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【現地視察レポート】シンガポールのキャッシュレス最新事情

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現金を持ち歩かない生活は、もはや「日常の前提」である――。アジアの金融ハブ・シンガポールを訪れると、そんな現実を肌で感じることになる。

日本では、キャッシュレス決済比率がようやく40%を超え、2025年12月の算出方法の見直しも伴い、2024年のキャッシュレス決済比率は50%台に達した。そして現在は、「2030年までに65%(※1)」という新たな目標を掲げ、環境整備を加速させている。

しかし、一足先に「完全キャッシュレス」に近い社会を実現している同国では、キャッシュレス決済比率がすでに80~90%超に達しているともいわれ、もはや現金は補完的な存在になりつつある。なぜこれほど浸透しているのか。現地視察の経験をもとに、キャッシュレス社会の実情と普及の理由を解説する。

シンガポールについて

シンガポールを訪れてまず圧倒されるのは、徹底した「機能美」と「効率社会」の姿だ。

東京23区ほどの国土に約600万人が暮らすこの国は、天然資源を持たず、大航海時代から東西貿易の港として発展してきた歴史を持つ。そのため、国際的な金融・物流拠点として成長を続けるべく、情よりも「ルール」や「実利」を最優先する独自の文化が根付いている。

この姿勢は都市の景観にも表れている。世界的な観光名所である巨大複合施設「マリーナベイ・サンズ」周辺の完璧な光景に感嘆する一方で、住宅街の屋台の裏を覗けば、ゴミが散乱している場所も見受けられた。

厳しい罰則が存在する国でありながら、目につきにくい生活の場ではある程度の雑多さがそのまま残されている。洗練された中心街の景観と、生活感があふれる雑多な裏通り。このふたつの顔を使い分ける絶妙なバランスに、しなやかな運営姿勢を感じた。

また、酒やタバコは突出して高額だ。価格設定そのものを国民の行動をコントロールする「装置」として機能させる点は、まさに合理性を前提とした社会設計の象徴である。港に集まる無数のタンカーを眺めると、こうした「生存のための合理主義」がアジア随一の金融国家へと押し上げた原動力だと実感した。

有人レジを見かけない日常

決済事情に目を向ければ、日本ではまだ珍しい「徹底した効率化」が日常の風景に溶け込んでいる。

象徴的なのはファストフード店などの光景だ。日本でも見かけるようなセルフレジ一体型の端末が店舗の外側や入り口付近に並び、有人レジはほとんど存在しない。特定の店舗ではなく「多くのチェーン店やフードコート」で当たり前になっており、セルフ決済が社会の標準として定着している様子がうかがえた。

シンガポールのキャッシュレスは、大きく二つの柱で成り立つ。ひとつはクレジットカードの圧倒的な浸透だ。タッチ決済が標準手段となっており、地下鉄の改札も普段使いのカードでスムーズに通過できる。実は2022年に単発乗車用の切符が廃止されており、世界中の人々がカードやスマホをかざして迷わずゲートを抜けていく体験は、率直に言って便利だ。

もうひとつが、シンガポール政府の法定機関であるMAS(※2)主導で規格を統一したQR決済「SGQR」である。クレジットが浸透していない中小企業や屋台などで普及が進んでいる。

日本の飲食店などでは、レジ横に複数社のQRコードスタンドが所狭しと並んでいる光景がみられるが、シンガポールでは、それらが『SGQR』という1枚のステッカーに統合されている。消費者は好きなアプリでその1枚を読み込めばよく、店側もレジ周りがスッキリし、管理の手間が省ける。加盟店の管理負担を軽減しつつ利便性を最大化するこの合理性は、まさに国家戦略の賜物と言える。

国民的インフラ「PayNow」の凄み

日本との大きな違いを痛感したのが、即時送金サービス「PayNow」の存在である。

「PayNow」は、MASの推進・監督のもと、シンガポール銀行協会(ABS)と主要銀行が共同提供するインフラだ。電話番号や国民IDを宛先にするだけで、個人・法人間での即時送金を可能にする。日本では決済サービスが民間単位で分断されがちだが、シンガポールでは「送金」という行為が国家標準として一本化されている。

個人間の割り勘から政府の助成金受け取りまで、「PayNow」は社会の隅々まで行き渡っている。手数料も個人間送金なら基本的に無料だ(企業向けでも無料か数十セント程度と安価)。消費者が継続的に銀行口座を利用する動機付けとなり、官民双方にメリットがある優れたエコシステムが構築されていた。

クロスボーダーと次世代決済の最前線

さらに注目すべきは、周辺国との決済連携だ。MASは周辺国との決済ネットワークの相互接続を強力に推進している。すでにタイやマレーシア等と連携し、QRコードをスキャンするだけで自国の銀行アプリから即座に外貨決済ができる環境が整いつつある。

また、国際ブランド共通の次世代決済UX(ユーザー体験)として注目される「Click to Pay」の導入も進む。カード番号を入力せず、生体認証等を用いて1クリックで支払いを完結させる仕組みだ。

東南アジア諸国では、新しく発行されるクレジットカードには、あらかじめこの機能を標準搭載するように義務付けるなど、国を挙げて導入を加速させている。承認率向上と不正利用防止を両立するこの仕組みの、日本での浸透が期待される。

日本のキャッシュレス推進に向けて

シンガポールでは、政府主導による金融インフラの標準化と、実利を追求する徹底した合理主義が日本との差を生み出していた。

規制や環境の違いはあるが、店舗の負担を減らす統一QRコード「SGQR」や、銀行の垣根を越えた即時送金インフラ「PayNow」など、シンガポールの合理的なシステムから学べるヒントは多い。特に、誰がリーダーシップを発揮し、どのような標準化を目指すかという「国家としての覚悟」は、日本のキャッシュレス化推進においても重要な鍵となるはずだ。

ソルクシーズとしても、単なるシステム構築にとどまらず、独自のポイント経済圏や世界に誇る交通系ICなど、日本ならではの強みを活かした「よりスマートで安全なキャッシュレス社会」の実現に貢献していきたい。

 

【出典等】

※1:経済産業省「キャッシュレス推進検討会」とりまとめhttps://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_promotion/20251226_report.html

※2:MAS(シンガポール金融管理局):シンガポールの中央銀行。国内の金融機関に対する監督・規制や、金融政策の遂行を総合的に担う政府機関。

 

※当記事は、視察に参加したソルクシーズ社員(営業企画推進部 氷見吉史)のレポート記事です。

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