自然言語コミュニケーションによる文章の要約・翻訳、情報整理、アイデア出し、明確な答えがある質問への回答、文章作成などで、強みを発揮する言語モデル「ChatGPT」。最近は、「Gemini」「Claude」「Perplexity AI」など、さまざまな生成AIサービスが出てきていますが、認知度が高い「ChatGPT」はトップシェアをキープしているようです。
あらためて「ChatGPT」について、基本情報をおさらいしておきましょう。AIに膨大な量のテキストデータを学習させることで、人間のような対話が可能になった「大規模言語モデル(LLM)」。幅広い領域の知識を保持しているため、日常会話からビジネスシーンまで、広範囲の質問・要求に対応することができます。
2022年11月にOpenAIからリリースされて以来、ChatGPTは社会に大きなインパクトを与え続けています。リリース直後は、わずか2ヵ月で1億ユーザを突破というニュースに驚かされました。最近は企業が商品・サービスにChatGPTの機能を組み込むケースも少なくありません。
2023年3月にGPT-4が発表※され、より高度な情報処理を行えるようになりました。
(※2025年2月にGPT-4.5が発表されていますが、この記事はその発表以前の情報をもとに作成されています)
対応できる単語数をGPT-3.5と比較すると、GPT-4は約8倍。GPT-4以降では、画像・音声にも対応できるマルチモーダルが採用されており、専門家によるレビューを重ねることで、安全性の向上にもつながっています。
一方で、「回答にフェイクがある」「倫理・道徳的に問題のある回答が含まれる」「著作権侵害の恐れがある」「思考や推論・感情の理解や曖昧な質問が苦手」など、生成AIの利用には、まだ課題が多いのが現状です。インプット情報が漏えいするリスクもゼロではありません。顧客情報や企業の機密情報の取り扱いには、十分な注意が必要です。
こういう話を聞くと、「なんだ、全然使えないじゃん(だから使い方を習わなくても大丈夫)」と、内心ホッとしている人も多いかもしれません。しかし、そんな結論を下すのは早計です。弱点を理解したうえで使い方を工夫すれば、ChatGPTはかなり実用的なツールになります。油断していると、ChatGPTを活用できる人との差はどんどん開いてしまうでしょう。
そこで今回は、ChatGPTを活用できる人・できない人の違いを利用シーン別にレポート。ChatGPTの弱点と、それを補う方法についても解説していきます。
「ChatGPTを使いこなして生産性を高めたい」「急速な技術の進化については押さえておきたい」という方は、ぜひ記事の内容を参考にしてください。
ChatGPTによる情報収集
ChatGPTの利用シーンといえば「情報収集」。従来のインターネット検索とは異なり、ユーザが求める情報にピンポイントで回答してくれるのがChatGPTの強みです。
自分で複数のサイトを検索して、ひとつひとつ該当の内容を探す手間が省けるため、うまくいけば情報収集作業を大幅に効率化できるでしょう。チャット形式で手軽にサクッと質問ができ、回答内容をコピペして資料作成などに活用できる使い勝手のよさもメリットです。料理のレシピなど、具体的な手順・プロセスについて順を追って説明することもできます。
情報収集にChatGPTを活用できる人とできない人の最大の違いとして挙げられるのが、質問の仕方です。ChatGPTが活用できない人ほど、アバウトな質問ひとつで、すぐに答えを得ようとしてしまう傾向にあります。
膨大なデータに基づき質問への回答を行うChatGPTは、信ぴょう性の低い情報を参照してしまうケースがあります。学習内容から推測した内容を、あたかも事実かのようにアウトプットをすることもあるため、回答を真に受けて誤った情報を拡散してしまう可能性もゼロではありません。
加えて、人間のように言外の文脈・背景を察知するのも不得意です。そのため曖昧な質問だと意図がつかめず、求めているものとは異なる答えが返ってきます。ChatGPTは質問の意図がわからないときでも、人間のように聞き返す仕様にはなっていないため、利用者側で認識のずれを見極める必要があります。
ChatGPTが活用できる人は、このような性質を見越したうえで、まずは参照して欲しい情報の範囲や文脈などを限定する指示出しを行います。その前提のもとに、コミュニケーションを重ねながら、徐々に具体化していくのです。
軌道修正をしていくときのポイントは、ChatGPTが回答を出すうえで不足している情報や、前提条件の差異などを推測しながらすり合わせを行うこと。質問の角度を変えたり、同じ質問を繰り返したりすることで、回答結果が変わる場合もあります。どう深堀りすればいいかわからないときは、5W1Hで考えると質問の方向性が見つけやすくなるかもしれません。
たとえば出力に納得できないときに「政府が公表しているデータを参照して」「マーケターの視点から回答して」「2022年以降の情報だけを参照して」などの入力で軌道修正を行えば、期待通りの回答が得やすくなります。
「市場調査のため」「論文作成のため」など情報が必要な理由・目的を提示したり、「具体的な事例・数字を提示して」「上位5つを箇条書きして」「SWOT分析して」など出力形式やフレームワークを指示したりするのも効果的なテクニックといえるでしょう。
回答が間違っている可能性を常に考慮して、ファクトチェックを心がけるのも大事なポイントです。疑わしい情報があれば、ChatGPTにソースや根拠を質問してみると、チェックがしやすくなります。
とくにニュースなどの最新情報や、株価などの変動が激しい情報、数字・データ、法律・医療をはじめとする専門知識などについて調べるときは根拠チェックを徹底しましょう。実在する地名・店名・人物・作品に関する情報など、個別の情報についての回答を扱うときも誤情報を真に受けて他者の権利を侵すリスクがあることを踏まえ、慎重に確認をしましょう。
ChatGPTによる文章の要約・翻訳
ChatGPTの用途を「正解を得ること」だけに限定するのは、少しもったいないかもしれません。力を発揮するタスクのひとつは、長い文章の要約です。
短くまとめて欲しい文章をプロンプトとして入力。「概要を作成して」「200字以内に要約して」などと指示を出すだけで、要点が端的にまとまった文章を生成してくれます。
また、論文や専門書などの難しい文章を、わかりやすく噛み砕いて説明してもらうのもおすすめです。要点だけをすばやく確認したいときは、「重要なところを箇条書きで教えて」「わかりやすく図や表に変換して」といった指示を出す方法もあります。
もちろんChatGPTからの回答を短くしたり、理解しやすい文言に変換したりすることも可能です。先述した情報収集のテクニックと組み合わせれば、未知の領域であってもスムーズに基礎的な知識を把握することができるでしょう。
その際も、ChatGPTをうまく活用できない人は曖昧なプロンプトを入力しがちです。
重要なのは文脈を明確にすること。「ビジネス用の資料を作成したい」「初心者にわかりやすい文章で」などの指示を与えると、トーン&マナーを最適化して文章をまとめてくれます。
大事な要点を省いてしまうなど、思い通りの要約が生成されないときは、「〇〇という言葉を使って説明して」などとキーワードを指定するのも一案です。情報収集と同様、一度の質問で完ぺきな出力を期待するのではなく、複数回のやり取りを前提に、どうすれば期待する出力に近づくかを考えながら軌道修正していきましょう。
加えて、ChatGPTを文章の翻訳に使うこともできます。外国語の文章を日本語に変換すれば、情報収集できるソースの幅が大幅に広がります。海外出張やグローバルなビジネスシーンでの活用も期待できそうです。
「翻訳文をさらに要約してもらう」「トーン&マナーを調整してもらう」など、複数の指示を組み合わせられるのも便利です。なお、外国語の文章をそのままコピペするだけでなく、サイトのURLを記載して「このサイトを日本語で要約して」という指示も出せます。
ChatGPTによるアイデア出し
「新しい企画を考えたい」「記事のタイトルや構成を考えたい」「商品・サービスのキャッチコピーを打ち出したい」といったアイデア出しの場面でもChatGPTは役立ちます。
活用できない人は、ここでも一発目の回答でいきなり最適解を欲しがったり、質問の範囲が広すぎたりしてしまい、なかなかいいアイデアが得られません。
アイデアを考えてもらうときのポイントは、とにかく量を出させること。ChatGPTは、アイデアの良し悪しを判断する価値基準を持っていないため、いくつもの案を出させて、そこから使えるものをピックアップするのがおすすめです。
たとえば「〇〇について50個のアイデアを出して」など、数を指定するのが有効です。最終的にアイデアを選択するのはあくまでも人間と考えておくと、ChatGPTの苦手な部分をうまく補うことができます。
アイデアの方向性がズレているからといって、諦めるのは早計です。アウトプットを確認しながら、「ポジティブな視点から」「ネガティブな視点から」というように、異なる切り口で多面的に質問していきましょう。出力されたアイデアを採点して、ChatGPTに「いいアイデア」の基準を与えるのも効果的です。
目的を共有せずにアイデアだけを出させるのも、よくある失敗パターンのひとつです。「なぜそのアイデアが必要なのか」「ターゲットは誰なのか」といった前提情報をChatGPTに与えると、アイデアの精度を高めることができます。「あなたはプロのコピーライターです」「あなたは商品開発の専門家です」など、ChatGPTに特定の役割を意識させるというテクニックもあります。
ChatGPTによる文章の生成
「生成AI」であるChatGPTの最大の醍醐味は、何といってもクリエイティブな活動のサポートです。ほかの用途と比べて活用の難易度は高いものの、うまく使いこなせると生産性を大幅に高めることができます。
たとえば文章作成はブログやSNS、論文、エッセイ、小説、詩など幅広い形式に対応できます。しかし、うまく活用できない人は「〇〇について文章を書いて」などChatGPTに丸投げしてしまいがちです。これでは期待通りの成果物を得ることができません。
クオリティの高い文章を出力させるためには、目的や文章のターゲット、タイトル、文字数、文中に組み込みたい内容などを含めた具体的なプロンプトを作成することが大切です。最初から完成した文章を求めるのではなく、要素出し、構成、本文執筆、調整といったいくつかのステップに分けて作業を進めていくのも効果的です。
たとえば業界の最新トピックスについてゼロから考察記事を書く場合、まずはアイデア出しの要領でChatGPTにテーマを与えて、いくつかの考察・意見を出力してもらいます。
十分な量のアイデアが出たら、そこから実際に記事に使えそうな内容をピックアップ。箇条書きにしてChatGPTに投げ、記事の大まかな構成案を作成してもらいましょう。問題がなければ、その構成案を元に記事執筆を依頼します。
この手順を踏むだけでも、出力される文章の精度はかなり高くなるでしょう。さらにフィードバックを与えたり、長さや追加したい内容を伝えたりと調整をしていきます。
ChatGPTは出力する文体にも細かい注文を出すことができます。「友だちに話すようなフランクな口調で」「専門用語を使って論文調で」などのフィードバックを与えて、理想の原稿に近づけることが可能です。
上記の手順が面倒なときは、「書きたい内容の断片を箇条書きしたり、文章の冒頭だけを書いて、続きをChatGPTに考えてもらったりする」といった方法でもスピーディーに原稿作成ができるでしょう。
とはいえChatGPTが生成した文章は、基本的には人間の手直しが必要です。調査や情報収集で活用する際には、ファクトチェックも欠かせません。ChatGPTで原稿を完結させようとすると、細かい手直しや指示で時間を消費してしまう可能性があります。
そのため、あくまで「業務効率化のために叩き台となる文章をつくってもらう」という位置づけで考えましょう。
ちなみに最新のGPT-4は、アイデア出しに必要なクリエイティビティや推論の力がさらに強化されており、うまく活用すれば大幅な業務効率化につながります。
以上、ChatGPTが活用できる人・できない人の違いと効果的な使い方について解説しました。使い方次第で成果に大きな差が出るという点では、ChatGPTもほかのさまざまなITツールと変わりません。
この記事を参考にしていただいて、ぜひChatGPTを使いこなして生産性向上をめざしてみてください。ちなみにこの記事は、ChatGPTに書いてもらったものではありません。念のため。
※この記事は2023年06月02日に公開した記事を再編集しています。