IT関連の転職市場で、社内SEの人気が高まっています。「最先端の技術を習得できない」「社内の事情で都合よく使われてしまいそう」と敬遠された時代もあったのですが、以前はネガティブな評価につながっていたことが、今は魅力になっているようです。
人気の背景にあるのは、企業の働き方改革とDX推進です。社内SEは、自社のシステム開発やインフラ構築に携わるため、顧客に振り回されることが少なく、ワークライフバランスを取りやすいと思われています。DXやデジタル化、クラウドの導入を進める企業が増えてからは、新しい技術の導入に上流工程から関われると評価されるようになりました。
顧客の顔が見えないプロジェクトが多いSIerでは、「自分の仕事の成果が見える」「会社の成長に直接貢献できる」というメリットがあると考えるシステムエンジニアもいます。ただし、社内SEの魅力は、所属する会社によって大きく分かれます。「ルーティンの運用業務ばかり」「予算がなくて何もできない」と嘆くエンジニアも少なくありません。
今回は、社内SEにとっての「優良企業の条件」について掘り下げていきます。転職を検討している人や、今後のキャリアについて考えている人は、ぜひ参考にしてください。
社内SEにとって重要なポイントのひとつは、ワークライフバランスです。システム開発やインフラのプロジェクトは、顧客の要望や都合に左右されやすく、残業や休日出勤が常態化しているエンジニアもいます。
しかし、社員の働きやすさを重視している企業の社内SEなら、労働時間や業務負荷を考慮してもらいながらプロジェクトを進められます。繁閑差が大きい部署でも、勤務間インターバル制度やフレックスタイム、リモートワークなどの精度を活用しながら、柔軟に働けます。有給休暇の消化率や、育児・介護休暇の取得率が高い企業は、社内SEをめざす技術者の人気を集めているようです。
社内SEの評価を左右する2つめのポイントは、自社発注・自社開発のプロジェクトに携われるかどうかです。SIerのなかには、システム開発の工程の一部分しか担当できない企業もあります。しかし、自社のサービスやシステムの改善に積極的な企業は、企画から設計、開発、運用まで一貫して手がけることができます。
企画段階から事業部のメンバーと連携し、どのようなシステムが必要かを議論しながら自らのアイデアを形にできれば、エンジニアとしての成長実感と達成感を得られます。外部パートナーに開発を委託する機会が増えれば、プロジェクトマネジメントスキルも磨くことができます。
さらにもうひとつ、社内SEに選ばれる企業の条件として挙げられるのは、時間の裁量があることです。技術者をリスペクトしている企業や、個々のやりかたでミッション達成に向かえるカルチャーが定着している企業は、社内SEも仕事がやりやすいと感じられます。
加えて、社内SEは「ユーザー(=社員)が見える」のも魅力のひとつです。開発したシステムが実際に社員に使われて業務効率化が進んだり、事業の数字が改善したりするのを間近で見ることができます。ユーザーの評価を直接聞けるのもやりがいにつながるという社内SEもいます。
企業の安定性と成長性も、社内SEの重要な注目ポイントです。自社のビジネスが順調であれば、IT部門への投資が安定し、最新技術やツールの導入や新しいプロジェクトへのチャレンジも積極的に行えるようになります。
IT技術がビジネスの中心的な役割を担っている企業の社内SEは、単なる「縁の下の力持ち」ではなく、事業の成長に直接貢献する重要なポジションと位置づけられます。新しいシステムやツールの開発や、既存の業務プロセスの抜本的な見直しに関われれば、高いモチベーションを維持することができるでしょう。
「優良企業の社内SE」が転職市場で人気を集める最大の理由は、エンジニアとしての成長と働きやすさを両立できる環境にあるといえます。ワークライフバランスを重視し、上流工程から関われるプロジェクトがあり、時間の裁量をもって仕事を進められる企業は、多くのITエンジニアが理想とする職場像ともいえるのかもしれません。
社内SEとしての転職を考えるエンジニアのみなさんは、これらの視点を持って企業を評価することで、自身のキャリアをさらに豊かなものにできるでしょう。採用を強化しているIT企業にとっては、社内SEの求人の人気も自社の将来性を計る尺度のひとつになりえるのかもしれません。今回の記事が、それぞれ「自分が働く企業」「技術者に選ばれる企業」を考えるきっかけになれば幸いです。