主要SNSメディアの新しい動きが相次いだ2024年。各社のリニューアル施策を見ると、3つのポイントが浮き彫りになってきます。「使いやすさ」「誹謗中傷や炎上対策」「なりすましの詐欺広告撲滅」。打ち手の違いはあれど、「ほしい情報が手に入り、安心して使えるプラットフォーム」という方向性は共通しています。
ユーザーが求める情報を優先して表示させる「エンゲージメント重視」のアルゴリズム変更を行ったのは、【前編】で紹介した「X」だけではありません。「Instagram」も、短い動画を投稿できる「リール」と、24時間限定で複数の動画や画像を配信できる「ストーリーズ」のアルゴリズムを変えています。
従来は「X」と同様に、フォロワー数の多さや再投稿されたコンテンツの集約が評価されていました。新しいアルゴリズムは、「いいね!」「保存」「共有」された投稿のテーマと関連性が高いものや、ユーザーとのコミュニケーション履歴がある投稿者が重視されるようになっています。
2つめの「誹謗中傷・炎上対策」はさまざまです。「X」のコミュニティノートは、いわゆる「デマ」や事実とは異なる情報を閲覧したユーザーが指摘し、支持されたものが残る仕組み。「Threads」はInstagramとのアカウント連携が前提となっており、匿名性を下げることでネガティブな投稿を抑制しています。
「手軽さ」「日常感」「フロー性」を運用に盛り込み、雪だるま式の炎上を防いでいるのは「BeReal」と「Snapchat」です。ランダムにくる通知から2分以内に「今どこで、何してる」を画像とともに投稿する「BeReal」は、好きな時間に何度も投稿することができず、画像の加工もしにくいため、自ずと日常的な話題に特化されます。
「Snapchat」は、投稿した画像や動画が10秒以内に消える仕様となっており、フレンド限定の閲覧となる「ストーリー」も24時間限定です。両者ともZ世代の人気が高いのは、ライトなコミュニケーションに加えて、過去の発言や画像にツッコミを入れられない安心感があるからかもしれません。
「なりすましによる広告」は、「Facebook」や「Instagram」の広告で有名人の画像が悪用された事件が国会で取り上げられるほどの問題になりました。メタ社は2024年7月に「詐欺広告に対する取り組み強化について」と題したリリースを配信し、「詐欺広告の分析強化と自動検出システムの改善」「広告主に対する審査の厳格化」などの対策を推進すると発表しています。
この問題は氷山の一角で、「うさんくさい広告」「不必要な広告」に対するユーザーの不信感が高まっていると捉えたほうがいいでしょう。昨年から招待制をオープン登録に切り替えた「Bluesky」や、2024年7月に広告を開始した「BeReal」など発展途上のSNSも、成長していくプロセスのなかで、こういった問題の解決策を迫られる可能性があります。
現在のSNSは、広告の収益を高めるために大量の配信が必要となる「資本主義」と、ユーザーの快適さや情報ニーズに応じる「民主主義」の間で、最適なルールや運用を模索しているといえます。そんななかで12月に登場した「mixi2」も、既存のSNSが抱える問題を考慮しています。
「X」のようなテキストベースのコミュニケーションをメインとする「mixi2」の最大の特徴は、mixiが創設時に採用していた招待制であること。招待リンクがなければ登録できず、18歳未満は使用禁止となっています。
感情を表現する「エモテキ」や、スタンプを送る「リアクション」などを使って、エモーショナルなコミュニケーションができるようになっており、mixiの主要コンテンツであるコミュニティを展開できるのも大きな特徴です。
「X」の「おすすめ」のようなレコメンド機能を入れていないのは、ニュースメディアではなくコミュニケーションのプラットフォームであるというSNSの原点に立ち返ったからでしょう。リプライをしようとすると、「やさしいことばで返信しよう」というメッセージが目に入ります。
「つながりを大事にする安心なSNS」というコンセプトがどこまで実現するかはわかりませんが、「X」や「Facebook」から乗り換えるユーザーが多ければ、2004年にスタートした最初のmixiは「早すぎたSNSだった」ということなのかもしれません。
エンゲージメントを重視しすぎるとユーザーが閲覧できる情報の幅が狭くなり、コミュニケーションを重視すると収益性が上がらない…既に多くのユーザーを獲得している「Youtube」「TikTok」などの動画プラットフォームも、新たな方向性と機能を求められるようになるかもしれません。
企業のマーケティング担当者にとっては、自社のサービスやコンテンツのターゲットが関心を持つテーマやワードをいかに押さえるかが重要になってきます。加えて、「いいね!」「保存」「共有」などのアクションを促進する施策も必要です。クイズやアンケート、キャンペーン、意見集約など、今までよりコンテンツのクオリティとポジティブなメッセージが求められるでしょう。
まずは、ターゲットが多そうなSNSを使ってみてはいかがでしょうか。実際のタイムラインを見れば、トライアルのアイデアが出てきそうです。フォロワー数の多さや広告投資額が効果に直結しない現状は、小規模事業者や予算が少ないサービスにとってチャンスといえます。2025年も、SNSの動向に注目しましょう。