「働いたら負けかなと思ってる。」
どこかで耳にしたことがあるこの台詞、出所を調べると、10年以上前にとある朝の情報番組の取材を受けた、いわゆる「ニート」に属される方が口にした台詞らしい。
本人がどんな意味を持たせたかは分からないが、自分自身に対する正当化をベースに、ユーモアと自暴自棄で味付けした台詞のように感じられる。
働きたくないだけの人が口にすれば失笑を買うだけの台詞だが、現在叫ばれている「働き方改革」の本質を突いているような気がしなくもない。
「今月も残業が100時間超えたわー」「毎日終電でつれえ」という会話が、特に若手同士で交わされる風景が10年程前にはよく見られた。
今聞けば、ブラック、過労死、という言葉が脳裏をよぎり心配になる状況だが、当時の彼らの表情は疲れ切って目がうつろ・・・ということは全然なく、どちらかというと自慢気、満足気な表情をしていたように記憶している。
滅私奉公による会社への忠誠を示すためか、自分が必要とされていることをアピールするためか、人それぞれではあるだろうが、おそらくは「(長く)働いたら勝ち」という意識から出ていた言葉だろう。
サビ残、社畜・・・こういった言葉に代表される日本企業の風習を是正し、生産性向上や女性活躍の場の拡大、ひいては労働力の確保に繋げようという動きが、数年前より急速に進んでいる「働き方改革」である。
勤務時間を短縮し、仕事以外に使う時間が増えることは個人消費の後押しにも繋がる。「働いたら勝ち」という日本の過重労働文化を悪と捉え、生活に豊かさを与える、素晴らしい取り組みだと思う(ネーミングセンスを除けば)。
では、情報システム部門として、社内の「働き方改革」に貢献するためにはどのようなことを意識し、どういった仕組みを取り入れればよいだろうか。
今回は一つ目のテーマである生産性向上に目を向ける。
生産性向上とは、同量の仕事をより短期間、短時間で終えることである。これは残業時間を減らし、人件費の削減にも繋がる。
情報システムとして貢献するには、例えば以下のような業務環境の提供が考えられる。
・移動中にも社内にいるのと同様の作業を行える仕組みの導入→移動時間の有効活用
・PCの定時強制停止→作業効率化の促進
・遠隔地とのテレビ会議→会議出張や打合せ出張の削減
他にも、無駄会議の削減が生産性向上の一つの施策によく挙げられる。
とりあえず集まって話そうじゃないか、という時代遅れの風習は部下の作業の効率化を妨げる。上司にとっては情報共有のために必要(と思い込んでいる)という会議でも、参加者には時間の無駄でしかないという会議は確かに多い。
そういう会議を減らすためには、共有すべき情報を“いつでもどこでも誰にでも”連携出来る仕組みが必要となる。
世界中がインターネットで繋がっている現代ではそう難しいことではない。
データをFleekdriveのようなオンラインストレージで共有、伝言は社内SNS、どうしても会話が必要ならSkypeのようなインターネット通話が利用できる。どうしても膝を突き合わせて・・・というケースにだけ必要最低限のメンバーで話し合う。
要は、会議は主に決定事項を作るために用い、報告や連絡などの過去事案の情報共有は、より便利な代替手段を用いることで、時間を節約するということである。
これらの仕組みの有効性、必要性を組織として共有し、認識してもらうことが、情報システム部門として生産性向上による「働き方改革」を行う第一歩かと思う。
「働いたら負け」は言い過ぎだが、「働き過ぎは負け」という時代が日本にも遅ればせながら確実にやって来ている。
残業前提の勤務や毎日出社することが難しいという人材は、特に育児を担うケースの多い女性に多く見られる。
次回はそういった方に気兼ねなく働いてもらうための手段について、情報システム部門ができることについて書くことにする。