コロナ禍の中で注目されている「IoB(アイ・オー・ビー)」という言葉をご存知でしょうか。「言葉だけは聞いたことはある」という人もいれば、「アップルが新製品を出したのですか?チェックしなきゃ」という人もいるかもしれません。最近、話題になることが増えたIoBの概要と具体的な活用例について解説します。
「IoB」は「Internet of Bodies」または「Internet of Behavior」の略語で、「体・行動のインターネット」と呼ばれる概念です。家電などの「モノ」をインターネットにつなげる「IoT」の延長にある概念として、2010年代から使われはじめました。
最近ではとくに、人の「行動・動作」をインターネットに結びつける機能が重視されています。アメリカのリサーチ会社ガートナーによって、2021年の「戦略的テクノロジートレンド」に選出されたこともあり、各業界が注目する分野のひとつとなっています。
では、IoBのテクノロジーによって、何ができるのでしょうか。
代表的な実用例として挙げられるのが、ペースメーカーやスマートウォッチなど体に取り付けるデバイスです。睡眠の質・運動量・心拍数・呼吸数・血糖値などの身体的なデータを収集・解析することで、生活改善や健康維持に結びつけることができます。
医療従事者が、温・湿度などの環境データとともに個人のデータを管理することで、リアルタイムでの警告を行うこともできます。高齢者の見守りや従業員のストレスチェックなどにも活用できるでしょう。
デバイスによって収集したデータを、PCのサービスやスマートフォンアプリから取得したデータと組み合わせれば、個人の位置情報・購買履歴・SNSやWebページの利用状況・好きな食べ物など、多様かつ膨大な量のデータを元にサービスを提供するのも難しくなくなります。
人々のあらゆる行動パターンを分析できるようになれば、新たな商品・サービスの開発、災害時の行動予測などに役立つはずです。
コロナ禍では、熱感知システム・顔認証システム・位置情報の追跡を通して、感染経路の調査や感染拡大防止への貢献が期待されています。海外には、従業員が感染対策を行っていない場合にアラームとともに行動を規制する企業もあるようです。
サービスのクオリティが高まる一方で、プライバシーがどこまで守られるべきかは慎重に議論されなければなりません。利便性を高めるために、より詳細な個人情報を取得しようとする企業が増えていくと予想されており、データ収集プロセスの透明性や倫理観のアップデートが必要になるものと思われます。
IoBが政府・企業・消費者にもたらすメリットは大きく、ますます発展していく分野であるのは間違いありません。さて、毎日の暮らしを便利にするために、あなたはどこまで個人情報を提供できますか?