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【現地視察レポート】台湾のキャッシュレス最新事情

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日本のキャッシュレス決済比率は2024年に42.8%となり、政府が掲げた「2025年までに40%」という目標を前倒しで達成するなど、着実に普及が進んでいる(※1)。しかし世界に目を向ければ、韓国、中国をはじめキャッシュレス比率が80%を超える国も珍しくはなく(※1)、台湾でもその割合はすでに約69%に達している(※2)。なぜ日本と台湾の間に、これほどの差が生まれたのか――。

その背景を探るべく台湾を現地視察した経験をもとに、キャッシュレス社会の実情と普及の理由を解説する。

【台湾について】

台湾(台北)を訪れてまず感じたのは、日本統治時代の建築物が今も丁寧に保存されていたことである。過去を大切にする姿勢がうかがえる一方で、最先端のテクノロジーや洗練された都市文化も息づいており、新旧が融合した独特の雰囲気と活気に満ちた社会が広がっている。治安は比較的安定しており、夜市の賑わいや独自の食文化も大きな魅力だ。


街の風景


活気ある夜市の様子

レストランで日本人とわかると店主が日本語で話しかけてきたり、タクシー運転手が「日本大好き」と笑顔で語ったりと、人々は親しみやすく、柔軟な価値観と温かな“おもてなしの心”を感じる場面が多かった。そうした多様性と寛容さは、台湾がたどってきた複雑な歴史と、多文化が共存してきた背景によるものかもしれない。短い滞在ではあったが、台湾は何度でも訪れたくなるような、深い魅力と人間味にあふれた場所だった。

【台湾と日本のキャッシュレス化の現状比較】

台湾では2024年のキャッシュレス決済比率は、現金決済31.3%に対し、キャッシュレス決済は68.7%を占めると予測されている(※3)。

ただ、日本ではクレジット、デビット、プリペイド、電子マネーなどと定義されている決済手段による決済額をキャッシュレス決済として集計して比率を算出しているのに対し、台湾では基本的に現金決済以外をすべてキャッシュレス決済と定義している。

例えばATM支払は日本ではキャッシュレスとはならないが、台湾ではキャッシュレス扱いとなるなど、集計方法の違いがある。そのためか、実際に決済事情を現地で確認する限り、日本と台湾の間には数字ほどの差は感じなかった、というのが素直な感想である。

【台湾キャッシュレス普及の背景】

さて、ここからは台湾でキャッシュレス決済が普及した要因を紹介する。

まず挙げられるのは、政府の積極的な政策だ。デジタル経済の推進を掲げ、電子決済に対する補助金や税制優遇を導入するなど、事業者にも消費者にもメリットのある施策がとられた。

また、若者を中心にスマートフォンの普及率が高く、新型コロナウイルスの流行により非接触の支払い方法が重視されたこともあり、モバイル決済アプリの利用が広がっている。さらに、交通機関やコンビニなど日常生活のあらゆる場面で電子マネーが利用できる環境が整っており、台湾のキャッシュレス化を後押ししている。


駅の券売機でもICカードが使えます

【台湾の金融機関におけるキャッシュレス戦略】

台湾の金融機関はキャッシュレス決済を重要な顧客獲得チャネルと位置づけている。ある銀行ではクレジットカードを通じて700万人以上の顧客の半数を獲得(※3)。カード自体の利益よりも、その後の顧客との関係構築に価値を見出しており、顧客属性に沿った金融商品の開発に力をいれている。

また、小売業と銀行の連携も進んでいる。台湾初の小売業者と銀行の共同出資による電子決済事業者は、会員数220万人、アクティブユーザー率43%を誇り(※3)、支払い、送金、入金、小口金融サービスなど幅広いサービスを提供している。他にも注目すべきは、台湾の決済アプリと日本のQRコード決済事業者の連携だ。この提携により、台湾から訪日する観光客は、台湾の決済アプリで日本の店舗のQRコードを読み取って支払い(越境決済)ができるようになっていることも見過ごせない。
(QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です)

【イノベーションを促進する環境整備】

台湾では金融イノベーションを促進する環境も整っている。日本でいう金融庁の役割を担う金融監督管理委員会が指導、サポートするFinTech産業アクセラレーター(金融科技創新園區| FinTechSpace)は、2018年の設立以来、180社を超える国内外のFinTechスタートアップを支援し、70を超える機関と提携している(※4)。


FinTechSpaceのセミナー会場

スタートアップの例として、C to Cクレジットカード決済や、パスワードレス認証などのサービス事業者が生まれており、こうした環境がキャッシュレス決済の技術革新と普及を支えている。

【日本のキャッシュレス推進に向けて】

台湾では、政府主導による推進、金融機関の顧客獲得戦略としてのキャッシュレス活用、そして金融機関による小売業、製造業などとの連携モデルで、日本との差を生み出している。

規制内容やインフラ環境などの違いがあるものの、台湾の事例はキャッシュレス後進国といわれる日本のキャッシュレス化推進に多くのヒントを与えてくれている。台湾に学びつつ、日本の社会、文化に根ざした独自のキャッシュレス社会を実現していくことが、これからの道筋となるはずだ。

ソルクシーズとしても、今までキャッシュレスに関わってきた経験やノウハウを活かし、決済システムの最適化、日本独自の強みを活かしたキャッシュレスエコシステムの構築を実現し、日本のキャッシュレス化推進に貢献していきたい。

 

【出典等】

※1:経済産業省Webサイト
https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250331005/20250331005.html

※2:金融監督管理委員会にヒアリング
※3:玉山銀行にヒアリング
※4:金融科技創新園區| FinTechSpaceにヒアリング

 

※当記事は、視察に参加した弊社社員のレポートをブログ担当者が代理掲載したものです。

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