現在、クラウドを利用する多くの企業が、最適な環境を追求し始めています。これまで主流となっていたのは、パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミス、エッジコンピューティングといった複数のサービスを連携して管理する「集約型クラウド」です。
しかし集約型クラウドは、システムの運用が煩雑になり、スピードや運用の効率が損なわれるうえに、コストがかかってしまうという課題がありました。
最近は、IoTデバイスやAIを搭載したシステムなどエッジコンピューティングが急増中。そのため、今まで以上に低遅延サーバーのニーズが高まっています。加えて、セキュリティ強化やコンプライアンス遵守も必須条件となっており、効率のよさと安全性の両立が求められています。
そんななかで注目を集めているのが「クラウドのエッジ化」という概念です。
クラウドのエッジ化とは、複数の拠点にサーバーを置いてクラウドを分散させたうえで、一元管理できるようにすること。「エッジクラウド(分散クラウド)」とも呼ばれ、ユーザーに近い環境に構築した複数のクラウドからサービスを提供できるという特徴があります。
ではクラウドのエッジ化は、具体的にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
ひとつ目のメリットとして、まず挙げられるのが、クラウドサービスの「パフォーマンス向上」です。ユーザーに近い複数のサーバーに分散させるため、データ処理が集中することなく、負荷軽減と低遅延を実現することができます。
また、拠点が分散されれば、ネットワーク障害によるシステム停止のリスクも軽減され、稼働の継続性向上にもつながります。システム開発の工数や運用コストも抑えることができ、ユーザーの使い勝手も向上するでしょう。
分散クラウドによる低遅延が求められる分野として、AR/VR、ゲームなどのアプリケーション、監視カメラの画像処理、小売、製造業、自動車の自動運転、医療機関、都市の建物や交通などを連結させるスマートシティなどが挙げられます。
このように、分散クラウドはわれわれのビジネスやライフスタイルを大きく変える革新的なテクノロジーです。企業のクラウド運用という観点からも、まだまだたくさんのメリットが存在します。
クラウドのエッジ化がもたらすパフォーマンス向上以外のメリットについては、【後編】で引き続き紹介していきます。ぜひ、併せてご一読ください。