【情シス野郎 チラシの裏】は、「情報処理安全確保支援士」資格を持つ情シス担当が、仕事を通して得た知識や技術を、技術面に詳しくない人でも読みやすいよう「チラシの裏」に書くかのごとく書き散らす!というシリーズです。
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企業や病院、学校、家庭内において、インターネット接続やシステムにアクセスするために設けられた通信ネットワークをLAN(Local Area Network)と呼ぶ。
機器室やサーバルームに配置された基幹ネットワーク機器(ルータ等)から、床下や天井、壁の中を通して机までLANケーブルが配線され、そこにスイッチングハブと呼ばれる通信を分配するための機器に繋がれ、PCまで配線される。
もっともここ数年でPCとスイッチングハブ間の接続は無線化が進んだ(無線の場合はアクセスポイントがその役割を担う)ため、机周りのLANケーブルはだいぶすっきりした組織も多いと思う。
家庭においてはスマートフォンやタブレットの浸透もあり、量販店で売り出されているブロードバンドルータはWi-Fi接続に対応された機器しかほぼほぼなくなったため、企業よりも数年早く無線化が進んだ印象がある。
このように、あって当たり前だけど無くなるとやばい、普段は目立たないが実は命を握っている(大げさ)通信インフラ環境においても、徐々に利用者が実感出来るような進化・革新が訪れている。
さらに、このようなPCやスマホなど端末周りのある程度分かりやすい部分でなく、さらに目立たない基幹ネットワーク機器も実は進化している。
従来のネットワーク機器は、真っ黒な画面(コンソール)上でコマンドをカタカタカタカタカタと入力して設定するものであった。コマンドは機器のメーカーごとにある程度は異なるため、ネットワークの知識とは別に、機器ごとの専門知識が必要だった。
ところが昨今では、この機能をONにして、、、このポートにはこのIPアドレスを設定して、、、という具合に、これまでカタカタしていた設定をブラウザで管理画面にアクセスして行うケースが増えている。
例えば、AWSやAzureのようなIaaSが提供する管理画面でインフラの設定を行うケースがそれにあたる。従来のサーバルームやデータセンターがIaaSに移行され、利用はかなり増えている。
またCisco社のMerakiのように、クラウド上の管理画面から全てをGUIで設定して機器に流し込むという、オンプレミス環境のネットワークですらクラウド上で設定して管理も行うケースもある。
いずれも、ネットワークと日本語の知識さえあれば画面上で全ての設定が出来てしまうため、ネットワーク知識はあっても機器固有の知識や経験がない、そういう私のようなシステム管理者でも、通常必要になる程度の設定であれば実装出来る。
機器メーカーごとのニッチな知識や経験が不要になるため、これまでカタカタしていたネットワーク技術者にとっては痛し痒しかも知れないが、敷居が下がることはいいことであると思う。
クラウドという言葉や仕組みが生まれて10年以上が経つ。
ネットワークの設定にしても、各種データにしても、クラウドという形で他社に管理されてしまうことのリスクは依然として存在する。
この10年でデータ喪失やクラウド基盤の障害によるサービス停止など、クラウドならではのニュースもあったが、それらを乗り越え、市民権を得て、もはや生活とクラウドは切り離せない。
それは多くの人にとって、リスクを大きく超えるメリットがあったからに他ならない。
企業のファイルサーバやメールは、クラウド上のオンラインストレージやメールサービスに取って代わり、世界中のどこからでもアクセス可能だ。
携帯電話の機種変更など、端末間通信でやり取りしていた携帯電話のデータは、クラウド上に取得したバックアップを利用して簡単に復元出来るようになった。
また、クラウドはAIやIoT、5G等と並びDX(Digital Transformation)の中核となる仕組みである。
DXとは単なる業務や生活に関わる何らかのデジタル化そのものを指す言葉ではなく、社会に関わる企業や家庭、サービス、多方面なデジタル化により、社会全体がより良いものに「変革」されることである。
まさにそういう意味では、この10年のクラウドの浸透は既にDXを発生させたと言っても過言ではないと思う。
さらにここから、AIや5Gなどを取り込んでどのようにDXが加速されていくのか、非常に楽しみで夜しか眠れないのである。