、「DeFi(Decentralized Finance)」が挙げられます。
DeFiは管理者の存在しない「分散型金融」を意味する言葉で、企業・個人がダイレクトに融資や資金の貸し借りを行うための仕組みです。
銀行・証券などを介さないため、従来の金融サービスと比べて手数料が安く、金利は高く設定できるというメリットがあります。資金がより集めやすくなれば、企業・個人ともに新しいサービスにトライしやすくなります。
災害時の物資マッチングやシェアリングエコノミーなどの個人間取引も、Web3.0によって、便利かつ低コストになるといわれています。このように多様な先端技術との関わりが深いWeb3.0は、われわれの社会になくてはならない概念になっていくでしょう。
ただし新しい概念のため、まだまだ法整備が進んでいないのが現状です。とくに日本は諸外国と比べても、対応が遅れています。
そもそも特定の管理者が存在せず、ユーザーの匿名性が高いWeb3.0は、法律による規制が非常に難しい領域です。NFT、仮想通貨の取引、メタバースの利用に際しては、トラブルや犯罪に巻き込まれるリスクもあります。
SNSと同様に、フェイクニュースや誹謗中傷をはじめとする有害な情報の発信・取得をどのように規制するかも課題になるでしょう。
利用ハードルの高さも、Web3.0が抱える課題のひとつです。仮想通貨を購入するためには、IT関連の知識が必要になり、苦手意識がある人にとっては大きなハードルになりそうです。一方、利用者が急増した場合、現状のブロックチェーンの仕組みでは取引にかかる負荷に耐えきれないという問題もあります。
今後は、これらの課題をクリアするシステムの構築が求められます。視点を変えれば、ここにも新たなビジネスチャンスの可能性が広がっているといえます。
Web3.0が普及するのは間違いありませんが、見えていないのはそのスピードと、浸透するプロセスのなかで発生する課題と解決策です。新たなビジネスを考えたい人、Web3.0によって現状の仕組みを変えたい人は、今後登場するサービスのモデルについて、研究を重ねていくといいのではないでしょうか。