電車に乗るには切符が必要で、ソフトウエアを使用するにはライセンスが必要である。
一部のソフトウエアメーカーによる切符拝見ならぬ、「ライセンス監査」が急激に増えている。
もっとも、以前より使用許諾契約にライセンス監査権に関する記載は存在したが、
それをメーカーが行使することは多くなく、利用企業による自己監査に留まっていた。
ところが、ここ数年大手企業のみならず中堅企業までを対象として、
ライセンス保有状況と利用数の確認をメーカー自らが行う事例が増えているのである。
実際、当社にも昨年くらいから複数の外部監査が入り、対応にかなり時間を費やした。
何の利益も産まないうえに、痛くもない腹を探られるのは気持ちの良いものではないが、
断る権利は残念ながら、無い。
このライセンス監査、要するに、
「保有ライセンスと利用状況の突合せを企業に依頼し、違反があれば是正を求める」
というものなのだが、実際には証書やキーのかき集めなど、
多くの社員に負担と理解を求める作業となる。
初めて実施する際には多少なりとも右往左往すると思われるが、
次の3点を心掛ければ基本的な対応として問題ないと思う。
まず、嘘をつかない。
そもそも監査の場における虚偽申告など言語道断であるが、
相手は星の数ほどの企業に対して監査を行っている、海千山千の達人である。
こちらの拙い嘘など瞬殺するような監査プログラムとなっている可能性が高い。
次に、言いなりにならない。
違反と取れる状況になっていたとしても、誤解があればそれを解き、
理由や事情があれば主張することである。
ただし敵対してしまうと和解の際に不利に働く可能性があるため、避けるべきだ。
そして何より、急がないことである。
向こうもこちらが業務と並行して対応していることを慮り
ほとんどの場合は急かすようなことはしてこない。
ただし、申告内容に矛盾などのミスがあるとさすがに突っ返されてしまう。
それを繰り返すと監査対応という正直面倒な作業が何倍も面倒になるだけでなく、
業務に支障が出る可能性がある。
わざわざ自爆する必要はない。
そもそも対応以前に、ソフトウエアをライセンス範囲内で利用し、
それを保つことが利用者の責務であると常々啓蒙すること、
そして決められた管理ルールを遵守してもらうことが何より重要である。
それさえ出来ていれば、「監査」という大仰な単語に慌てず騒がず、
淡々と切符を差し出せば何も問題は無いのである。
※用語
・使用許諾契約
ソフトウエアのメーカーとユーザーの間で取り交わされる契約。
作成者と購入者がそれぞれ有する権利について明記されており、
一般的にインストール時に 「同意する」を選択することで
インストールの継続が可能となる。
・監査
当記事では全て「ソフトウエアライセンス監査」を指す。
使用許諾契約に照らし、利用状況がそれに則っているかを証拠に基づいて判定・評価する。
・是正
誤りや悪い点を改め、正しい状態に直すこと。
当記事ではライセンス違反となっている状況を、何らかの方法で解消することを指す。