テクニカルスキルに加えて、ビジネスを推進するために必要なスキルがあります。交渉力もそのひとつ。
「ビジネス交渉力について」の記事でお世話になった「株式会社NRIJ」※ のサイトで【交渉スタイル】診断というページがあるのを発見し、NRIJのメイン講師でもある観音寺社長に「交渉スタイルって何ですか?」と質問してみました。
※NRIJは、英国PMMSコンサルティング・グループによって開発された戦略的交渉力研修プログラム「NRI(ネゴシエーション・リソース・インターナショナル)」の国内唯一のオーソライズド・ライセンシーです。
「人は誰でも、何らかの交渉スタイルを持っています。交渉力を高めるための第一歩は、今までの経験のなかで構築してきた自分の交渉スタイルを把握することです」
なるほど。【交渉スタイル】診断を受けると自分のタイプがわかるんですね?交渉スタイルは、どんな要素で構成されてるんでしょう?
「交渉スタイルは、以下の要素で構成されます。これらの要素は、交渉に使うテクニックや基本アプローチを表すものです。あなたが日頃、意識的または無意識に利用している説得テクニックとその頻度を示すものです。
A=Avoidance(交渉を避ける傾向)
E=Emotion(感情的アプローチの傾向)
L=Logic(論理的アプローチの傾向)
T=Threat(威嚇的アプローチの傾向)
B=Bargaining(駆け引きする傾向)
C=Compromise(妥協する傾向)
この中でA(交渉を避ける傾向)を除く、E~Cの5つの要素のことを、弊社の『戦略的交渉力』理論では【5つの説得テクニック】と称して解説しています。Aを省いているのは、ビジネス交渉では “交渉を避ける” というのは論外だからです」
【交渉スタイル】診断は、15問の質問に回答するだけで、自分の交渉スタイルがどのような要素で形成されているかを自己診断できます。回答を終了し、送信ボタンを押すと、結果がグラフで即座に表示されます。
ということで、4名のソルクシーズ社員に体験してもらった結果(各ポイント数値)を観音寺さまにお送りして「特別に」フィードバックを頂きましたので、それを紹介します。
上の図は、4名のテスト結果を一覧表にまとめたものです(名前は仮名です)。これを参考に各要素のバランスの見方と詳細分析をしていただきました(以下は観音寺さまから頂いたコメントをそのまま引用しています)。
交渉スタイル分析では、次のようなバランスを重視しています。
1.Emotion(感情)とLogic(論理)のバランス
交渉相手を説得するには「EmotionとLogicの要素を組み合わせて交渉すると成果が最も期待できる」ので、まず、これを組み合わせて戦略を立てることを推奨しています。
相手のタイプによっては、この組み合わせの比率を変えないと効果が半減してしまいます。しかし、相手のタイプに適合しようと思っても、どちらかの要素が低すぎると、EmotionやLogicの言動を考え出すのが難しいので、スムーズな組み替えができません。
このバランスで見ると、佐藤さんと鈴木さんは「良い」ですね。
一方、田中さんはLogic(論理;9)に対して、Emotion(感情;3)が低すぎますので要注意です。
高橋さんは、一見このバランスはよくないですが、Logic(論理;7)の値も高いので「特に問題なし」と判断します。
2.Compromise(妥協)とBargaining(駆け引き)のバランス
日本人は交渉を争いごとと誤解している人が多いため、前出のAvoidance(交渉を避ける)やCompromise(妥協)の傾向が顕著に現れます。
研修プログラムでは、Compromiseは最も弱い説得テクニックなので、最後の手段として使いましょうと説明しています。
一方、Bargainingは「駆け引き」と聞くと、日本人は「したたか」とか「油断できない」など、マイナスイメージを持たれている人がほとんどです。
研修で身につけていただく「駆け引き」は、事前に用意した「取引カード」を交換しながら、お互いが納得・満足できる合意点を見出す行為ですから、ポジティブなイメージを持っていただいて結構です。
このバランスで見ると、高橋さんのCompromise(妥協;10)は高いですが、Bargaining(駆け引き;13)も高いので「良い」、他の3名の方はとても「良い」ですね。
3.Threat(威嚇)の度合い
Threat(威嚇)は、相手に危機感を与え、有無を言わせずに相手を従わせる行為です。
効果を発揮することもありますが、相手から倍の威嚇を受けるリスクもあります。自分が相手より優位な立場だと、つい無意識に、安易にThreat(威嚇)を使う傾向がありますので、Threatの高い人は留意する必要があります。
この観点から見ると、田中さんのThreat 11は、Emotion(感情;3)の低さを勘案すると、無意識にThreat的発想になっている可能性が高いので要注意です。
一方、鈴木さんのThreat 0は、Avoidance(交渉を避ける;9)の高さを勘案すると、穏便に済ませたいという気持ちが強すぎると考えますので要注意です。
以上のような観点で、ご自身の「交渉スタイル」を知り、今後の交渉に活かしてみてください。
今回の結果では、「駆け引き」の点では、スキルを持っているソルクシーズSEでしたが、その他の点では、改善ポイントがいくつかありました。
まんぜんと「交渉上手になりたい」と思って自己流で試すより、スタイルを知って取り組むと効果的な気がしてきましたね。ご興味を持ったかたは、まずは自己診断してみてはいかがでしょうか?
【交渉スタイル】診断はNRIJの情報提供ページ(TOPページ下方)から体験できます。
NRIJでは、コロナ禍においても参加しやすいオンライン講座も提供しています。
日経ビジネススクールオンライン講座『実践ビジネス交渉力』